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『タフネス』と『銃』

第94話 闖入した射殺女

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「走ってんな、『ペット』」

 左わきの下に『スプリングフィールドXDM40』の入った革製のホルスターが目立つ、西園寺かなめ大尉がいつの間にか立っていた。

「西園寺さん!」

 『特殊な部隊』の『新入り!とりあえず動け!』の視線を浴び続ける誠は、かなめに助けを求めて叫んだ。

「なんだ?神前。射殺されたいのか?変わった奴だな。まあ下等な『ペット』のサガかな?」

 かなめはなぜか大荷物を積んだ台車を押していた。

「違います!(助けてください!)」

 誠はひたすら飲み込んだ言葉にかなめが反応してくれることを祈りながら叫んだ。

「生身は大変だねえ……アタシみたいに体がメカのサイボーグだと、ランニングなんて無駄だからな。がんばれよー」

 かなめは誠にそんな薄情な言葉を残して立ち去ろうとした。

「つーわけだ。神前!走れ!鍛えてやる!徹底的にアタシが『ぶっ叩いて鍛えて』やる!」

 長身の誠の隣で小さなクバルカ・ラン中佐が絶叫している。

「かなめちゃん。射撃訓練?私達も行きましょう!」

 アメリア達、『人間扱いされている先輩達』はかなめの周りに群がった。

「オメーはまず走れ。話はそれからだ」

 『偉大なる中佐殿』はそう言って、いい顔をして誠を見つめる。

「僕も……射撃訓練を……僕は銃は下手ですから。伸びしろありますよ……」

 誠を見つめるランの鋭い視線に恐怖を感じながら誠はそう言った。

「いや、テメーはその前に売りの『基礎体力』を強化する必要がある。そうすればきっと新たな道が開ける。この『特殊な部隊』を逃げ出しても行く先は生まれるんだ」

 ランはそう言って腕組みをして満足げな笑みを浮かべた。
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