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誠の本当の『仲間達』

第125話 実は『34歳』の幼女

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 ランは誠を真正面から見つめながら話を続けた。

「確かにアタシは『かわいい』。それは認めざるを得ねーんだ。でも、同時に、ある理由から『最強』なんだ。いくらそいつ等が保護者を気取っても、アタシから見たらそいつを倒すことなんて『赤子の手をひねる』どころか、『ミジンコを潰す』くれー簡単なんだ。それがアタシ、クバルカ・ラン中佐。『34歳』の唯一の罪だな……」

 いい顔をしてそう言うランの言葉に誠の理性を吹き飛ばす一言があった。

「さいんじゅうよんさい!」

 誠の声はでんぐりかえった。確かにランは自動車を運転するし、飲酒をするところも目撃している。

 それをだれ一人とがめようとしないということは、法律的に20歳以上であることは誠にも分かる。

「なんだ?見えねーか?目で見たものがリアル!耳で聞いたことがリアル!アタシを信じろ!」

 ランの言葉は矛盾だらけだった。

 目の前のちんちくりんな姿と声は、どう見ても誠の知識の枠を完全に超越していた。

「信じろって言われても……」

 誠はただ『特殊な部隊』の最大の『特殊』さの象徴である『偉大なる中佐殿』、クバルカ・ランの言葉にただ口ごもるばかりだった。

「まーいいや。これから作戦については詰めるんだけどな。アタシはかわいい!そして『かわいいは正義!』なんだ」

 ランは照れることなくそう言い切った。

「自分で言います?普通」

 誠にはまだツッコミをする余裕があった。

「そうだ!あの『駄目人間』が何を言ったか知らねーが、アタシはアタシの正義の鉄槌をあのエリート野郎に下す!かわいいアタシのかわいい鉄槌で奴は処刑される!全責任はアタシが持つんだから安心しろ!」

 そう言ってランはにっこりと笑った。

「『かわいいは正義』……」

 『偉大なる中佐殿』が自分で言う通り、ランはかわいい女の子34歳だった。

「とりあえず、飯を食え。ここのとっておきの肉料理の『かつ丼』をおごってやる」

 そう言うとランは立ち上がり、食堂のカウンターに向かって歩き出した。
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