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誠の本当の『仲間達』

第126話 『戸籍年齢』と『実年齢』

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「じゃーアタシは部屋で一杯やるわ」

 ランは食堂の担当者から小皿に乗せた『シラポン』を受け取るとそう言って立ち去った。

 誠は久しぶりに見る食事である『かつ丼』を前にワクワクしながら割り箸を手に取った。

「固形物を食べても大丈夫なのか?」

 久しぶりのまともな食事である『かつ丼』を食べようとしていた誠に話しかける女性があった。

 第一小隊隊長、カウラ・ベルガー大尉である。

 いつものようにエメラルドグリーンのつややかなポニーテールを気にしながら誠の前に腰かけた。

「ええ、流動食は飽きたんで。それより、僕……。さっき、クバルカ中佐から衝撃的な真実を打ち明けられたんです……」

 誠は割り箸を割りながら。誠は直接の上司である美しい無表情な女性に告白した。

「衝撃的か?千円投入して打ち止めになるほど出る台より衝撃的なのか?」

 予想通りカウラは『パチンコ愛』を感じさせる言葉を向けた後、頬杖をついて誠を見つめた。

「そんなことより衝撃的ですよ。あのかわいらしいクバルカ中佐が34歳だって言うんですよ。信じられないですよ。車の運転や飲酒はいいですけど、あんなにかわいい声で『自分は萌え萌えな34歳』って言われたら本当に……僕……」

 誠はそう言いながらかつ丼に箸をつけた。

「ああ、『戸籍上は』と言う限定が付くがな。クバルカ中佐は戸籍上は34歳だ」

 どんぶりを持ち上げた誠にカウラはそう言って微笑みを浮かべた。

「そうですよね!『戸籍上』だけですよね!あの可愛い『中佐殿』が僕より年上の『おばさん』だなんて、僕は信じたくないです」

 そう言いながら誠は魚料理しか無い『ふさ』の食堂の貴重な肉料理であるかつ丼のカツを口に運ぶ。

「私も『戸籍上』は25歳だ。『ラストバタリオン』はロールアウトした時から年齢が変わらないからな。とりあえず25歳扱いをされている」

 カウラはそう言ってかつ丼に食いつく誠に微笑みかけた。

「実は……『戸籍上』の年齢より若かったりしません?」

 カツの下の白米を口に運びつつ誠はそう言った。

「中佐の見た目とほぼ同じ……いや、つまらない昔話はやめよう」

 誠が思い切りむせたのは、カウラの言葉を信じるとするとカウラは8歳と言うことになるという事実に気づいたからだった。

 食道に入ったご飯粒を吐き出しつつ誠は息を整えた。
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