特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』 遼州の闇

橋本 直

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誠の本当の『仲間達』

第127話 『悪の機械帝国』と『正義の改造ヒロイン』

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 カウラは相変わらず頬杖をついてほほ笑んでいる。

「それより、西園寺のことが気になるんじゃないかな?貴様は『ロリコン』ではないと私は……信じたい」

 そのエメラルドグリーンの真剣な瞳が誠の顔を捉えて離さなかった。

「西園寺さんですか?あの人……怖いです。銃を突き付けてくるわ、人を『愛玩動物』扱いするわ……ちょっと困ります」

 誠は本心からそう言った。

 西園寺かなめ大尉。第一小隊二番機担当。

 機械の体を持つ『女王様』な彼女の誠への『ペットへの愛』と言う名の『殺意』に誠は身を震わせておびえた。

「貴様の思うように、あいつは『女王様』だ。私も『少佐』と名乗る女性から、私の好きな『パチンコ台』のテーマにあいつの人生をモデルとした『機械帝国の女王様』が登場すると聞いたんだ。先ほどまで、その『記録映像』を鑑賞してきたところだ」

 カウラははっきりとそう言った。

 ここは『特殊な部隊』である。外界の『一般人』がかかわって無事に済むことはない。

 そうなると『少佐』と言う女性が隊内の『馬鹿』である可能性が高いことは誠にも推測できた。

 結果として誠の知る『少佐』は一人しかいなかった。

「アメリアさん……何を言ってたんですか?たぶん、それ『記録映像』じゃなくて『特撮ヒーロー番組』だと思いますよ」

 カウラも『特殊な部隊』の『特殊』な隊員なのである。誠はかつ丼を食べる手を止めて、アメリアの『ネタ』となるであろう純真なパチンコマニアに同情の視線を送った。

「『機械帝国』は全宇宙の生命を『機械化』することで支配しようとする邪悪な組織だ。西園寺はその『女幹部』として『機械魔人』を率いて、人類に挑戦してくるんだ。まさにあいつの人生そのもの……そう思うだろ?神前も」

 笑いかけるカウラの純真な笑みに誠はひたすら同情した。

「ただ、『機械帝国』は一人のヒロインを捉えて『改造人間』にする際にミスを犯す。彼女の『脳改造』に失敗し、その女性は『正義の心を持った改造人間』として『機械帝国』に戦いを挑むことになるんだ!」

 熱くなってきたカウラはいきなり右手を握りしめて誠に訴えかけてきた。

「そう言う展開……よくありますね」

 子供のころはそんな展開も好きだった。しかし、誠は中学校の頃からその展開にマンネリ感を感じてあまりチェックしないでいた。

 カウラは暑苦しい熱血モードで続けた。

「『正義の改造人間』と化したヒロインは『機械帝国』の戦闘員や『機械魔人』から人類を守る戦いを続ける。それは実に『熱い』戦いだった……どうやったらあんなに見事な映像を撮れるんだろうな……きっと高名な『戦場カメラマン』の手によるものだろう」

 完全にカウラは勘違いをしていることは誠にも分かった。

 それは『記録映像』では無いと言えばいいのだが、『特殊な部隊』の『特殊』な上司になんて切り出せばいいのか誠にはわからなかった。

「だが、何度も戦い、お互いにその強さを認め合ううちにヒロインは知るんだ。実は『機械帝国の女王様』は自分と同じ境遇の『機械魔女』に改造された異世界の『姫君』であったという事実をな。そして同時にお互いに『ときめき』を感じるようになる……とりあえずここまでが先週までのあらすじだ」

 誠はカウラがアメリアにとっては、どんな馬鹿話も信じ込むレアな『おもちゃ』と認知されていることに気づいたが何も言えなかった。しかもどうやらカウラの見ている作品が子供向けの『テレビ作品』ではなく、『特殊』な趣味の人向けの『コアなマニア向け作品』であることに気が付いた。

「私とあいつの関係に似ているな……お互いに戦い、高めあい……そして……」

 二人の上司が『愛』に目覚めたらどうしようということを考えると、誠は手にしたどんぶりをテーブルに置いて冷静を装うしかなかった。

「今回の敵は『甲武国』。西園寺と言う『機械魔女』を製造した『悪の組織」だ。敵は全員、脳改造された『戦闘員』だ。正義の司令官、クバルカ中佐の命令で戦えば必ず『正義』は勝つ。『正義の女改造人間』の西園寺かなめ大尉に補給をするのが貴様の任務だ。私はそのための戦場を用意する」

 カウラは真剣な表情で誠にそう言うと、気が済んだように誠に笑いかけた。

「カウラさん……僕の気を紛らわせようと……『たとえ話』で『特撮映画』の話をしたんですね……」

 少し誠は感動していた。さすがに社会人経験が長い女性上司だ。そう思って誠は少し感動していた。

 誠の笑顔にカウラは笑顔で答えた。彼女は美しいエメラルドグリーンの髪をなでながら立ち上がった。

「そう言うわけだ。神前。貴様は西園寺に補給をすればいい。あいつが倒れたら回収しろ。その時は正義の司令官クバルカ・ラン中佐がなんとかしてくれる」

「はい!」

 笑顔でうなづくカウラの言葉に誠はそう言ってうなづいた。

 カウラは誠に背を向けると食堂を出て行った。

 誠は彼女のさわやかな雰囲気になごみながらかつ丼のどんぶりを手に食事を再開した。
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