特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』 遼州の闇

誠の本当の『仲間達』

第128話 機械の体の自由な『おんな太閤』

　誠はカウラが食堂を去るのを見送ると目の前のかつ丼のどんぶりを手に取った。

「なんだか……食欲なくなってきたな」

　食べるタイミングを『特殊』な上司のカウラに外されたことで、なんとなく誠はかつ丼に箸を伸ばせずにいた。

「餌食ってんだ」

　かつ丼とにらめっこをしている誠の正面からハスキーな女性の声がした。

　西園寺かなめ大尉だった。ライトブルーの実働部隊の制服の左わきには彼女らしく愛銃『スプリングフィールドXDM40』を入れたホルスターが見えた。

「食べたいんですけど……なかなか口に運ぶ気力が無くて……」

　お茶を濁すような言葉を並べて誠はまたかつ丼のどんぶりをテーブルに置いた。

「今度の出動は、アタシが『近藤一派』全員処刑するからな。弾の補給を頼むわ」

　誠の前に座ったかなめは表情も変えずにそう言った。

　あまりにあっさりとした『処刑宣言』に誠は呆然とかなめを見つめた。

「なんだ？射殺してほしいのか？」

「いえ！違います！……でも……『処刑』だなんて……」

　誠は焦ってそう答えた。かなめの右手が銃に向けて動いているのを見たからだった。

「アタシが『近藤忠久中佐』と言う男を処刑すると言うのがそんなにおかしいか？本間提督みたいに奴に甘い顔をしろとでも？」

　表情を殺した『女サイボーグ』の瞳に見つめられると、誠は動くこともできなくなった。

「なんでそんな酷いことが……言えるんですか？人間ですよ、相手は」

　誠は目の前の恐ろしいたれ目のサイボーグに語り掛けた。

　かなめはあっけらかんとした顔になる。

「そりゃあ、近藤中佐は『歴史に名を残したい貴族主義者』だろ？だったら『甲武国』の『太閤』であるアタシが上意討ちにして、『逆族』としてちゃんと歴史に名を刻んでやるのが礼儀だろ？」

　誠は何度聞いてもかなめの言葉が理解できなかった。目の前の機械の体の普通の女性がまさか貴族主義国家『甲武国』の最高位の貴族である『太閤殿下』だとは信じられないからだ。

「西園寺さん……いつも不思議に思うんですけど……なんで『甲武国太閤殿下』がこんな『特殊な部隊』で女ガンマンごっこやってるんですか？」

　信じられずに確認する誠を見てかなめはさわやかな笑みを浮かべた。

「そりゃあ、『やりたいから』だよ。アタシは『おんな太閤』だから、好きに生きていいの！いずれ『おんな太閤記』と言う日記を出版する予定なの！」

　誠の庶民的発想の疑問をかなめは一言で完全粉砕した。