上 下
131 / 187
誠の本当の『仲間達』

第131話 理解不能な『愛』の告白

しおりを挟む
「エジプトと言うと『ピラミッド』ですね」

 その程度の知識は誠にもあった。『女王様』であるかなめは、誠がそれを知っていると知ると満足げにうなづいた。

「じゃあ、そのピラミッドのほとんどが『婿』の墓だって知ってるか?」

 かなめは得意げに語った。

「知りません。『婿』なんですか……ほとんど……」

 誠のとってつけた反応にかなめはうなづいた。

「そうだ。『ファラオ』になれるのは、『ファラオ』の娘の『婿』だけなんだ。当然、アタシの前世である『クレオパトラ女王様』は無理やり『婿』をでっちあげることで『女王様』になった」

「いくらなんでも歴史上の人物ですよ……そんな無茶苦茶な……僕、社会は苦手でしたけど」

 気の弱い誠もかなめの『クレオパトラの生まれ変わり』説には異論を唱えたかった。かなめは『美人』だが、たれ目なので『歴史を変える』ほどではないと誠は言いたかった。

「何にも知らねえんだな。最後のエジプト公認の『女王様』であるクレオパトラは、弟を無理やり『婿』にしたんだ。弟は『役立たずのファラオ』として、姉ちゃんの『クレオパトラ』と本人の合意もなく無理やり結婚させられた。アタシの前世である『クレオパトラ女王様』は、エジプトの『女王様』として、地中海制覇を狙うローマ帝国と渡り合ったんだ」

 誠はかなめの知識量に圧倒されつつ、感じたことを口にしようと決めた。

 ただ、かなめの歴史観がかなり『歪んでいる』ことだけは誠にも分かった。

「地球人は全員エジプト人じゃないと思うんですけど……今でも地球では『ピラミッド』を作ってるんですか?」

 そんな誠のまともな質問はかなめに完全に無視された。

「それを知ったアタシは親父に言ったんだ。『とりあえず女王様を目指すんでよろしく♪』って」

「軽いですね……支配される僕達の気持ちも考えてくださいよ」

 かなめの壊れた脳には、誠が何を言っても無駄だろうということは分かっていた。

「そしたら、ついさっき『まあがんばれや』と言う許可が出たんだ」

「ついさっき……」

 任務中の私的通信は禁止されているが、かなめにそんな理屈は通用しないことはなんとなくわかっていた。

「そこで『婿』を探したんだが……アタシが気に入った野郎がいねえんだ。とりあえず、神前。オメエは役に立たねえから『ファラオ』向きだ。アタシが名実ともに『女王様』になる口実として、やれ『ファラオ』。『愛玩動物』出身者初の『ファラオ』だ。すごいだろ?」

 誠は思った。こんなプロポーズはあり得ないし、嫌だということを。

「『ペット』よりはましですけど……僕が『ファラオ』になったら何をするんですか?」

 もうかつ丼を食べる気力もなかった。

 しかし、一応『ファラオ』なのでお墓が『ピラミッド』になることが少しうれしかった。

「決まってんだろ!アタシは体が機械なんだから、変身ができたら史上初の『変身機械女王様』として新時代を気づける。『空中分子固着装置』とかをオメエの『理系脳』を駆使して『人間工学』を極めて開発しろ!アタシは『ワル』っぽくてゴテゴテした感じが好きだからな。カウラの言ってた『機械帝国の女王様』の戦闘コスチュームが好みだからそれを作れ。『特殊な部隊』の馬鹿は『脳改造』して『戦闘員』としてアタシの覇道を助けることを許可してやる」

 かなめの話がだんだん歴史からずれて、誠を『特撮ヒーローもの』の悪の科学者として育成したいということ言いたいらしいことに気が付いた。
しおりを挟む

処理中です...