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『女王様』と『正義のヒロイン』と『偉大なる中佐殿』
第145話 『特殊な部隊』の機動部隊長による『廃帝』への公式の『宣戦布告』
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状況はランの言葉で混とんとしつつあった。
『地球の科学の限界が見えたところで……もう一つ、いーことを教えてやる。『リャオ』の言語に欠けてたのは『時間』の概念だけじゃねーんだ。『リャオ』の概念に欠けてるのは……』
『まだ……あるのか?あなたの隠し玉は』
すでに近藤はあきらめていた。相手は『不死の存在』である。科学の及ぶところでないことは地球人である近藤にも理解できるところだった。誠はこの『特殊な部隊』に魅入られた『重罪人』に同情の視線を送るようになっていた。
『ヒントをやる、遼州人は『船』を作らなかった』
『それが……何の意味が……これ以上我々を驚かせて何が楽しいんですかな?』
勝利をあきらめた近藤の力ない言葉にランはかわいらしい笑みで答える。
『理由は簡単。必要なかったんだ……『船』が要らなかった』
『船が要らない?あなたは運用艦『ふさ』から発艦したのでは?』
ようやくランの言葉の矛盾を見つけて近藤はなんとか反撃に出ようとしてそう言った。
『分かってねーなー。アタシ達遼州人は『遅れた焼き畑農業しかできない未開人』にしか見えねーかな?』
『確かに……死なない原始的な化け物にしか見えないが……どうでしょうかね?クバルカ中佐』
近藤は自分の優位を確認するような調子でそう言った。
『ちげーよ。必要がねーんだよ。必要が無いと生物は『退化』するんだよ。地球人だって尻尾がねーだろ?それが『生物学』の常識だ。これも隊長の受け売りだけどな』
『退化だ?脳が退化したんじゃないですかな?あの、『駄目人間』にふさわしい』
そう言うと近藤の顔が元の高慢な雰囲気を帯び始めた。誠もこの『心理戦』が失敗したような気がしてきていた。
『オメーはやっぱり、隊長が言うように頭に『八丁味噌』が詰まってるわ。見えてねーよ、リアルが。遼州人の『船』への関心が退化した理由は簡単だ。『距離』の概念がねーんだよ、『リャオ』には。だから、『船』が必要ねーんだ。だから作る必要を感じなかったんだな……アタシ等『遼州人』は』
『距離の概念が……『無い』?』
近藤は不審そうにそう言った。自分の優位が崩れていることを認めたくないという焦りがその顔に笑みを浮かべさせる。
『そーだ。今、アタシが得意の『空間跳躍』を繰り出せば、オメーの乗艦『那珂』のブリッジはいつでも潰せる。そして、うちの『回収係』の神前にも似たようなことができる……つーわけだ。アタシの態度がでけー理由がわかってよかったな。バーカ』
一瞬で『重罪人』近藤忠久中佐の表情が硬直した。
『嘘だ!でたらめだ!他の何かの事実を隠すためにでたらめを!何を知っている!貴様は何が言いたい!』
誠は憐れみを込めて、そしてこれから自分が『処刑』するであろう、近藤のうろたえる様を眺めていた。
敗北と死を悟った『漢』だがまだ彼にはそれを認めない『プライド』が残っていた。
『これ以上オメーの『八丁味噌』に刻み込む言葉はねーんだ。それは今生きてる『遼州人』のプライバシーだかんな。アタシは隊長みたいに地球人の『実験動物』にはなりたくねーんだよ」
「地球人の『実験動物』……」
誠は二人の会話の外野にすぎないのは分かっていたが、その言葉につい反応していた。
誠も嵯峨と同じ純血の『遼州人』である。地球科学の伝道者を自認する自分が地球人の『実験動物』になるかもしれないという言葉に誠はうろたえた。
『『八丁味噌』の旦那。はなっからあんたは負けてんだ。あんたの死んだあと、アタシ等はちょっと無茶な『敵』と戦うつもりなんだ。その関係で『地球圏』やこの通信を傍受した『力なき人々』に言っとくわ……』
ランのかわいい笑顔が凶暴な野獣のそれに一瞬変わった。
『アタシ等、『特殊な部隊』は宣戦を布告する!相手は『廃帝ハド』って奴だ。宇宙に生きる『全存在』の『敵』だ!』
「『廃帝ハド』……何者?」
ランの宣言に誠はついていけなかった。
自分がただの『新人』で『幹部』のランとは格が違うことは分かっていた。真の目的を誠が知らないのは当然かもしれない。
しかし、ランの言う『守るべき力なき人々』にも知識のある人がいるはずなのだから、『廃帝ハド』への具体的対策などを教えておいた方がいいことは誠にも分かった。
『神前』
誠は急に自分に言葉を向けてきたランに驚いて顔をこわばらせた。
『知らねーで済めばよかったんだ。世の中、知らねー方がいーことばっかりなんだ。知って得なことって……意外と少ねーぞ』
そんな『ランの優しい笑顔』が急に『処刑対象』に向かった。
『甲武国海軍中佐、近藤忠久。テメーをこれから処刑する。『死んでもらいます』ってか?』
誠は自分がこれから何をさせられるかと言うことと、この『宣戦布告』が何をもたらすのかを考えながら全天周囲モニターの全体に視線を走らせた。
『地球の科学の限界が見えたところで……もう一つ、いーことを教えてやる。『リャオ』の言語に欠けてたのは『時間』の概念だけじゃねーんだ。『リャオ』の概念に欠けてるのは……』
『まだ……あるのか?あなたの隠し玉は』
すでに近藤はあきらめていた。相手は『不死の存在』である。科学の及ぶところでないことは地球人である近藤にも理解できるところだった。誠はこの『特殊な部隊』に魅入られた『重罪人』に同情の視線を送るようになっていた。
『ヒントをやる、遼州人は『船』を作らなかった』
『それが……何の意味が……これ以上我々を驚かせて何が楽しいんですかな?』
勝利をあきらめた近藤の力ない言葉にランはかわいらしい笑みで答える。
『理由は簡単。必要なかったんだ……『船』が要らなかった』
『船が要らない?あなたは運用艦『ふさ』から発艦したのでは?』
ようやくランの言葉の矛盾を見つけて近藤はなんとか反撃に出ようとしてそう言った。
『分かってねーなー。アタシ達遼州人は『遅れた焼き畑農業しかできない未開人』にしか見えねーかな?』
『確かに……死なない原始的な化け物にしか見えないが……どうでしょうかね?クバルカ中佐』
近藤は自分の優位を確認するような調子でそう言った。
『ちげーよ。必要がねーんだよ。必要が無いと生物は『退化』するんだよ。地球人だって尻尾がねーだろ?それが『生物学』の常識だ。これも隊長の受け売りだけどな』
『退化だ?脳が退化したんじゃないですかな?あの、『駄目人間』にふさわしい』
そう言うと近藤の顔が元の高慢な雰囲気を帯び始めた。誠もこの『心理戦』が失敗したような気がしてきていた。
『オメーはやっぱり、隊長が言うように頭に『八丁味噌』が詰まってるわ。見えてねーよ、リアルが。遼州人の『船』への関心が退化した理由は簡単だ。『距離』の概念がねーんだよ、『リャオ』には。だから、『船』が必要ねーんだ。だから作る必要を感じなかったんだな……アタシ等『遼州人』は』
『距離の概念が……『無い』?』
近藤は不審そうにそう言った。自分の優位が崩れていることを認めたくないという焦りがその顔に笑みを浮かべさせる。
『そーだ。今、アタシが得意の『空間跳躍』を繰り出せば、オメーの乗艦『那珂』のブリッジはいつでも潰せる。そして、うちの『回収係』の神前にも似たようなことができる……つーわけだ。アタシの態度がでけー理由がわかってよかったな。バーカ』
一瞬で『重罪人』近藤忠久中佐の表情が硬直した。
『嘘だ!でたらめだ!他の何かの事実を隠すためにでたらめを!何を知っている!貴様は何が言いたい!』
誠は憐れみを込めて、そしてこれから自分が『処刑』するであろう、近藤のうろたえる様を眺めていた。
敗北と死を悟った『漢』だがまだ彼にはそれを認めない『プライド』が残っていた。
『これ以上オメーの『八丁味噌』に刻み込む言葉はねーんだ。それは今生きてる『遼州人』のプライバシーだかんな。アタシは隊長みたいに地球人の『実験動物』にはなりたくねーんだよ」
「地球人の『実験動物』……」
誠は二人の会話の外野にすぎないのは分かっていたが、その言葉につい反応していた。
誠も嵯峨と同じ純血の『遼州人』である。地球科学の伝道者を自認する自分が地球人の『実験動物』になるかもしれないという言葉に誠はうろたえた。
『『八丁味噌』の旦那。はなっからあんたは負けてんだ。あんたの死んだあと、アタシ等はちょっと無茶な『敵』と戦うつもりなんだ。その関係で『地球圏』やこの通信を傍受した『力なき人々』に言っとくわ……』
ランのかわいい笑顔が凶暴な野獣のそれに一瞬変わった。
『アタシ等、『特殊な部隊』は宣戦を布告する!相手は『廃帝ハド』って奴だ。宇宙に生きる『全存在』の『敵』だ!』
「『廃帝ハド』……何者?」
ランの宣言に誠はついていけなかった。
自分がただの『新人』で『幹部』のランとは格が違うことは分かっていた。真の目的を誠が知らないのは当然かもしれない。
しかし、ランの言う『守るべき力なき人々』にも知識のある人がいるはずなのだから、『廃帝ハド』への具体的対策などを教えておいた方がいいことは誠にも分かった。
『神前』
誠は急に自分に言葉を向けてきたランに驚いて顔をこわばらせた。
『知らねーで済めばよかったんだ。世の中、知らねー方がいーことばっかりなんだ。知って得なことって……意外と少ねーぞ』
そんな『ランの優しい笑顔』が急に『処刑対象』に向かった。
『甲武国海軍中佐、近藤忠久。テメーをこれから処刑する。『死んでもらいます』ってか?』
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