特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』 遼州の闇

橋本 直

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力に目覚めるということ

第181話 語られぬ『かつての地球』

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「恥ずかしいから言うなよ」

 ランはそう言って少し照れてみせた。

「実はな……アタシ……どうやら地球に行ったことがあるんだわ」

 そう言ってランは静かに笑った。遼州と地球。そのはるかに遠い距離を思うが、『遼州人に距離と言う概念はない』と言う彼女の言葉に誠は静かにうなづいた。

「そうなんですか……」

 ランは遼州星系を代表する『エース』である。地球連邦軍が『秘密裏』に彼女に招へいをかけたとしても不思議では無かったので誠は静かに彼女の言葉を聞いていた。

「十二年前だ。アタシは昼寝から起きてぼんやりしていたんだ。寝ぼけてたらしいな……まあいろいろやらかしたらしいけど……それは言わないでおく。詮索無用だかんな!」

 この特殊な部隊では『過去は聞かない』暗黙のルールがあるので、誠は黙っていた。

「そして……思い出したんだ。『昼寝をする前、どっか行ってたな』って。まあ、それからはしばらく『ストライキ』をしてたから、暇してたんで、眠る前にどこへ行ってたか調べたら……それがびっくり!地球だったんだわ。恥ずかしい話だろ?」

 誠はランの軽い口調に意味もなくうなづいていた。

「昼寝ですか?地球人に拉致でもされたんですか?」

「拉致?オメーじゃねーんだから。そんなへまするかよ!」

 あっさりとランはそう言い切った。

 そして遠い目をしてランは窓の外を見やった。

「当時……地球は……空気が違った。酸素が濃くていっぱい深呼吸をした。この胸いっぱいに酸素を取り込んだんだ……おいしい空気だった……」

 ランの言葉に誠は遠くの地球のことを思った。はるか遠く20万光年先の世界。誠はその先進的な技術とこの遼州を征服した人々のことを想像していた。

「周りは『シダ』とか『ソテツ』とかがいっぱい生えてた。まあ、どこの星も似たよーなもんだよ。それで、アタシは元気に走り回った。邪魔する馬鹿は誰もいねーかんな、当時の地球には」


 そんなランの言葉を聞いて誠は不思議に思った。どう考えても『シダ』や『ソテツ』が地球の主要な植物だったという記憶は誠の理系脳の中には無かったのだから。誠はただランの言葉の続くのを待った。
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