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『特殊な部隊』の『真の敵』と『遼州人』の悲しいサガ

第51話 30代公務員女子が自称『30代無職』を詐称していたことを告白する

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「あと、これは『遼州人』が宇宙に誇っていい最大の『文化的功績』なんだけどね」

 いつの間にかアメリアの顔は『女芸人』のそれに戻っていた。

「僕達に『文化的功績』なんてあるんですか?ただ地球の真似ばかりしているだけじゃないですか」

 誠もこの『東和共和国』が20世紀末の日本の『よくできたコピー』にすぎないことは知っていた。

「まず、ほとんどが『木造住宅』で、高層住宅が存在しない」

 アメリアの言葉に誠は納得せざるを得なかった。

 東都共和国は20世紀末の日本を模倣することを国是としていたので、当然ほとんどの住宅は木造住宅だった。

 つまり、高層住宅はあまり存在しないし、3階建て以上の住宅は法律上建てることが非常に難しい環境にあった。

「ほかに何か……」

 誠は文化的功績とやらがろくなものでないことは察しがついていた。

「デジタルが進歩しないことによってメディアの質が『アナログ的』に進化した……より20世紀末の日本を進化させることに成功した……つまり深夜ラジオが進歩したのよ!」

「!!」

 それはあまりに驚愕の事実だった。誠も深夜ラジオは聞いていなかったが、大学の同級生にはまって人生を捨てた人間が何人もいるのは事実だった。

「アメリアさん……もしかして……」

 誠の言葉にアメリアは勝ち誇った笑みを浮かべた。

「私はある深夜ラジオのヘビーリスナーとしてすでに『伝説』の存在と呼ばれているわ!人はすべて私を30代無職童貞として認知してその行動をつぶさに観察することに余念がないわね!」

「それ全部嘘でしょ!あんた女じゃないですか!『童貞』じゃないでしょ!」

 そんな誠のツッコミをものともせずアメリアは話題を勧めた。

「甘いわね……所詮ラジオのネタでは投稿者が『男』か『女』かなんてわからないわよ!実際、ある深夜ラジオパーソナリティーに遭遇したけど、私が女だなんて思ってなかったって言ってたわよ」

「自慢になりますか?それ?」

 誠はあまりのアメリアのすっとぼけた対応に呆然とするばかりだった。

「それだけじゃないわ、『遼州人』はその『童貞力』により、人類に平和をもたらす方法を編み出した……」

「そんな力による『平和』は必要ありません」

 誠のそんなむなしい願いをよそにアメリアは話題を続けた。

「地球人の『モテる』と言う過信が常に戦争を引き起こしてきたの……愛は地球を滅ぼすのよ!そうよ、もしすべての宇宙の人々が『遼州人』の魂を持てば争いごとは起きずに平和に暮らせるようになる。すごい『功績』じゃない?」

 そう言ってアメリアはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

「まず!地球人も遼州人のように『モテない』を極めれば平和になるのよ!」

 はっきりと、力強くアメリアは言い切った。
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