90 / 187
ある若者の運命と女と酒となじみの焼き鳥屋
第90話 『特殊な部隊』では希少な誠と言う存在
しおりを挟む
「家族とは……いろいろあるんだな」
カウラは豚串を食べた後、そうつぶやいた。
「まあな、それぞれ色々あるんだわ。オメエ等いいな、そんなめんどくさそうなのと無縁で。親父やお袋なんて家借りるときの保証人くらいの役にしか立ってねえぞ、うちなんか。後は被害ばっか」
かなめは相変わらず悠然と葉巻をくゆらせながらそう言った。
「でも、一応生んでくれた恩とか、育ててくれたこととか」
「アタシが頼んだわけじゃねえよ。特にこんな体になってからはそうだ。それにアタシは実家の土地がでかいのとさっき言った『太閤』の位になると貰える荘園の収入で好き勝手やれんの。まあ、『無職』になるとそれもパーになるから仕事はしてっけど……両親に育てられたなんて自覚はねえよ」
なんとか取り繕うとする誠の言葉にかなめはつれなくそう答えた。
「私も……家族ってほしいとは思わないわね。まあ、うちの部隊で家族にいい思い出があるのは少数派なんじゃないかしら。運航部の女子は全員『ラスト・バタリオン』で人工的に作られた存在だから家族なんていないけど……技術部の連中も聞いてみるとあんまりいい話は聞かないわよ。家族にいい思い出があるならうちみたいな『特殊な部隊』には来ないんじゃない?」
アメリアはそう言いながらビールを飲み干した。
「注ぎますよ!」
誠はそう言ってビールを注ぐ。
いつの間にか島田達が馬鹿話をやめて誠達の方に目をやっていた。
「いいんじゃねえの、家族なんていたっていなくたって。『家族は最初の他人』だぜ。世話になったのは事実だが……それに縛られる義理はねえわな」
島田はそう言って最後の豚串を食べ終えた。
「じゃあ、終いとするか……島田、ちっちゃい姐御にいくらか貰ってたろ」
かなめは葉巻を灰皿において立ち上がってそう言った。
「三万出してくれましたけど」
島田はそう言ってズボンのポケットからしわだらけの封筒を取り出す。
「春子さん!三万で足ります?」
そう言ってかなめはそのまま島田から奪い取った封筒を手にレジの方に向かった。春子はカウンターの向こうでレジに向け歩き出すのが見えた。
「誠ちゃん。まあ、うちでは誠ちゃんは結構レアな存在なわけよ。それだけに欠かせないの……がんばって」
誠は立ち上がろうとしたところをアメリアにそんな言葉をかけられた。
誠はただアルコールの酔いに任せて静かにうなづくしかなかった。
カウラは豚串を食べた後、そうつぶやいた。
「まあな、それぞれ色々あるんだわ。オメエ等いいな、そんなめんどくさそうなのと無縁で。親父やお袋なんて家借りるときの保証人くらいの役にしか立ってねえぞ、うちなんか。後は被害ばっか」
かなめは相変わらず悠然と葉巻をくゆらせながらそう言った。
「でも、一応生んでくれた恩とか、育ててくれたこととか」
「アタシが頼んだわけじゃねえよ。特にこんな体になってからはそうだ。それにアタシは実家の土地がでかいのとさっき言った『太閤』の位になると貰える荘園の収入で好き勝手やれんの。まあ、『無職』になるとそれもパーになるから仕事はしてっけど……両親に育てられたなんて自覚はねえよ」
なんとか取り繕うとする誠の言葉にかなめはつれなくそう答えた。
「私も……家族ってほしいとは思わないわね。まあ、うちの部隊で家族にいい思い出があるのは少数派なんじゃないかしら。運航部の女子は全員『ラスト・バタリオン』で人工的に作られた存在だから家族なんていないけど……技術部の連中も聞いてみるとあんまりいい話は聞かないわよ。家族にいい思い出があるならうちみたいな『特殊な部隊』には来ないんじゃない?」
アメリアはそう言いながらビールを飲み干した。
「注ぎますよ!」
誠はそう言ってビールを注ぐ。
いつの間にか島田達が馬鹿話をやめて誠達の方に目をやっていた。
「いいんじゃねえの、家族なんていたっていなくたって。『家族は最初の他人』だぜ。世話になったのは事実だが……それに縛られる義理はねえわな」
島田はそう言って最後の豚串を食べ終えた。
「じゃあ、終いとするか……島田、ちっちゃい姐御にいくらか貰ってたろ」
かなめは葉巻を灰皿において立ち上がってそう言った。
「三万出してくれましたけど」
島田はそう言ってズボンのポケットからしわだらけの封筒を取り出す。
「春子さん!三万で足ります?」
そう言ってかなめはそのまま島田から奪い取った封筒を手にレジの方に向かった。春子はカウンターの向こうでレジに向け歩き出すのが見えた。
「誠ちゃん。まあ、うちでは誠ちゃんは結構レアな存在なわけよ。それだけに欠かせないの……がんばって」
誠は立ち上がろうとしたところをアメリアにそんな言葉をかけられた。
誠はただアルコールの酔いに任せて静かにうなづくしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる