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『タフネス』と『銃』

第99話 22ロングライフル弾

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「じゃあ撃て」

 かなめの合図で誠は引き金を引いた。

 何も起きなかった。

「誠ちゃん……弾が入ってないんじゃない?」

 アメリアが呆れたようにそう言った。

 誠は慌ててマガジンを抜くがそこには銀の弾頭と金色の細い薬莢が入っていた。

「貴様……素人か?薬室に弾を装填しなければ弾は出ない!リボルバーじゃないんだからな!」

 今度はカウラがそう言って誠の頭をはたいた。

「はー……慣れないもので」

 軍人失格の一言を吐いて誠はマガジンをグリップに刺して素早くスライドを引いて弾を装填した。

 ゆっくりと銃口を的に向け、静かに引き金を引く。

『パン!』

 軽い反動とともに弾が発射された。弾はそのまま的の左側を通過していった。

「当たらねえのかよ……」

 かなめが吐き捨てるようにそう言うのを聞きながら誠は引き金を続けて二回引いた。

『パン!パン!』

 反動はパイロット養成課程で撃った東和宇宙軍制式拳銃のそれよりもはるかに軽かった。

「撃ちやすいですね、この銃」

 二発とも的を外したものの誠はとりあえず大外れでは無かったので笑顔で三人に向き直った。

「やはり、22口径で正解だな」

「これじゃあ9パラなんて撃った日にはカウラちゃん達の後頭部が吹き飛ぶわね」

 カウラとアメリアまでも完全に軽蔑の視線で誠を見つめていた。

「22口径?なんですそれ?」

 誠はそう言って銃に詳しそうなかなめに目をやった。

「こいつは『グロックG44』って言う22口径ロングライフル弾用の拳銃なんだよ。まあ、22口径なんて帽子も何もかぶってない頭にでも当たらないと死なないから安全だってことで選んだんだが……正解だったな」

「それじゃあ意味ないじゃないですか!僕に一撃で帽子も何もかぶってない敵に当てろっていうんですか!」

 かなめの投げやりな言葉に誠はツッコミを入れていた。

「だって……こんな距離、エアガンだって当たるぞ?実銃だぞ、これ。これメイドイン・オーストリーだぞ。地球人みんなこれ見たら涙目だぞ」

「でも……僕、利目が右だったり左だったりするんで…」

 誠はこの場を切り抜けようと何とか言い訳をした。

「大丈夫よ。まあ、かなめちゃんがなんで『グロックG44』を選んだかは……想像がつくけど」

 アメリアは意味ありげに笑っている。誠はその言葉の意味が理解できずにただ銃を持って呆然と立ち尽くしていた。
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