18 / 111
大人達の会話
第18話 消えた資金
しおりを挟む
「このところベルルカンが妙に静かじゃないですか?雨季特有のクーデターも無い。これまで毎日起きていたテロがぴたりと止んだ」
安城は嵯峨を見つめた。物悲しげな殺気を感じないその表情。だが彼女はその表情を見るとどうしても目の前の男に近づきがたい雰囲気を感じる自分がいることを知っていた。
「近藤事件以降、テロ組織が方針を転換したとでも?」
ようやく気がついたかのように安城はそう言った。
「そのあたりを頭に入れてそのデータを見ると納得が行く。非公然組織への資金供与や政界工作の為に流れていた資金だけど、俺が見ただけでもそれらに割いた数倍の金額が消えてなくなっている。まあテロ組織も資金の見通しが急にたたなくなって戸惑ってるんじゃないですかね……まあ近藤の石頭に私的流用なんて器用なことできるわけが無いからその金がどこに行ったか……」
「つまり、正体不明の資金がどこかに流れ込んでいるって言う訳?確かに甲武の公安憲兵隊が見つけた近藤中佐の公然組織名義でプールされていた資金があまりに少ないのには私も唖然としたけど」
嵯峨はタバコを灰皿に押し付けてもみ消すと、次はボールペンで頭を掻き始める。
「その……ねえ。ディスクを見てもらえればわかるけど、あくまで現時点の話ですから。金は天下の回り物。つかめる範囲での新しい情報が入ったらその都度うちの若いのに連絡させてもらいますよ」
そう言うと嵯峨は立ち上がった。
「それでさあ……秀美さん。美味い蕎麦屋があってね、これから暇なら昼飯くらい……」
嵯峨の今にも揉み手でもしかねない態度の変化。安城はいつもそんな豹変する嵯峨に振り回されてきた。
「残念だけど、これから会議なのよ。『彼女』の件で」
そう言うと安城は悪戯っぽい笑みを浮かべる。嵯峨の笑みが『彼女』と言う言葉を聞くと一瞬だけ残念そうな表情に変わるのをランは見逃さなかった。
「茜の法術特捜主席捜査官就任は……まああいつももう大人ですよ。それより秀美さん、ここまで足を伸ばしてもらうなんてことはそうないんだからさあ……そこ本当に美味いんだって」
食い下がる嵯峨だが、安城は手にしたバッグを一度開いて中身を確認すると背筋を伸ばして嵯峨を見つめる。
「また今度にしましょう。彼女ったら結構まめなのよね。父親とは大違い」
安城はそう言うと親しげな笑みを浮かべて部屋を出て行く。
「笑うなよ中佐殿……」
振られた嵯峨を見て笑うランに情けない顔を晒す嵯峨だった。
安城は嵯峨を見つめた。物悲しげな殺気を感じないその表情。だが彼女はその表情を見るとどうしても目の前の男に近づきがたい雰囲気を感じる自分がいることを知っていた。
「近藤事件以降、テロ組織が方針を転換したとでも?」
ようやく気がついたかのように安城はそう言った。
「そのあたりを頭に入れてそのデータを見ると納得が行く。非公然組織への資金供与や政界工作の為に流れていた資金だけど、俺が見ただけでもそれらに割いた数倍の金額が消えてなくなっている。まあテロ組織も資金の見通しが急にたたなくなって戸惑ってるんじゃないですかね……まあ近藤の石頭に私的流用なんて器用なことできるわけが無いからその金がどこに行ったか……」
「つまり、正体不明の資金がどこかに流れ込んでいるって言う訳?確かに甲武の公安憲兵隊が見つけた近藤中佐の公然組織名義でプールされていた資金があまりに少ないのには私も唖然としたけど」
嵯峨はタバコを灰皿に押し付けてもみ消すと、次はボールペンで頭を掻き始める。
「その……ねえ。ディスクを見てもらえればわかるけど、あくまで現時点の話ですから。金は天下の回り物。つかめる範囲での新しい情報が入ったらその都度うちの若いのに連絡させてもらいますよ」
そう言うと嵯峨は立ち上がった。
「それでさあ……秀美さん。美味い蕎麦屋があってね、これから暇なら昼飯くらい……」
嵯峨の今にも揉み手でもしかねない態度の変化。安城はいつもそんな豹変する嵯峨に振り回されてきた。
「残念だけど、これから会議なのよ。『彼女』の件で」
そう言うと安城は悪戯っぽい笑みを浮かべる。嵯峨の笑みが『彼女』と言う言葉を聞くと一瞬だけ残念そうな表情に変わるのをランは見逃さなかった。
「茜の法術特捜主席捜査官就任は……まああいつももう大人ですよ。それより秀美さん、ここまで足を伸ばしてもらうなんてことはそうないんだからさあ……そこ本当に美味いんだって」
食い下がる嵯峨だが、安城は手にしたバッグを一度開いて中身を確認すると背筋を伸ばして嵯峨を見つめる。
「また今度にしましょう。彼女ったら結構まめなのよね。父親とは大違い」
安城はそう言うと親しげな笑みを浮かべて部屋を出て行く。
「笑うなよ中佐殿……」
振られた嵯峨を見て笑うランに情けない顔を晒す嵯峨だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません
藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。
けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」
侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。
その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。
けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。
揺らぐ心と、重ねてきた日々。
運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。
切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。
最後まで見届けていただければ幸いです。
※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます
にて、親世代の恋愛模様を描いてます。
レンタル従魔始めました!
よっしぃ
ファンタジー
「従魔のレンタルはじめました!」
僕の名前はロキュス・エルメリンス。10歳の時に教会で祝福を受け、【テイム】と言うスキルを得ました。
そのまま【テイマー】と言うジョブに。
最初の内はテイムできる魔物・魔獣は1体のみ。
それも比較的無害と言われる小さなスライム(大きなスライムは凶悪過ぎてSランク指定)ぐらいしかテイムできず、レベルの低いうちは、役立たずランキングで常に一桁の常連のジョブです。
そんな僕がどうやって従魔のレンタルを始めたか、ですか?
そのうち分かりますよ、そのうち・・・・
悪徳公主と冷徹皇帝陛下の後宮薬膳茶
菱沼あゆ
キャラ文芸
冷徹非道と噂の皇帝陛下のもとに、これまた悪しき評判しかない異国の王女、琳玲がやってきた。
琳玲は皇后の位は与えられたが、離宮に閉じ込められる。
それぞれの思惑がある離宮の女官や侍女たちは、怪しい薬草で皇帝陛下たちを翻弄する琳玲を観察――。
悪徳公主と冷徹皇帝陛下と女官たちの日々は今日も騒がしい。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる