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大人達の会話
第17話 裏帳簿
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嵯峨はそう言うと一枚のディスクを取り出した。
「何、これ」
安城は静かにディスクを受け取る。何の変哲も無いデータディスク。親指の爪ほどの黒い板をじっと見つめる。ランはそれが何かを知っているとでも言うようにソファーで静かにうなづいていた。
「プレゼント。という事でどう?」
嵯峨はニヤリと笑う。安城は嵯峨の言葉遣いに彼を見つめて一瞬ハッとした後、照れるようにディスクに目を移す。
「見ないんですか?隊長は」
ランは嵯峨を一瞥して不満そうにつぶやく。彼の不満そうな表情から秀美はそのディスクの内容があまり公に出来ないが重要な情報が詰まっていることを察した。
「見たよ。ランよ、うちの情報将校達もよくやってくれたねえ。でもまあ予想の範囲内ってとこか」
そう言うと嵯峨は鋭い目つきで自分をにらんでいる安城の目を気にしながらタバコに火をつけた。
「裏の取れていない近藤資金の流れの未発表資料?」
安城は軽く掻き揚げると足元のかばんを開き、バインダーを取り出して並んだ同じようなディスクと一緒にそのディスクをしまった。
「上手い事、公然組織に分散してたからね。末端までたどるのに苦労したよ」
「末端組織まで……俺のデータにいくつか加筆したわけですか?」
見上げたランの先に、いつもの通り眠そうな嵯峨の瞳が漂っている。
「東ムスリム革命戦線、皇国の旅団、聖職者会議。まあぞろぞろとおっかないテロ組織の名前が出て来る出て来る……胡州の貴族主義非公然組織の帳簿だっていうのに遼州のテロ組織の名鑑ができるほど隅々まで金が行き届いているよ。近藤という男……甲武の参謀にしておくには惜しい男だったというところかね。この集金能力は政治家、しかも派閥の領袖だって務まるよ」
嵯峨がたとえに上げた頻繁に遼州各地でテロを行っている具体的組織名に安城の顔が真剣なものへと変わる。
「そのあたりの名前と金の流れだけならうちでも把握してるわよ。それならこれをもらう必要なんて無いわね。わざわざ手渡しってことはそれ以上のもの……何か掴んだの?」
安城の目色が変わる。
「南都の米軍基地を標的にした自爆テロ。確か現役の海軍兵士が20名程お亡くなりになった事件。ありましたよね。あれからもう三ヶ月だ。遼の警察当局もがんばっているねえ……とりあえず遼州民族派の幹部の逮捕状を請求するくらいまで来たんだ。大したもんだよ……ただねえ……」
いつものように相手を嵯峨はもったいぶってつぶやいた。安城はだまされまいとその言葉に耳を澄ます。
「奥歯に物の挟まったような言い方なんとかならないの?とりあえず何が言いたいのかしら?」
苛立つ安城に嵯峨は満面の笑顔で答えた。
「何、これ」
安城は静かにディスクを受け取る。何の変哲も無いデータディスク。親指の爪ほどの黒い板をじっと見つめる。ランはそれが何かを知っているとでも言うようにソファーで静かにうなづいていた。
「プレゼント。という事でどう?」
嵯峨はニヤリと笑う。安城は嵯峨の言葉遣いに彼を見つめて一瞬ハッとした後、照れるようにディスクに目を移す。
「見ないんですか?隊長は」
ランは嵯峨を一瞥して不満そうにつぶやく。彼の不満そうな表情から秀美はそのディスクの内容があまり公に出来ないが重要な情報が詰まっていることを察した。
「見たよ。ランよ、うちの情報将校達もよくやってくれたねえ。でもまあ予想の範囲内ってとこか」
そう言うと嵯峨は鋭い目つきで自分をにらんでいる安城の目を気にしながらタバコに火をつけた。
「裏の取れていない近藤資金の流れの未発表資料?」
安城は軽く掻き揚げると足元のかばんを開き、バインダーを取り出して並んだ同じようなディスクと一緒にそのディスクをしまった。
「上手い事、公然組織に分散してたからね。末端までたどるのに苦労したよ」
「末端組織まで……俺のデータにいくつか加筆したわけですか?」
見上げたランの先に、いつもの通り眠そうな嵯峨の瞳が漂っている。
「東ムスリム革命戦線、皇国の旅団、聖職者会議。まあぞろぞろとおっかないテロ組織の名前が出て来る出て来る……胡州の貴族主義非公然組織の帳簿だっていうのに遼州のテロ組織の名鑑ができるほど隅々まで金が行き届いているよ。近藤という男……甲武の参謀にしておくには惜しい男だったというところかね。この集金能力は政治家、しかも派閥の領袖だって務まるよ」
嵯峨がたとえに上げた頻繁に遼州各地でテロを行っている具体的組織名に安城の顔が真剣なものへと変わる。
「そのあたりの名前と金の流れだけならうちでも把握してるわよ。それならこれをもらう必要なんて無いわね。わざわざ手渡しってことはそれ以上のもの……何か掴んだの?」
安城の目色が変わる。
「南都の米軍基地を標的にした自爆テロ。確か現役の海軍兵士が20名程お亡くなりになった事件。ありましたよね。あれからもう三ヶ月だ。遼の警察当局もがんばっているねえ……とりあえず遼州民族派の幹部の逮捕状を請求するくらいまで来たんだ。大したもんだよ……ただねえ……」
いつものように相手を嵯峨はもったいぶってつぶやいた。安城はだまされまいとその言葉に耳を澄ます。
「奥歯に物の挟まったような言い方なんとかならないの?とりあえず何が言いたいのかしら?」
苛立つ安城に嵯峨は満面の笑顔で答えた。
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