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工場の中の『特殊な部隊』
第10話 始まった社会人生活
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「インテリなんですね……ちっちゃいけど」
本当に感心してうなづきながら誠はランに話しかけた。
「インテリじゃねー、常識だ。知らねー奴は、全員勉強が足りねーんだ」
工場の建物が途切れた先に、コンクリートの高い壁が左右の視界の果てまで続く。
「見えたぞ。あれが、まー、うちの駐屯地だ」
誠は窓の外を眺めた。
左右に視界が続く限り、壁のようなものは、果てしなく続いていた。
「広いんですね、本当に」
誠はそう言って心から感心した。
ランの表情をうかがおうとバックミラーに目をやった。ランは相変わらず笑っていた。
「当たり前のことしか言えねーんだな。『特殊な部隊』の活動拠点だから広くて当然だ。東和陸軍の教導隊の基地に比べたら『猫の額』程度のもんだ」
東和陸軍の基地は確かに大きいのは誠も知っていた。そのトップエースであるランの率いる教導隊基地もまた巨大だろうとは想像できた。
「今時、大型ジェット機を飛ばす訳じゃねーんだけどな。うちの所有で『運用艦』ってのがあるんだ。そいつを最大3隻置ける土地を確保しようとしたんだと。どこの間抜けがそんなこと言いだしたかは知らねーけどさ」
ランは頭を掻きながらそう言った。
「運用艦ですか?専用の船があるなんて……凄いですね」
誠の言葉にランは再び頭を掻く。そして、しばらく考えた後、口を開いた。
「んなの、凄かねーよ。それを東都の密集した住宅街の上空を飛ばそうとしたから大問題になったわけだ。最終的にこの土地を菱川重工から譲ってもらう契約を結ぶ条件に『運用艦』はよそに配備するって条文が加わって、その計画はボツになった。アタシ等の機体も、その他の使い慣れた機材も、『運用艦』のある港まで、えっちらおっちらトレーラーやコンテナで運ぶんだ……」
そう言うとランは車を左折させる。そこにあるゲートの前で車を一時停止させて、運転席の窓を開けた。
近づいてくる延々と続く駐屯地の壁に感心しながら誠は窓の外を眺めていた。
「まー。隊長好みの『落ちこぼれ』や『社会不適合者』を集めた『特殊な部隊』だからな、うちは。そーいう意味でも世間様の駐屯地設置反対運動ぐらいあるわ、ふつーは」
バックミラーの中でランは『いい顔』で笑っていた。
誠はランの言葉に違和感を感じていた。『特殊な部隊』という言葉の使われ方が誠の予想の上を言っていた。
「……『落ちこぼれ」……『社会不適合者』……」
誠はそれ以外の言葉を口にできなかった。
「そーだ。『特殊な馬鹿』がいっぱいいるから、『特殊な部隊』。オメーは立派な『高学歴の理系馬鹿』で、東和共和国宇宙軍以外に、『就職先』が無かった『社会不適合者』!ちゃんと該当しているじゃねーか、条件に」
ランの言葉が明らかに誠を馬鹿にしていることは理解できた。
誠の気が短ければ、彼は小さいランの首に『チョークスリーパー』をしていたことだろう。
自動車はとりあえず大きなコンクリート造りの建物の前で停まった。
大きな運転席の横から可愛らしいランが顔を出し、誠に向かって笑いかけた。
自動的に開いた誠のドアの前にランは笑顔で誠に手を伸ばし握手を求めた。
「テメーは結局、『エリート』にはなりたくてもなれなかった。その時点でアタシが目を付けた。安心しろ……アタシが立派な『社会人』にしてやる!」
ランは褒めているのかけなしているのかよくわからないことを言った。満面の笑みである。
「……はあ」
ランは笑顔でさらに一言言った。
「オメーの乗る機体にはちゃんと『エチケット袋』は用意させるつもりだ!安心しろ!」
誠は本当に『特殊な部隊』に配属になってしまったらしい。
胃から食道にかけての『いつもの違和感』を感じながら誠はそう思った。
本当に感心してうなづきながら誠はランに話しかけた。
「インテリじゃねー、常識だ。知らねー奴は、全員勉強が足りねーんだ」
工場の建物が途切れた先に、コンクリートの高い壁が左右の視界の果てまで続く。
「見えたぞ。あれが、まー、うちの駐屯地だ」
誠は窓の外を眺めた。
左右に視界が続く限り、壁のようなものは、果てしなく続いていた。
「広いんですね、本当に」
誠はそう言って心から感心した。
ランの表情をうかがおうとバックミラーに目をやった。ランは相変わらず笑っていた。
「当たり前のことしか言えねーんだな。『特殊な部隊』の活動拠点だから広くて当然だ。東和陸軍の教導隊の基地に比べたら『猫の額』程度のもんだ」
東和陸軍の基地は確かに大きいのは誠も知っていた。そのトップエースであるランの率いる教導隊基地もまた巨大だろうとは想像できた。
「今時、大型ジェット機を飛ばす訳じゃねーんだけどな。うちの所有で『運用艦』ってのがあるんだ。そいつを最大3隻置ける土地を確保しようとしたんだと。どこの間抜けがそんなこと言いだしたかは知らねーけどさ」
ランは頭を掻きながらそう言った。
「運用艦ですか?専用の船があるなんて……凄いですね」
誠の言葉にランは再び頭を掻く。そして、しばらく考えた後、口を開いた。
「んなの、凄かねーよ。それを東都の密集した住宅街の上空を飛ばそうとしたから大問題になったわけだ。最終的にこの土地を菱川重工から譲ってもらう契約を結ぶ条件に『運用艦』はよそに配備するって条文が加わって、その計画はボツになった。アタシ等の機体も、その他の使い慣れた機材も、『運用艦』のある港まで、えっちらおっちらトレーラーやコンテナで運ぶんだ……」
そう言うとランは車を左折させる。そこにあるゲートの前で車を一時停止させて、運転席の窓を開けた。
近づいてくる延々と続く駐屯地の壁に感心しながら誠は窓の外を眺めていた。
「まー。隊長好みの『落ちこぼれ』や『社会不適合者』を集めた『特殊な部隊』だからな、うちは。そーいう意味でも世間様の駐屯地設置反対運動ぐらいあるわ、ふつーは」
バックミラーの中でランは『いい顔』で笑っていた。
誠はランの言葉に違和感を感じていた。『特殊な部隊』という言葉の使われ方が誠の予想の上を言っていた。
「……『落ちこぼれ」……『社会不適合者』……」
誠はそれ以外の言葉を口にできなかった。
「そーだ。『特殊な馬鹿』がいっぱいいるから、『特殊な部隊』。オメーは立派な『高学歴の理系馬鹿』で、東和共和国宇宙軍以外に、『就職先』が無かった『社会不適合者』!ちゃんと該当しているじゃねーか、条件に」
ランの言葉が明らかに誠を馬鹿にしていることは理解できた。
誠の気が短ければ、彼は小さいランの首に『チョークスリーパー』をしていたことだろう。
自動車はとりあえず大きなコンクリート造りの建物の前で停まった。
大きな運転席の横から可愛らしいランが顔を出し、誠に向かって笑いかけた。
自動的に開いた誠のドアの前にランは笑顔で誠に手を伸ばし握手を求めた。
「テメーは結局、『エリート』にはなりたくてもなれなかった。その時点でアタシが目を付けた。安心しろ……アタシが立派な『社会人』にしてやる!」
ランは褒めているのかけなしているのかよくわからないことを言った。満面の笑みである。
「……はあ」
ランは笑顔でさらに一言言った。
「オメーの乗る機体にはちゃんと『エチケット袋』は用意させるつもりだ!安心しろ!」
誠は本当に『特殊な部隊』に配属になってしまったらしい。
胃から食道にかけての『いつもの違和感』を感じながら誠はそう思った。
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