18 / 69
気のいいアンちゃん
第18話 整備班
しおりを挟む
廊下に出た誠を待っていたのは、人影は全く無い完全な無人なまま続く廊下だった。
「どこだ?入口があっち」
そこまで言って軽く周りを見回す。右に顔を向けると、この建物に入ってきた時に使った自動ドアが見えた。
「つまり、逆に行けばいいんだな」
独り言を言いながら、誠は入口の反対側に進んだ。
突然行き止まりになったが、そこには物々しいドアがあった。
「なんか、秘密基地っぽいな。こういう時は右側に……」
そう言いながら誠は扉の右側に大きな緑色のボタンを発見した。その下には赤いボタンがある。緑のボタンが出っ張り、赤いボタンはへこんでいる。
「こういう時は出っ張ってる方を!」
誠は勢いよく緑色のボタンを叩いた。緑のボタンがへこみ、赤いボタンが出っ張る。
それを合図にゆっくりとその鉄の扉が開き始めた。
「こういう時はドライアイスで煙が出ると雰囲気出るんだけどな」
ここがすでにどこかおかしいところであることを確信した誠は、そう言う風に変な思考をすることでなんとか自分のどうかしている運命に立ち向かうことに決めていた。
扉が開いた向こうから音楽が聞こえてきた。不良が好きそうなロックンロールである。うんこ座りのヤンキーがタバコを吸いながら車座になって、隣のスピーカーから流れているあれである。
「まさに不良のたまり場」
誠は少しビビりながら不良のたまり場に足を踏み入れた。
すぐにガソリンエンジン向けのエンジンオイルの匂いが鼻を突いた。そして、ガソリンをはじめとする揮発油の匂いが混じった刺激臭が鼻を突く。
『匂いが……』
理系大学なので自動車部があり、大学に入った時に新入生歓迎レースでその匂いを嗅いだが、これほどその匂いが染みついている場所に行ったことが無い。
三十メートルぐらいの奥行き、幅は相当あるとしか誠にはわからない。車、いわゆる『旧車』が並んでいる。
「すいませーん」
人影がまるでないので、誠は叫んでみた。
誰も来ない。相変わらずロックンロールが流れている。
「誰かいますかー」
今度は少し大声で叫んでみた。
「うるせーな、いい曲聞いてんだよ。雑音混ぜんな……」
ジャッキアップした白と黒のツートンカラーのガソリンエンジンの旧車の下から声が聞こえた。
「あのー島田さんですか?」
車の下から出てきた185㎝の誠よりさらに大きな恰幅の良い男がはい出してきた。水色のつなぎは整備班の指定のものだろう。右胸に『火盗』の刺繍がある。
空調が無いのでむっとした空気の中、顔中油だらけの男は立ち上がった。
「ちげーよ。班長は駐車場。また、バイクでもいじってんだろ」
そう言うと大男は再び車の下に潜ろうとする。
「ったく、邪魔しやがっって。班長が『こいつはこれまでの青瓢箪と違って、見どころがある』って言ってたけど、身長だけじゃねーか。他よりましなところは……」
そうぶつぶつ言いながら男は車の下に潜ろうとする。
「あのー駐車場は……」
仰向けになって車の下に入ろうとする大男に声を掛ける。
「あっち」
右手の方を指さすと男はそのまま車の下に潜りこむ。
「こういう時、何を言っても無駄ですよね……」
誠は遠慮がちにそう言った。
「わかってんなら行けよ!ガソリン車の旧車のバイクの前で座って、タバコ吸ってる上半身裸の兄ちゃん。そんな馬鹿他にいねーから。格納庫の入り口からすぐわかる!さっさと行け!俺は忙しいの!」
顔だけ出したオイルだらけの男はそう吐き捨てるように言うと、誠を無視して車の下に潜ってしまった。
「なんだかなあ……」
とりあえず上半身裸の馬鹿そうな男を見つけたら声を掛けようと決めて、誠は歩き出した。
「どこだ?入口があっち」
そこまで言って軽く周りを見回す。右に顔を向けると、この建物に入ってきた時に使った自動ドアが見えた。
「つまり、逆に行けばいいんだな」
独り言を言いながら、誠は入口の反対側に進んだ。
突然行き止まりになったが、そこには物々しいドアがあった。
「なんか、秘密基地っぽいな。こういう時は右側に……」
そう言いながら誠は扉の右側に大きな緑色のボタンを発見した。その下には赤いボタンがある。緑のボタンが出っ張り、赤いボタンはへこんでいる。
「こういう時は出っ張ってる方を!」
誠は勢いよく緑色のボタンを叩いた。緑のボタンがへこみ、赤いボタンが出っ張る。
それを合図にゆっくりとその鉄の扉が開き始めた。
「こういう時はドライアイスで煙が出ると雰囲気出るんだけどな」
ここがすでにどこかおかしいところであることを確信した誠は、そう言う風に変な思考をすることでなんとか自分のどうかしている運命に立ち向かうことに決めていた。
扉が開いた向こうから音楽が聞こえてきた。不良が好きそうなロックンロールである。うんこ座りのヤンキーがタバコを吸いながら車座になって、隣のスピーカーから流れているあれである。
「まさに不良のたまり場」
誠は少しビビりながら不良のたまり場に足を踏み入れた。
すぐにガソリンエンジン向けのエンジンオイルの匂いが鼻を突いた。そして、ガソリンをはじめとする揮発油の匂いが混じった刺激臭が鼻を突く。
『匂いが……』
理系大学なので自動車部があり、大学に入った時に新入生歓迎レースでその匂いを嗅いだが、これほどその匂いが染みついている場所に行ったことが無い。
三十メートルぐらいの奥行き、幅は相当あるとしか誠にはわからない。車、いわゆる『旧車』が並んでいる。
「すいませーん」
人影がまるでないので、誠は叫んでみた。
誰も来ない。相変わらずロックンロールが流れている。
「誰かいますかー」
今度は少し大声で叫んでみた。
「うるせーな、いい曲聞いてんだよ。雑音混ぜんな……」
ジャッキアップした白と黒のツートンカラーのガソリンエンジンの旧車の下から声が聞こえた。
「あのー島田さんですか?」
車の下から出てきた185㎝の誠よりさらに大きな恰幅の良い男がはい出してきた。水色のつなぎは整備班の指定のものだろう。右胸に『火盗』の刺繍がある。
空調が無いのでむっとした空気の中、顔中油だらけの男は立ち上がった。
「ちげーよ。班長は駐車場。また、バイクでもいじってんだろ」
そう言うと大男は再び車の下に潜ろうとする。
「ったく、邪魔しやがっって。班長が『こいつはこれまでの青瓢箪と違って、見どころがある』って言ってたけど、身長だけじゃねーか。他よりましなところは……」
そうぶつぶつ言いながら男は車の下に潜ろうとする。
「あのー駐車場は……」
仰向けになって車の下に入ろうとする大男に声を掛ける。
「あっち」
右手の方を指さすと男はそのまま車の下に潜りこむ。
「こういう時、何を言っても無駄ですよね……」
誠は遠慮がちにそう言った。
「わかってんなら行けよ!ガソリン車の旧車のバイクの前で座って、タバコ吸ってる上半身裸の兄ちゃん。そんな馬鹿他にいねーから。格納庫の入り口からすぐわかる!さっさと行け!俺は忙しいの!」
顔だけ出したオイルだらけの男はそう吐き捨てるように言うと、誠を無視して車の下に潜ってしまった。
「なんだかなあ……」
とりあえず上半身裸の馬鹿そうな男を見つけたら声を掛けようと決めて、誠は歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる