60 / 69
『特殊な部隊』の真実
第60話 救いの女神
しおりを挟む
誠の理性を保っている命綱の『嵯峨の手渡した補聴器』からは、いまだ何一つ指示のようなものは聞こえてこなかった。
誠はただ両手を手錠で拘束されたまま、ぼろぼろの雑居ビルの一室に監禁されていた。
突然、ドアの前で大きな物音と、男のうめき声がした。そしてその直後に銃声が二発響く。誠は身を起こしてじっとドアを見つめた。
ドアを撃つ銃声がして、扉が蹴破られると、そこには光学迷彩式戦闘服姿のかなめが拳銃を構えて立っていた。
「はーい、囚われの王子様。『円卓の騎士』がお迎えにあがりましたぜ!」
笑顔を向けるかなめだが、誠には彼女の顔よりもその足元に頭を吹き飛ばされた死体が転がっている方に目が行った。
「んだ?アタシが助けたんだぜ、見るならアタシの顔でも見ろよ、この『愛玩動物』」
誠はあたりに漂う『人間の血液』の匂いに酔いながらかなめの作り笑顔を見つめる。
「西園寺さん……どうして僕のいる場所が」
初めての『拉致監禁』事件の当事者となった誠には、そんな言葉を口にするのが精一杯だった。
「発信機兼盗聴器をあの『駄目人間』からもらったろ?当然、アタシの『電子の脳』にはバレバレなわけ」
そう言うとかなめは誠の顎をつかんで顔を近づける。
「手錠か。ちょっと待てよ」
そう言うとかなめは素手で手錠の鎖をねじ切った。
「このくらい簡単だ。アタシは『生身』じゃねえからな。この体はすでに『機械化』済みだ……まあ、よく我慢したな」
誠は笑顔でそう言うかなめを見た。そこには、あまりに美しくて、虚ろなかなめのたれ目があった。
そんな中、下の方でアサルトライフルの一斉射と思われる射撃音と、それに反撃するような銃声が響いてきた。
「カウラの奴、いいタイミングで始めてくれたな。ちょっと待て」
かなめはそう言うとポロシャツを着た死体のホルスターから拳銃を奪い取った。
「酷い銃だが無いよりましだ。お前も軍人なら、自分の身くらい自分で守れ。とりあえずアタシについて来い、カウラの奴と合流する」
かなめはそう言い残して廊下に飛び出した。
すぐに手下がここでの出来事に気づいたのか、驚いた表情で飛び出してくる度に、かなめは迷うことなくその顔面に二、三発の銃弾を正確に浴びせかけた。誠はその度にあがる血飛沫に次第に心が冷えていくことを感じていた。
「……僕、僕、僕……」
階段手前でサブマシンガンを持った相手の掃射で身動きが取れなくなったところで、誠は恐怖のあまり自然にそう呟いていた。
「そんなに怖えか?ならウチみたいな『あぶない仕事』は辞めちまえ!」
拳銃のマガジンを換えながら、吐き捨てるようにかなめはつぶやいた。
我を取り戻して誠がかなめを見つめると、そこにはこれまでと違う、どこか寂しげな表情を浮かべたかなめの姿があった。
だが銃のマガジンを交換して銃のスライドが発射体勢に入ると、そんなかなめの表情も一瞬で変わる。それはまるで鉛のように感情を押し殺した瞳だと誠は思った。
「おい、神前!しっかりついて来いよ!」
かなめじっと自分を見つめている誠を見た。
口元には笑みが浮かんでいる。
『この人はこの状況を楽しんでいる?』
誠はそう感じて背筋が寒くなるのを感じる。だが、かなめはそんな目で自分を見つめる誠に何かを言うわけでもなく、素早く現状を頭の中に叩き込んだように視線を階段の下で待ち構えているチンピラ達へと向けた。
「バーカ。まさに素人に鉄砲だな。向こうに廊下が見えるだろ?次の掃射でアチラさんのマガジンは空になるから背中を叩いたら飛び出して向こうまで行け。そこで勘違いをして一斉射してくる馬鹿をアタシが喰う」
誠の前には楽しそうにこの状況を見つめているかなめの姿がある。死線を抜けてきた計算高い殺し屋の目と言うものはこう言うものかもしれない。誠はそう思った。そしてそんな瞳のかなめの言葉に、逆らう勇気は彼にはなかった。
階下でのアサルトライフルの射撃音が上がってくる。時折、その銃撃戦で弾丸を浴びたチンピラの断末魔の叫び声が混じり始めた。焦っているのか、見えもしない誠達に下にいるチンピラはセミオートに切り替えてけん制するように誰もいない壁に向かい発砲する。
「アマチュアだな。弾の無駄だぜ」
そう言うとかなめの口元に再び笑顔が戻る。残酷なその笑顔を誠は正視できなくなって、誠はひたすら背中をかなめが叩くのを待った。
階下のチンピラ達の悲鳴が止んだ。
変わりに拳銃の発射音が十秒ごとに繰り返される。ようやく発砲が弾の無駄と気付いた下のチンピラが相談を始めた。
「弾は?」
「あと……」
誠もチンピラが二人で残弾を数えている声を聞き逃さなかった。
その時、かなめが誠の背中を叩いた。はじかれるようにして誠は走った。すぐに気づいた階下の二人が掃射を始める。弾は正面の故障しているらしいエレベータの壁にめり込む。そのまま誠はトイレのドアの前に張り付いて、やり遂げた顔をしてかなめの方を振り向こうとした。
誠はただ両手を手錠で拘束されたまま、ぼろぼろの雑居ビルの一室に監禁されていた。
突然、ドアの前で大きな物音と、男のうめき声がした。そしてその直後に銃声が二発響く。誠は身を起こしてじっとドアを見つめた。
ドアを撃つ銃声がして、扉が蹴破られると、そこには光学迷彩式戦闘服姿のかなめが拳銃を構えて立っていた。
「はーい、囚われの王子様。『円卓の騎士』がお迎えにあがりましたぜ!」
笑顔を向けるかなめだが、誠には彼女の顔よりもその足元に頭を吹き飛ばされた死体が転がっている方に目が行った。
「んだ?アタシが助けたんだぜ、見るならアタシの顔でも見ろよ、この『愛玩動物』」
誠はあたりに漂う『人間の血液』の匂いに酔いながらかなめの作り笑顔を見つめる。
「西園寺さん……どうして僕のいる場所が」
初めての『拉致監禁』事件の当事者となった誠には、そんな言葉を口にするのが精一杯だった。
「発信機兼盗聴器をあの『駄目人間』からもらったろ?当然、アタシの『電子の脳』にはバレバレなわけ」
そう言うとかなめは誠の顎をつかんで顔を近づける。
「手錠か。ちょっと待てよ」
そう言うとかなめは素手で手錠の鎖をねじ切った。
「このくらい簡単だ。アタシは『生身』じゃねえからな。この体はすでに『機械化』済みだ……まあ、よく我慢したな」
誠は笑顔でそう言うかなめを見た。そこには、あまりに美しくて、虚ろなかなめのたれ目があった。
そんな中、下の方でアサルトライフルの一斉射と思われる射撃音と、それに反撃するような銃声が響いてきた。
「カウラの奴、いいタイミングで始めてくれたな。ちょっと待て」
かなめはそう言うとポロシャツを着た死体のホルスターから拳銃を奪い取った。
「酷い銃だが無いよりましだ。お前も軍人なら、自分の身くらい自分で守れ。とりあえずアタシについて来い、カウラの奴と合流する」
かなめはそう言い残して廊下に飛び出した。
すぐに手下がここでの出来事に気づいたのか、驚いた表情で飛び出してくる度に、かなめは迷うことなくその顔面に二、三発の銃弾を正確に浴びせかけた。誠はその度にあがる血飛沫に次第に心が冷えていくことを感じていた。
「……僕、僕、僕……」
階段手前でサブマシンガンを持った相手の掃射で身動きが取れなくなったところで、誠は恐怖のあまり自然にそう呟いていた。
「そんなに怖えか?ならウチみたいな『あぶない仕事』は辞めちまえ!」
拳銃のマガジンを換えながら、吐き捨てるようにかなめはつぶやいた。
我を取り戻して誠がかなめを見つめると、そこにはこれまでと違う、どこか寂しげな表情を浮かべたかなめの姿があった。
だが銃のマガジンを交換して銃のスライドが発射体勢に入ると、そんなかなめの表情も一瞬で変わる。それはまるで鉛のように感情を押し殺した瞳だと誠は思った。
「おい、神前!しっかりついて来いよ!」
かなめじっと自分を見つめている誠を見た。
口元には笑みが浮かんでいる。
『この人はこの状況を楽しんでいる?』
誠はそう感じて背筋が寒くなるのを感じる。だが、かなめはそんな目で自分を見つめる誠に何かを言うわけでもなく、素早く現状を頭の中に叩き込んだように視線を階段の下で待ち構えているチンピラ達へと向けた。
「バーカ。まさに素人に鉄砲だな。向こうに廊下が見えるだろ?次の掃射でアチラさんのマガジンは空になるから背中を叩いたら飛び出して向こうまで行け。そこで勘違いをして一斉射してくる馬鹿をアタシが喰う」
誠の前には楽しそうにこの状況を見つめているかなめの姿がある。死線を抜けてきた計算高い殺し屋の目と言うものはこう言うものかもしれない。誠はそう思った。そしてそんな瞳のかなめの言葉に、逆らう勇気は彼にはなかった。
階下でのアサルトライフルの射撃音が上がってくる。時折、その銃撃戦で弾丸を浴びたチンピラの断末魔の叫び声が混じり始めた。焦っているのか、見えもしない誠達に下にいるチンピラはセミオートに切り替えてけん制するように誰もいない壁に向かい発砲する。
「アマチュアだな。弾の無駄だぜ」
そう言うとかなめの口元に再び笑顔が戻る。残酷なその笑顔を誠は正視できなくなって、誠はひたすら背中をかなめが叩くのを待った。
階下のチンピラ達の悲鳴が止んだ。
変わりに拳銃の発射音が十秒ごとに繰り返される。ようやく発砲が弾の無駄と気付いた下のチンピラが相談を始めた。
「弾は?」
「あと……」
誠もチンピラが二人で残弾を数えている声を聞き逃さなかった。
その時、かなめが誠の背中を叩いた。はじかれるようにして誠は走った。すぐに気づいた階下の二人が掃射を始める。弾は正面の故障しているらしいエレベータの壁にめり込む。そのまま誠はトイレのドアの前に張り付いて、やり遂げた顔をしてかなめの方を振り向こうとした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる