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まみ

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1章

新しい私

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しばらくして、彼は言った。

「ありがとうございます。心がすっきりしました。僕、明日この街を出るんです。大好きなこの街を出ます。彼女も僕も知らない街に出ます。知らない世界に行くんです」

その途端、わたしは携帯を出していた

逃げないで

逃げないでわたし

逃げないで黒猫さん


「連絡先交換しませんか」
その一言がやっと出た。出てしまった。


彼は寂しそうな、驚いた目で言った。


「shun0112です」


そこから、私たちの先の未来が少し見えた気がした。

「ありがとう。」
彼の声は少し、明るかった。


そこから先のその日のことは覚えていない。
気付いたら彼がお金を払って
私はぼーっと彼の背中を見ていた。
なにをしているんだろう。

なにをしているんだろう。

私は気付いたら変える支度をして
気付いたら自分の部屋にいた。

帰ってから疲れが襲ってきた。

鉛を背負っていたのに開放されたあの感じだった。

大学でも異性と話せないのに
なにをしているんだろう…

かおりさんの事が忘れられないんでしょ
なんで、他人の人生にそんなに踏み込んだの…

わたしはすぐさま彼の連絡先を消そうとした。
あの時の自分はおかしかった。
目の前の人に唐突過ぎた。

その時に彼からきていた

「追加ありがとう」

この一言で私の思考は幸せの方に
行ってしまったのである。


話していくにつれ彼がどんな性格なのかわかった。
彼は私より大人だった。
大人だから謙虚さもあり、私より幼稚ではなかった。

その中で彼が好きだったのは

音楽だった。
彼は私に新しい音楽をたくさん教えてくれた。
彼はドラムを叩いていた。
普通なら、ギターなのに珍しいなあと思ってそんな彼にも惹かれている自分がいた。

それに対し、一ミリも音楽を聞かない私は無知だった。
でも、彼の奏でる音楽はどこか心地よかった。
彼が聞く音楽はどこか切なかった。
バラードから、ポップからさまざまなジャンルを聴いていたが、
どこか悲しいメロディーは必ずどこかにあった。

そんな音楽が私は好きになった。
バイト先に行く時、大学に行くとき、
彼が好きな音楽をひたすら聞いた。

彼が演奏している所も見た。
彼の腕はいつにも増してたくましくて
彼は笑顔だった。

好きだ

しゅんが好きだ

そう思った。
でも、わたしは遊ぼうなんて言わなかった。

この距離感が楽しかったのだ。

所詮21才のガキだが
そんなの関係ない。
わたしは彼しか見ていなかった。

彼が好きだった。彼の全てが。
大好きだった。









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