ドSな王太子はただのヤキモチ焼きでした~溺愛はお仕置きのあとで~

3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや

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貴方に食べさせるケーキはありません

「モニカ、ここにいたのか」

「!!」

 私がため息を吐いた矢先、ダグラスが調理室にやって来たのだった。

「お、お帰りなさいませ。ダグラス様。その……夕方頃お戻りになられると伺っておりましたが、随分と早いお帰りで」

「ああ、予定より早く終わったんだ」

 ダグラスは隣国に三日間の日程で視察に行っていたのだが、どうやら彼は早めに帰宅したようだ。

「新しいケーキを試作してたのか?」

「は、はい……ダグラス様も何かお作りになるのですか?」

 それとなくケーキの載った皿を彼から遠ざけつつ、私は尋ねた。

 チョコレートは彼の専門分野であり、何を言われるか分かったものではない。だからなるべく、話題を逸らしたかったのだ。

「ああ。ちょうど訪問先で珍しいスパイスやドライフルーツを手に入れたから、試しに何か作ってみようと思ってな。できたら、夕食のデザートにでも出す予定だ」

「そうなんですの……楽しみにしてますわ」

「……ところで」

 そこで、ダグラスの視線がチョコレートケーキへと移ってしまった。

「そのケーキは、食べてみたのか?」

「……はい。でも……召し上がっていただける程の完成度では、ありませんでした」

 軽く俯きながら、私は言った。

「まだ残ってるのか。だったらひとつ、食べてみてもいいか?」

「……結構です」

 自分より優れた者にご指導ご鞭撻いただくのが、パティシエとしてあるべき姿だろう。しかし今の私は、彼の批評を受ける気にはなれないでいた。

「まさか、全部捨てるのか?」

「いえ、ローガンと食べようかと思います。そろそろ彼も、帰ってくる頃かと思いますので」

 もうじきローガンが公務から帰ってくるはずなので、一緒に食べようと思ったのだ。彼はきっと、美味しいと言ってくれるはずだから。

「三つあるなら、ひとつ食べても二つ余るだろう?」

「いいえ。ここには貴方に召し上がっていただけるケーキはありませんわ……っ!!」

「私には食べさせられないが、あいつには食べさせられるということか」

「ええ。……では、失礼します」

 私はケーキを載せたトレイを持って、調理室から出ようとした。

 ……ダグラスの顔つきが、とてつもなく険しくなっていることにも気づかず。

「待て、モニカ」

 ダグラスは、厳しい口調で私を呼び止めた。

「まずはトレイを置きなさい。話はそれからだ」

 シェフやパティシエの世界では、説教を受ける時、必ず手に何も持たないというルールが存在する。それは、手に持った料理や調理器具を床に落とすのを避けるためであった。

 彼は自分に指導を入れるつもりなのだと、私は察した。
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