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第19話 聖樹改装計画
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聖樹を好きに改装できる。
それが、俺に与えられた力――もしそれが本当ならば、
「……やってみるか」
俺は聖樹の太い幹に手を触れると、頭の中に扉を思い浮かべる。すると、先ほどの階段と同じように扉が出現。これで、幹の中にあるあの広い空間へ簡単に出入りができるようになる。
「これでいいかな」
「ドアを作るなんて……まるで家ね」
「そのつもりで作ったんだよ」
俺がそう言うと、シャーニーはキョトンとして俺を見つめる。
「家? 聖樹を家にしようっていうの?」
「一夜を明かすとなったら、そうした方がいいと思って」
「確かに」
シャーニーは納得してくれたようだ。
気を取り直して――俺は扉を開けて内部へと進んで行く。
「明るさは……魔力の発光で十分か」
「そうなると、寝具が必要になるわね」
自然な流れで一緒に聖樹の中へと入ってきたローナは、周りを見回しながら言う。本当に家っぽくするなら、寝具だけじゃなく、この殺風景な場所を住みやすくするためのいろいろな家具が必要となるだろう。
「って、本当に住むわけじゃないんだけど……」
俺の目的は、リガンの町を向かうこと。コーベットさんとの約束があるし、もしかしたらもう無実が証明されて、迎えが待っているかもしれない。
なので、本来ならば今すぐにでもここを出ていくべきなのだが……ウィラやシャーニーたちのこともあって、とりあえず今日に関してはこのままこの聖樹で一夜を過ごすことにしたのだ。
――ただ、ひとつ確認しておきたいことがあった。
「……なあ、シャーニー」
「何?」
「もし、俺がここからいなくなっても……この聖樹は存在していけるか?」
「それは難しいかも」
「えっ?」
恐れていた回答が耳に入り、俺は思わず間の抜けた声を漏らす。
「聖樹はあなたの魔力とリンクしているの。あまりにも遠くに離れてしまえば……その力を失うことになるわ」
「そ、そんな……」
なら、俺はここから離れられないってことか?
俺の質問を耳にしたシャーニーは、俺がここから離れようとしていることを察したようで、その件について話を続けた。
「あなたはさっきの村の住人じゃないの?」
「俺は……その……旅の者だよ」
さすがに逃亡犯とは言えなかったのでそう誤魔化した。
「じゃあ、ここからは……」
「離れなくちゃならない。俺には……行かなくちゃいけない場所があるんだ」
「そう……だったの……」
シャーニーは明らかに落胆していた。
やはり、ここに俺が永住すると考えていたのだろう。
「…………」
俺としても、もし叶うならばここに残りたいという気持ちはある。だけど、幼い頃から世話になっている王都のみんなにも、せめて「俺は何もしてない」という事実を伝えたいという願いがあった。
戻りたい。
もう一度……あの町へ。
以前のような、裕福とは程遠いけど楽しくて明るかった日々へ。
一体、どうすることがベストな答えなのか。
それをすぐに導きだすことはできそうにない。
「大丈夫、ルディ」
「っ! あ、ああ、問題ないよ、ローナ。それより、寝具を作らないとな」
心配そうに顔を覗き込むローナに、俺はそう言って平気だとアピールする。
……今日の夜は……なかなか寝つけそうにないな。
それが、俺に与えられた力――もしそれが本当ならば、
「……やってみるか」
俺は聖樹の太い幹に手を触れると、頭の中に扉を思い浮かべる。すると、先ほどの階段と同じように扉が出現。これで、幹の中にあるあの広い空間へ簡単に出入りができるようになる。
「これでいいかな」
「ドアを作るなんて……まるで家ね」
「そのつもりで作ったんだよ」
俺がそう言うと、シャーニーはキョトンとして俺を見つめる。
「家? 聖樹を家にしようっていうの?」
「一夜を明かすとなったら、そうした方がいいと思って」
「確かに」
シャーニーは納得してくれたようだ。
気を取り直して――俺は扉を開けて内部へと進んで行く。
「明るさは……魔力の発光で十分か」
「そうなると、寝具が必要になるわね」
自然な流れで一緒に聖樹の中へと入ってきたローナは、周りを見回しながら言う。本当に家っぽくするなら、寝具だけじゃなく、この殺風景な場所を住みやすくするためのいろいろな家具が必要となるだろう。
「って、本当に住むわけじゃないんだけど……」
俺の目的は、リガンの町を向かうこと。コーベットさんとの約束があるし、もしかしたらもう無実が証明されて、迎えが待っているかもしれない。
なので、本来ならば今すぐにでもここを出ていくべきなのだが……ウィラやシャーニーたちのこともあって、とりあえず今日に関してはこのままこの聖樹で一夜を過ごすことにしたのだ。
――ただ、ひとつ確認しておきたいことがあった。
「……なあ、シャーニー」
「何?」
「もし、俺がここからいなくなっても……この聖樹は存在していけるか?」
「それは難しいかも」
「えっ?」
恐れていた回答が耳に入り、俺は思わず間の抜けた声を漏らす。
「聖樹はあなたの魔力とリンクしているの。あまりにも遠くに離れてしまえば……その力を失うことになるわ」
「そ、そんな……」
なら、俺はここから離れられないってことか?
俺の質問を耳にしたシャーニーは、俺がここから離れようとしていることを察したようで、その件について話を続けた。
「あなたはさっきの村の住人じゃないの?」
「俺は……その……旅の者だよ」
さすがに逃亡犯とは言えなかったのでそう誤魔化した。
「じゃあ、ここからは……」
「離れなくちゃならない。俺には……行かなくちゃいけない場所があるんだ」
「そう……だったの……」
シャーニーは明らかに落胆していた。
やはり、ここに俺が永住すると考えていたのだろう。
「…………」
俺としても、もし叶うならばここに残りたいという気持ちはある。だけど、幼い頃から世話になっている王都のみんなにも、せめて「俺は何もしてない」という事実を伝えたいという願いがあった。
戻りたい。
もう一度……あの町へ。
以前のような、裕福とは程遠いけど楽しくて明るかった日々へ。
一体、どうすることがベストな答えなのか。
それをすぐに導きだすことはできそうにない。
「大丈夫、ルディ」
「っ! あ、ああ、問題ないよ、ローナ。それより、寝具を作らないとな」
心配そうに顔を覗き込むローナに、俺はそう言って平気だとアピールする。
……今日の夜は……なかなか寝つけそうにないな。
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