27 / 32
第27話 迷えるルディ
しおりを挟む
「あ、あの、リガンの町へ行かない方がいいというのは……」
俺はその理由を尋ねたが、ジェファーズ様はすぐに話してはくれなかった。ただ、その表情や仕草から、意地悪をしているというわけではなく、言うべきか否か迷っているように見える。
しばらく重苦しい空気が流れていたが――ようやくジェファーズ様が口を開いた。
「そのコーベット・アルムウェルという男は……最近よろしくない噂が立っているのだ」
「えっ? よろしくない噂?」
それは初耳だ。
というより、俺が知る限り、コーベットさんはそんな噂とはもっとも縁遠い人物だと思われる。だって、俺が暮らしていた教会をずっと支援していたし。
俺はコーベットさんの人間性についてジェファーズ様に告げたのだが、
「教会の件は私も知っている。――だが、決してコーベット・アルムウェルが率先してそのような支援を行っていたというわけではないのだ」
「ど、どういうことですか……?」
なんとなくだけど……ここから先の話は、俺にとってあまり耳にしたくない内容のものになると思った。
――その直感は的中する。
「あの教会への支援を行っていたのは確かにアルムウェル家だが……中心となっていたのはコーベットの兄のフレデリックだ」
「フレデリックさんが?」
フレデリック・アルムウェル。
俺はその名に聞き覚えがあった。
当然だ。
そのフレデリックさんも教会へ顔を出してくれたことがあった。しかし、頻度はコーベットさんに比べるとかなり少なかった。その件について、コーベットさん自身が「兄からこの教会の件を任された」と俺たちに言っていたのだ。
――だが、真実はどうも違ったみたいだ。
「あのコーベットという男は……アルムウェル家の中でも落ちこぼれとして有名だったのだ」
「落ちこぼれ……?」
それは、俺の抱くコーベットさんのイメージと真逆だった。
しかし、ジェファーズ様の話を聞く限り、コーベットさんが落ちこぼれだったという話は大勢の人に知れ渡っている事実だったようだ。
「剣術や魔法はまったくと言っていいほど扱えず、領地運営の才もない。それとは対照的に、兄のフレデリックはすべてが超一流。現当主も、長男のフレデリックに跡を継がせようと思っていたようだが……弟のコーベットはそれをよく思っていなかったようだ」
「で、でも、それと今回の事件って何か関係があるんですか?」
俺がそう言うと、ジェファーズ様は静かに立ち上がり、無言のまま窓辺へと移動する。そこから外を眺めながら、思わぬ言葉を口にした。
「あの聖樹……種はあの教会の神父から託されたと言っていたね」
「え、えぇ」
「だとしたら、コーベットはその種を狙っていたのかもな」
「種を? コーベットさんはあれが聖樹の種だと知っていたんですか?」
「君の話を聞いた時から、私はそう思っていた。彼が聖樹に宿された特別な魔力を手に入れるため、神父から奪おうとしていたのではないか、と」
「そ、そんな……」
にわかには信じられなかった。
あのコーベットさんがそんなことを……だけど、ジェファーズ様が嘘を言っているようには見えない。
俺は……俺は一体どうすればいいんだ?
俺はその理由を尋ねたが、ジェファーズ様はすぐに話してはくれなかった。ただ、その表情や仕草から、意地悪をしているというわけではなく、言うべきか否か迷っているように見える。
しばらく重苦しい空気が流れていたが――ようやくジェファーズ様が口を開いた。
「そのコーベット・アルムウェルという男は……最近よろしくない噂が立っているのだ」
「えっ? よろしくない噂?」
それは初耳だ。
というより、俺が知る限り、コーベットさんはそんな噂とはもっとも縁遠い人物だと思われる。だって、俺が暮らしていた教会をずっと支援していたし。
俺はコーベットさんの人間性についてジェファーズ様に告げたのだが、
「教会の件は私も知っている。――だが、決してコーベット・アルムウェルが率先してそのような支援を行っていたというわけではないのだ」
「ど、どういうことですか……?」
なんとなくだけど……ここから先の話は、俺にとってあまり耳にしたくない内容のものになると思った。
――その直感は的中する。
「あの教会への支援を行っていたのは確かにアルムウェル家だが……中心となっていたのはコーベットの兄のフレデリックだ」
「フレデリックさんが?」
フレデリック・アルムウェル。
俺はその名に聞き覚えがあった。
当然だ。
そのフレデリックさんも教会へ顔を出してくれたことがあった。しかし、頻度はコーベットさんに比べるとかなり少なかった。その件について、コーベットさん自身が「兄からこの教会の件を任された」と俺たちに言っていたのだ。
――だが、真実はどうも違ったみたいだ。
「あのコーベットという男は……アルムウェル家の中でも落ちこぼれとして有名だったのだ」
「落ちこぼれ……?」
それは、俺の抱くコーベットさんのイメージと真逆だった。
しかし、ジェファーズ様の話を聞く限り、コーベットさんが落ちこぼれだったという話は大勢の人に知れ渡っている事実だったようだ。
「剣術や魔法はまったくと言っていいほど扱えず、領地運営の才もない。それとは対照的に、兄のフレデリックはすべてが超一流。現当主も、長男のフレデリックに跡を継がせようと思っていたようだが……弟のコーベットはそれをよく思っていなかったようだ」
「で、でも、それと今回の事件って何か関係があるんですか?」
俺がそう言うと、ジェファーズ様は静かに立ち上がり、無言のまま窓辺へと移動する。そこから外を眺めながら、思わぬ言葉を口にした。
「あの聖樹……種はあの教会の神父から託されたと言っていたね」
「え、えぇ」
「だとしたら、コーベットはその種を狙っていたのかもな」
「種を? コーベットさんはあれが聖樹の種だと知っていたんですか?」
「君の話を聞いた時から、私はそう思っていた。彼が聖樹に宿された特別な魔力を手に入れるため、神父から奪おうとしていたのではないか、と」
「そ、そんな……」
にわかには信じられなかった。
あのコーベットさんがそんなことを……だけど、ジェファーズ様が嘘を言っているようには見えない。
俺は……俺は一体どうすればいいんだ?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
551
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる