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第67話 要求
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『夜分遅くにすまないな。就寝中だったか?』
「いえ、たった今仕事が終わったところです」
『そうだったか。では手短に話そう』
コールの魔鉱石越しに聞こえてきたのはやはり神官長ガレッタのものであった。
『実は……君に城へ来てもらいたいのだ』
「俺が城へ?」
『ああ……君に会いたがっている人がいるんだ』
「俺に? ベルギウス様ですか?」
『いや、違う』
優志を城へ呼び寄せた。
城にいる者で優志に用事がありそうな人はベルギウスくらいしか思い浮かばないのだが、どうやらそうではないらしい。
その他に心当たりのある人物が出てこないので素直にたずねてみた。
「一体誰なんですか?」
『それは……その……――なんだ』
「え?」
余程言いにくい相手なのか、ガレッタにしては珍しくなんとも歯切れが悪い。
『驚かないで聞いてほしいんだが……国王陛下なんだ』
「……なんですって?」
『我が国の王――フィルス国王陛下だ』
「!? こっ!? 国王陛下!?!?!?!?!」
予想外過ぎる人物からのラブコールに、思わず優志の声が裏返った。
「い、一体何がどうなってそんな事態に!?」
『ほら、君が遠征した騎士たちのために入浴剤とやらを送っただろ? あれの効果が凄まじくて戦況は一気にひっくり返った――その成果をベルギウス様から報告されてから、ずっと君に会ってみたいと仰っていてな』
「そうでしたか」
ベルギウスからの依頼を受けて編み出した異世界入浴剤。
その効果は絶大で、戦況が不利に傾きつつあった魔王討伐軍を見事にアシストし、勝利へと導くのに大きく貢献した。
その功績を王自ら労おうというのだ。
優志にとっては大変な栄誉である。
が、どうもガレッタの方は乗り気ではないようだ。
というのも、
『……君にとって、この城にはあまりいい思い出がないだろう?』
「あ――」
ガレッタが気にしていたのは優志の国に対してのイメージ。
リウィルの独断とはいえ、勝手に召喚しておいて放り出した――優志からすれば、城にいる者たちへの心象は最悪だろう。
そんな者たちのトップである国王からの誘い。
優志が引き受けるはずがないというのがガレッタの見立てだった。
――しかし、ガレッタが躊躇しているのはそれだけが理由ではない。
「それともうひとつ……国王陛下は君にお願いをするつもりだ」
「お願い?」
「君のそのスキルに大変興味を示されているのだ」
優志のスキル――即ち、超回復効果。
『恐らく、国王陛下は私的な理由で君のスキルに目をつけている。だから――』
「俺に了承を得ようと?」
この時、優志はガレッタがとてつもなく気を遣ってくれていることを知った。
考えてみれば、国王――この国の権力のトップからの命令とあれば、どのような手段を講じても実行に移すべきだ。
だが、ガレッタはそのような行為に及ばなかった。
あくまでも優志の意思を尊重してくれたのだ。
優志の心身を案じての報告だったのだ。
『今回の件だが……君の率直な意思を尊重したい。会いたくないといえば私がかけ合ってなんとかしよう』
「…………」
この世界の常識にはまだまだ疎い面のある優志だが、ガレッタがしようとしている行為の危険性はすぐに察せられた。
国王の意見に背くということは、下手をしたら罪に問われる――いや、罪どころか国外追放クラスの処分が下されてもおかしくはない。
ガレッタの指摘通り、ベルギウスたちとの出会いを経て、少しは改善しているとはいえ、まだまだ城の連中に対していい感情を抱いてはいない。とはいえ、ガレッタにそのようなリスクを背負わせるのもどうかと感じていた。
自分がこの世界に来た理由――切羽詰まったリウィルがとった最後の手段。
その点については同情の余地がある。
だから、心境は複雑だった。
けど、やはり、
「ガレッタさん……俺――城へ行きます」
このままにしておくわけにはいかない。
それに、国王が優志のスキルを必要としているなら、悪い扱いを受けることはないだろうとも考えていた。入浴剤効果で騎士団をサポートしていたというプラスの材料もある。
さらに言えば、これはチャンスだとも捉えることができる。
ここで国王の要求を受け入れ、望む形を提供できたなら、この世界での地盤は確固たるものとなる。
『来てくれるのか?』
半信半疑なガレッタだが、もう優志の心は固まっていた。
「国王陛下は俺のスキルを必要としているのでしょう? どこか御身体が悪いってことでしょうか」
『たしかに、ここ数日あまり調子がよろしくないようだ』
「なら、俺のスキルが役立つますね」
ニヤリと微笑む優志。
その顔は魔鉱石に映らない。
だが、ガレッタには優志の心情が読み取れた。
『……したたかな男だな、君は』
「なんのことですか?」
『いや、いいさ。大丈夫だ。それくらいタフな男でなくてはリウィルを任せることはできないからな。――なあ、ユージ』
「はい?」
『ここからは神官長ではなく、君の飲み仲間として忠告する――使える力はトコトン使っていけ。以上』
「はい」
通信終了。
優志は脱力し、ベッドにポスンと身を預ける。
視線の先には木造の天井。
話の流れで国王に会うことになったが、これを好機だと捉え、ガレッタの助言通りにむしろ利用してやろうと思う。
「問題は国王の要求だな……」
一体どんな無茶ぶりをされるのか。
どうやら国王との出会いは、優志の異世界生活において大きなターニングポイントとなりそうだ。
「いえ、たった今仕事が終わったところです」
『そうだったか。では手短に話そう』
コールの魔鉱石越しに聞こえてきたのはやはり神官長ガレッタのものであった。
『実は……君に城へ来てもらいたいのだ』
「俺が城へ?」
『ああ……君に会いたがっている人がいるんだ』
「俺に? ベルギウス様ですか?」
『いや、違う』
優志を城へ呼び寄せた。
城にいる者で優志に用事がありそうな人はベルギウスくらいしか思い浮かばないのだが、どうやらそうではないらしい。
その他に心当たりのある人物が出てこないので素直にたずねてみた。
「一体誰なんですか?」
『それは……その……――なんだ』
「え?」
余程言いにくい相手なのか、ガレッタにしては珍しくなんとも歯切れが悪い。
『驚かないで聞いてほしいんだが……国王陛下なんだ』
「……なんですって?」
『我が国の王――フィルス国王陛下だ』
「!? こっ!? 国王陛下!?!?!?!?!」
予想外過ぎる人物からのラブコールに、思わず優志の声が裏返った。
「い、一体何がどうなってそんな事態に!?」
『ほら、君が遠征した騎士たちのために入浴剤とやらを送っただろ? あれの効果が凄まじくて戦況は一気にひっくり返った――その成果をベルギウス様から報告されてから、ずっと君に会ってみたいと仰っていてな』
「そうでしたか」
ベルギウスからの依頼を受けて編み出した異世界入浴剤。
その効果は絶大で、戦況が不利に傾きつつあった魔王討伐軍を見事にアシストし、勝利へと導くのに大きく貢献した。
その功績を王自ら労おうというのだ。
優志にとっては大変な栄誉である。
が、どうもガレッタの方は乗り気ではないようだ。
というのも、
『……君にとって、この城にはあまりいい思い出がないだろう?』
「あ――」
ガレッタが気にしていたのは優志の国に対してのイメージ。
リウィルの独断とはいえ、勝手に召喚しておいて放り出した――優志からすれば、城にいる者たちへの心象は最悪だろう。
そんな者たちのトップである国王からの誘い。
優志が引き受けるはずがないというのがガレッタの見立てだった。
――しかし、ガレッタが躊躇しているのはそれだけが理由ではない。
「それともうひとつ……国王陛下は君にお願いをするつもりだ」
「お願い?」
「君のそのスキルに大変興味を示されているのだ」
優志のスキル――即ち、超回復効果。
『恐らく、国王陛下は私的な理由で君のスキルに目をつけている。だから――』
「俺に了承を得ようと?」
この時、優志はガレッタがとてつもなく気を遣ってくれていることを知った。
考えてみれば、国王――この国の権力のトップからの命令とあれば、どのような手段を講じても実行に移すべきだ。
だが、ガレッタはそのような行為に及ばなかった。
あくまでも優志の意思を尊重してくれたのだ。
優志の心身を案じての報告だったのだ。
『今回の件だが……君の率直な意思を尊重したい。会いたくないといえば私がかけ合ってなんとかしよう』
「…………」
この世界の常識にはまだまだ疎い面のある優志だが、ガレッタがしようとしている行為の危険性はすぐに察せられた。
国王の意見に背くということは、下手をしたら罪に問われる――いや、罪どころか国外追放クラスの処分が下されてもおかしくはない。
ガレッタの指摘通り、ベルギウスたちとの出会いを経て、少しは改善しているとはいえ、まだまだ城の連中に対していい感情を抱いてはいない。とはいえ、ガレッタにそのようなリスクを背負わせるのもどうかと感じていた。
自分がこの世界に来た理由――切羽詰まったリウィルがとった最後の手段。
その点については同情の余地がある。
だから、心境は複雑だった。
けど、やはり、
「ガレッタさん……俺――城へ行きます」
このままにしておくわけにはいかない。
それに、国王が優志のスキルを必要としているなら、悪い扱いを受けることはないだろうとも考えていた。入浴剤効果で騎士団をサポートしていたというプラスの材料もある。
さらに言えば、これはチャンスだとも捉えることができる。
ここで国王の要求を受け入れ、望む形を提供できたなら、この世界での地盤は確固たるものとなる。
『来てくれるのか?』
半信半疑なガレッタだが、もう優志の心は固まっていた。
「国王陛下は俺のスキルを必要としているのでしょう? どこか御身体が悪いってことでしょうか」
『たしかに、ここ数日あまり調子がよろしくないようだ』
「なら、俺のスキルが役立つますね」
ニヤリと微笑む優志。
その顔は魔鉱石に映らない。
だが、ガレッタには優志の心情が読み取れた。
『……したたかな男だな、君は』
「なんのことですか?」
『いや、いいさ。大丈夫だ。それくらいタフな男でなくてはリウィルを任せることはできないからな。――なあ、ユージ』
「はい?」
『ここからは神官長ではなく、君の飲み仲間として忠告する――使える力はトコトン使っていけ。以上』
「はい」
通信終了。
優志は脱力し、ベッドにポスンと身を預ける。
視線の先には木造の天井。
話の流れで国王に会うことになったが、これを好機だと捉え、ガレッタの助言通りにむしろ利用してやろうと思う。
「問題は国王の要求だな……」
一体どんな無茶ぶりをされるのか。
どうやら国王との出会いは、優志の異世界生活において大きなターニングポイントとなりそうだ。
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