97 / 168
第97話 賑やかな王都
しおりを挟む
人だかりの中を両手に花の状態で進む優志一行。
行き交う人々の中には店の常連客もいて、
「おうおう、見せつけてくれるねぇ!」
「やっぱりそういう関係だったか」
目が合うたびに冷やかされる始末。
ただ、だからと言って腕にしがみついているふたりを引きはがすのはさすがに気が引けた。
理由は大きく分けてふたつある。
ひとつは主にリウィルを対象とすることなのだが、やはりこの人混みの中では迷子になりやすいという点。やらかし癖のあるリウィルは特にこの項目が引っかかりそうな気がしてならない。
もうひとつは――ふたりがとても楽しそうであるという点。
「あっちの屋台に売っているものが気になりますね」
「行ってみましょうよ、リウィルさん!」
優志を挟むリウィルと美弦は心底楽しそうに笑顔を振りまきながらいつもとは様子の異なる王都を満喫していた。
屋台で買い食いをしたり、輪投げなどのミニゲームをやっている店で盛り上がったりと、まるで日本の縁日のようにエンジョイしていた。
「まあ……ふたりが楽しそうならそれでいいか」
優志はふたりに聞こえないくらいの小さな声で天に向かいそう言った。
しばらく王都内を散策していた優志たちであったが、徐々に人混みが減少していくことに気がついた。
正しく言えば、人が減っているわけではない。
多くの人々が一ヵ所に集結しつつあったのだ。
「どうやらそろそろパレードが始まるみたいですね」
「そのようだな」
優志たちは人々の動きからパレードの開始を察知すると、城へ向けて歩き出した。
城へ行けば、ベルギウスが待っているはずだ。
城門近くに差しかかると、
「ユージ殿、お待ちしておりました」
騎士のひとりが声をかけてきた。
「ベルギウス様がお待ちです。さあ、こちらの特別席へどうぞ」
「ありがとう」
若い騎士に案内され、城内へと入る優志たち。
「先日、ユージ殿たちが造った例の風呂ですが、国王陛下は大層気に入り、毎日のぼせる寸前まで入っているくらいですよ」
「そこまで喜んでもらえるのは大変ありがたい話だけど、のぼせる直前まで入るのはちょっとやり過ぎかな」
「それほどあの風呂の効果が凄いということですよ」
優志のスキルを使用しなくても疲労が取れるよう、エアーの魔鉱石を埋め込んだ異世界式ジャグジー風呂は未だにフィルス国王を虜にしているようだった。
「さあ、こちらです」
騎士が案内した場所は城の一室――そこは外へと続いており、まるでテラス席のように王都内の様子が高い位置から見渡せた。
「こりゃまた壮観だな」
「ですね」
「私たちついさっきまであの人混みの中にいたんですよねぇ……」
美弦が呆気に取られてしまうほどの人の数。
その光景を目の当たりにした優志は、なんとなく渋谷のスクランブル交差点を思い出していた。以前、出張で東京を訪れた際に立ち寄ったことがあるのだが、ここの人混みはそれに匹敵する――或は、それを超越するほどの数だった。
「やあ、待っていたよ」
王都の様子に目を奪われていた優志たちの前に、この席へ招待したベルギウスが現れた――というより、最初からいたのだが優志たちの視界には入らなかったのだ。
「ベルギウス様、本日はこのような素晴らしい場所へご招待いただきまして――」
「そうかしこまらなくてもいいさ」
優志が社会人らしく礼を述べようとすると、ベルギウスはそれを制した。
「まあこっちに来て座りなよ。ほら、おいしいお茶とお菓子もあるから。遠慮は無用だよ」
ベルギウスの前にあるテーブルにはすでに3つ分のイスが設えられており、湯気の立つ紅茶においしそうなお菓子(スコーンのようなもの)が用意されていた。
「し、失礼します」
いつもとは違う雰囲気に呑まれ始めている優志は、緊張に顔を強張らせながら用意された席へと着く。それに続いて美弦とリウィルも座るが、優志以上に場慣れしていない美弦も緊張感に包まれていた。唯一、リウィルだけが平然としている。
「いい席だろう? ここからならパレードの様子がよく見渡せる」
「そ、そうですね」
「だからそんなに緊張しなくてもいいから」
あっけらかんとベルギウスは言い放つ。
それに優志も「はい」と返事はするのだが、どうにも勝手が違うのか、いまいちほぐれないでいた。いつもは優志の店でベルギウスを迎えることが多いのだが、城内に会うと次期国王候補という肩書がどうしても脳裏をちらついてしまう。
これもまたサラリーマンの悲しい性か。
平社員ならともかく課長や部長クラスと話をするとなると途端に縮こまる悪癖があることを思い出した。最近はそんな気遣いなどする場面もなく、比較的自然体で過ごすことが多かったのだが、身近な存在と感じ始めていた大物が大物らしいオーラをまとうとこうも変わるものかと驚いていた。
――とはいえ、ベルギウスの言う通り、いつまでも緊張していてはせっかくのパレードが楽しめない。
優志は気持ちを切り替えて臨もうと深呼吸をした――その時である。
「~~~~♪」
どこからともなく流れるファンファーレ。
「いよいよ始まったか」
どうやらあの音がパレード開始の合図であるらしい。
その証拠に、音が止まった直後に人々が一斉に大歓声をあげた。
「さて、本格的に騒がしくなる前に――ユージくん。君に報告がある」
「お、俺に報告ですか?」
虚を突かれて声が裏返りつつも、優志はベルギウスの言う「報告」に興味を持った。
「一体なんの報告ですか?」
「それはね――例の喋る魔人についてだ」
「!?」
あのダンジョンで遭遇した喋る魔人。
ベルギウスはその話題に触れるという。
果たして、魔人に一体何があったのだろうか。
行き交う人々の中には店の常連客もいて、
「おうおう、見せつけてくれるねぇ!」
「やっぱりそういう関係だったか」
目が合うたびに冷やかされる始末。
ただ、だからと言って腕にしがみついているふたりを引きはがすのはさすがに気が引けた。
理由は大きく分けてふたつある。
ひとつは主にリウィルを対象とすることなのだが、やはりこの人混みの中では迷子になりやすいという点。やらかし癖のあるリウィルは特にこの項目が引っかかりそうな気がしてならない。
もうひとつは――ふたりがとても楽しそうであるという点。
「あっちの屋台に売っているものが気になりますね」
「行ってみましょうよ、リウィルさん!」
優志を挟むリウィルと美弦は心底楽しそうに笑顔を振りまきながらいつもとは様子の異なる王都を満喫していた。
屋台で買い食いをしたり、輪投げなどのミニゲームをやっている店で盛り上がったりと、まるで日本の縁日のようにエンジョイしていた。
「まあ……ふたりが楽しそうならそれでいいか」
優志はふたりに聞こえないくらいの小さな声で天に向かいそう言った。
しばらく王都内を散策していた優志たちであったが、徐々に人混みが減少していくことに気がついた。
正しく言えば、人が減っているわけではない。
多くの人々が一ヵ所に集結しつつあったのだ。
「どうやらそろそろパレードが始まるみたいですね」
「そのようだな」
優志たちは人々の動きからパレードの開始を察知すると、城へ向けて歩き出した。
城へ行けば、ベルギウスが待っているはずだ。
城門近くに差しかかると、
「ユージ殿、お待ちしておりました」
騎士のひとりが声をかけてきた。
「ベルギウス様がお待ちです。さあ、こちらの特別席へどうぞ」
「ありがとう」
若い騎士に案内され、城内へと入る優志たち。
「先日、ユージ殿たちが造った例の風呂ですが、国王陛下は大層気に入り、毎日のぼせる寸前まで入っているくらいですよ」
「そこまで喜んでもらえるのは大変ありがたい話だけど、のぼせる直前まで入るのはちょっとやり過ぎかな」
「それほどあの風呂の効果が凄いということですよ」
優志のスキルを使用しなくても疲労が取れるよう、エアーの魔鉱石を埋め込んだ異世界式ジャグジー風呂は未だにフィルス国王を虜にしているようだった。
「さあ、こちらです」
騎士が案内した場所は城の一室――そこは外へと続いており、まるでテラス席のように王都内の様子が高い位置から見渡せた。
「こりゃまた壮観だな」
「ですね」
「私たちついさっきまであの人混みの中にいたんですよねぇ……」
美弦が呆気に取られてしまうほどの人の数。
その光景を目の当たりにした優志は、なんとなく渋谷のスクランブル交差点を思い出していた。以前、出張で東京を訪れた際に立ち寄ったことがあるのだが、ここの人混みはそれに匹敵する――或は、それを超越するほどの数だった。
「やあ、待っていたよ」
王都の様子に目を奪われていた優志たちの前に、この席へ招待したベルギウスが現れた――というより、最初からいたのだが優志たちの視界には入らなかったのだ。
「ベルギウス様、本日はこのような素晴らしい場所へご招待いただきまして――」
「そうかしこまらなくてもいいさ」
優志が社会人らしく礼を述べようとすると、ベルギウスはそれを制した。
「まあこっちに来て座りなよ。ほら、おいしいお茶とお菓子もあるから。遠慮は無用だよ」
ベルギウスの前にあるテーブルにはすでに3つ分のイスが設えられており、湯気の立つ紅茶においしそうなお菓子(スコーンのようなもの)が用意されていた。
「し、失礼します」
いつもとは違う雰囲気に呑まれ始めている優志は、緊張に顔を強張らせながら用意された席へと着く。それに続いて美弦とリウィルも座るが、優志以上に場慣れしていない美弦も緊張感に包まれていた。唯一、リウィルだけが平然としている。
「いい席だろう? ここからならパレードの様子がよく見渡せる」
「そ、そうですね」
「だからそんなに緊張しなくてもいいから」
あっけらかんとベルギウスは言い放つ。
それに優志も「はい」と返事はするのだが、どうにも勝手が違うのか、いまいちほぐれないでいた。いつもは優志の店でベルギウスを迎えることが多いのだが、城内に会うと次期国王候補という肩書がどうしても脳裏をちらついてしまう。
これもまたサラリーマンの悲しい性か。
平社員ならともかく課長や部長クラスと話をするとなると途端に縮こまる悪癖があることを思い出した。最近はそんな気遣いなどする場面もなく、比較的自然体で過ごすことが多かったのだが、身近な存在と感じ始めていた大物が大物らしいオーラをまとうとこうも変わるものかと驚いていた。
――とはいえ、ベルギウスの言う通り、いつまでも緊張していてはせっかくのパレードが楽しめない。
優志は気持ちを切り替えて臨もうと深呼吸をした――その時である。
「~~~~♪」
どこからともなく流れるファンファーレ。
「いよいよ始まったか」
どうやらあの音がパレード開始の合図であるらしい。
その証拠に、音が止まった直後に人々が一斉に大歓声をあげた。
「さて、本格的に騒がしくなる前に――ユージくん。君に報告がある」
「お、俺に報告ですか?」
虚を突かれて声が裏返りつつも、優志はベルギウスの言う「報告」に興味を持った。
「一体なんの報告ですか?」
「それはね――例の喋る魔人についてだ」
「!?」
あのダンジョンで遭遇した喋る魔人。
ベルギウスはその話題に触れるという。
果たして、魔人に一体何があったのだろうか。
25
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる