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【僕とお嬢さん】
6「お嬢様とお別れする」
しおりを挟む大工たちに媚びて作らせた家、の中。
もう何週間もベッドから立ち上がる事ができずにいるお嬢様の、骨ばり、潤いのなくなった手を握り続ける。
随分長生きしたものだ。
高貴な生まれのお嬢様は意外とたくましく、図太く長生きした。
一方、俺の手は数十年前と何ら変わらない、一般青年の普通の手だった。
「あなたは、普通の人じゃないですよね?」
弱々しい声でそう尋ねられ、感極まってうっかり「はい」と声を発してしまった。70年以上も声を発しなかったのに、やってしまった。
………もうどうせお嬢様は死ぬからいいか、と俺は自分は普通にしゃべることができるという事、いろいろ自分の事を説明するのが面倒くさかったので“しゃべれない・字が書けない”フリをしていた事をぶっちゃけた。
お嬢様が元気だったら、俺はきっと「なんだとぉ!?」と頬をつねられていたことだろう。
……しかし、期待していた暴力は当然起こらない。
他にもぐちゃぐちゃといろいろ訊かれたが、あまり覚えていない。
のらりくらりと会話をしつつ、お嬢様の手を取ったり頭を撫でたりしていた、ら、気がつけばお嬢様は自然に、静かに事切れていた。
あっけない。人の終わりというものは本当にあっけない。気がついたら皆、死んでいる。
……まぁ、目の前で死んでくれるだけいいものだ。風の噂で「死んだ」と知るよりは、いくらかマシだ。
************
事切れたお嬢様の軽い体だけを持ち、長く、長く住み続けた家を出る。もうこの家に帰ってくることもない。帰る理由がない。
死体は、お嬢様の故郷の墓地に埋めに行こうかと思っていたが「家を捨てた身」の者を持っていっても歓迎されないよなぁ、と諦める。
闇夜の中、人気のない河原でお嬢様を火葬する。
長く連れ沿った女の燃え散っていく様をぼんやり見つめる。高く高く、緩やかに空へ上っていく煙を目で追う。お嬢様を横にし、お嬢様を燃やした、もう欠片も残っていないその場所を見つめたまま数日を過ごした。
微動だにせず、ただぼんやりとしていた。
*************
冷たいものが眉間に触れた。雨だ。それで正気に戻る。
雨の勢いが増してきたので、仕方なくズルズルと移動する。
数日か数週間。どれくらい時間は経ったのだろうか。わからない。どうでもいい。
とりあえずグチャグチャの土道をひたすら歩き続け、偶然見つけた町に入り、ズボンの小袋に入っていた小銭で宿に泊まりベッドに倒れこんで一晩過ごし。
その翌日、見た目をきちっと整えてから宿を出て酒場に行って旅の同行者を募集しているパーティーを探してそれに参加して近くの洞窟へ魔獣退治へと出発してほどほどに活躍して任務完了イェーイって皆とハイタッチをした後で酒場に帰って祝勝会をしたらパーティーの1人に「結婚しているんですか?」と中指の真珠の指輪を指差されたので
「いいえ。これはただのアクセサリーです」
と答え、サイズが合わないからぶっちゃけいらないんですよねぇ、とそいつにくれてやった。
後日、「いい値段で売れました」とそいつが嬉しそうに報告してきた。
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