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建月 創士

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SET:1 悪夢と厄日

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『なんだよ!!なにすんだ!!この!!』

 あぁ…またか、今日はお気に入りのエロ本を枕の下に入れたのにな……と俺、荒木雄志あらきゆうしは思う。
 なぜこんなことを考えているかというと、正確には覚えてはいないが、ここ数週間、俺はこの夢をほぼ毎日のように見ている。

 なぜか肩を骨折している俺が最初に細い路地でデカい蝙蝠に襲われて、逃げて、腰が抜けて、そして、黒い服の男達が現れて、銃で殺されて……最後に無機質な自分の声で「リセット」と、だけ聞こえるちゃっちい夢、一度見ただけでは忘れてしまうような内容だが、こんなに何度も見ると嫌でも覚えてしまう。

 ほら、こんなことを考えているうちに、黒服が俺に銃を向けて、引き金を引き、俺の頭を撃ち抜く。
 糸の切れた操り人形のように仰向けに倒れた俺はいつも通り、台本を読むように無機質な声でこう言う、『リセット』と。

「ッはっ!!」

 いつもそこで息苦しくなり、目が覚める。
 窓からはただただ眩しく、寝起きの目を苦しめるべく朝日が差し込んでいる。
 なんで昨日の俺はカーテンを閉めていないのか、自分で自分を呪う。
 シャッ、という音を立ててカーテンを閉じ、俺はもう一度意識を手放そうと、横になる。
 しかし、それを許さないかのように、耳元で目覚し時計が鳴り響く。

「うっせぇ!!」

 少しまだキンキンと耳鳴りがしている右耳を抑えながら目覚し時計を止める。
 それにより完全に意識が覚醒した。
 それはもう、メ○シャキを飲んだときレベルで。

「くそ……昨日の俺は今日の俺に恨みでもあんのかよ…」

 勿論、寝る前にカーテンを閉め忘れたのも、耳元に目覚し時計をセットしたのも、自分である。
 であるが、信じたくはない、俺がそんな悪魔の所業のようなことをするもんか。

 そう考えるが、起きてしまったからには学校に行かなければならない、俺はベッドから身体を起こし、立ち上がろうとする。
 すると日頃の寝不足のせいか、フラフラと倒れそうになる。
 
(あの夢のせいで全然寝た気にならねぇ……どうすりゃいいんだよ…。)

 そう思いながら俺は準備を始める。
 これまで俺は、色々な快眠法を試した、ASMRなどのリラックス音声、生活習慣を見直したり、足ツボ、ストレッチ、今回試したので言えば、枕の下に好きな本を入れるとその本に沿った夢を見れる、というもの、勿論そんなものは迷信であり、エッチな夢など見れなかったわけだが、今日以外のものは全て専門家がオススメしているものだ、効かないのは流石におかしい気もしてくる。
 今度、病院に連れて行ってもらおう、と小さく俺はつぶやく。
 そして、準備を済ませ、リビングに降りると、机の上に、ラップがされた朝食が置いてあった。
 俺はそれをちゃっちゃと口にかき込み、ごちそうさまでした、と一言口に出し、家を出る。
 そして、少しフラフラとしながらママチャリに乗り込む。

「クソ…フラフラする、超眠てぇ……」

 ペダルに足をかけ、だんだんスピードを上げながら住宅街を出て、商店街に入る。
 朝こそ人が少ないここであるが、夕方は人が多すぎてママチャリでは通れたものではない。
 俺はいつも通り、人の居ない商店街をスピード上げて駆け抜け、商店街を抜けようと右折したその瞬間、女性が歩いてくるのが見えて、ボーッとしていた頭が急に現実に立ち戻る、ブレーキをかけるが、かなりのスピードをつけた自転車はそう簡単に止まれるものではない。

「あ、危ない!!」

 そう声が出たときには、もう女性は目の前、つまり、手遅れだ。
 俺は目一杯目を瞑り、覚悟を決めたその瞬間、俺は、空中に投げ出されていた。
 横には自転車が浮いている。

「……は?」

 普通はその状況を理解するには足りなさすぎる数瞬の瞬間、しかし、俺はすぐに理解することができた。
 [有力者ホルダー]だ。
 有力者が俺の自転車をなんらかの能力を使って宙に浮かせたのだ、そして、それを理解した瞬間、俺は地面に叩きつけられ、それによる強い鈍痛で俺は気を失った。
 
「あ~……やってしまった……」

 それが、気を失う直前に聞こえた、最後の言葉だった。

___________________________________

 有力者ホルダーとは、62年前、突如として発覚した、人間の新しいカタチ、新人類というものだ。
 確か、脳の中枢神経系だかの細胞が変異し、特殊な細胞として覚醒を遂げ、いわゆる第六感、超能力を手に入れることができるらしい。
 超能力と言っても様々で身体を固くしたり柔らかくしたり、色を変えたり、力を強くしたり、など多くの力の種類がある、今紹介したのもごくごく一部の事例で、始まりの一人と呼ばれる、ある田舎の駐在所の警察官は夜に勝手に現れ、人を惨殺する、凶暴な狼の有力者だったらしい。
 他にもそのような恐ろしい能力があることからすぐに法が制定され、過去最速のペースで施行された話は有名だ、小学生の歴史の教科書にも載っている。
 しかし、その法を無視して、人為的に有力者を作り出そうとする大馬鹿者は必ず居るもので……有力者の髄液を一般人の脳の中枢神経に注入したそうな。
 すると、進化をしようとした脳が急激な変化に耐えられず、ドロドロに溶け、その実験を受けた一般人は死亡、その実験を行った科学者は残虐な行為をし、有力者を人為的に作り出そうとしたことに対する最初の見せしめとして、死刑を言い渡された。
 それほど、当時は恐れられていたらしい。
 しかし、現代いまは違う、その後、何度か法が改正され、有力者は自由に能力を活用できる世の中になった。
 少し前からテレビに出るお笑い芸人なんかはほとんどが有力者だ。
 それぐらい今では普通になった有力者であるが、だからといって、ただで自由に使えるわけがない、まず義務として手首にブレスレットを装着しなければならない、このブレスレットには注射器がついており、何か有力者が能力を使って、誰かを傷つけたり、犯罪を起こしたりした場合、データベースに登録された情報から信号を発信し、その信号を受け取ったブレスレットの注射器から睡眠薬が投薬される作りになっている。
 そして、その後、それが犯罪行為だった場合はその有力者はかなりの重罪が課せられる仕組みになっている。
 これによって有力者の犯罪率は低く、平和が保たれている。

「……というわけさ」
「いや、知ってますよ、それ一般教養レベル……」
「はいはい、シャラップシャラップ」
「っていうか、なんでさっきの事故でほぼほぼ怪我もしてないのにここに居るんですか」

 俺はそう横のベッドに居る、朝俺をぶっ飛ばした女性と話をしていた。
 今、俺がいるのは街で一番大きな病院の病室、どうやら気を失ったとき、地面に体を打ち付け、腕を骨折したらしい。
 そして、この俺が今話をしている女性、カスミとだけ俺に名乗ったこの人は先の俺の質問に少しキレ気味に答える。

「だ、か、ら、さっき言ったじゃないか、私は"能力を使って"君を空中に飛ばして、君は気を失った、そして私は、それで君に危害を加えたとして、睡眠薬を注入され、二人共病院送り……オーケー?それに、この睡眠薬、目が覚めても体がうまく動かせないように手足が痙攣する薬も入ってるのよ、だから私も半日だけ入院」
「あ、そういうための説明……いやでも序盤の語り必要なかったですよね」
「いいの!なんか語りたくなったのよ」
「は、はぁ…」
「それより」

 急に真面目なトーンでカスミさんは俺に話しかける。
 なんだか真剣そうな表情に俺は表情を固くする。

「君、有力者でしょう?なんで腕輪もしてなければ、そんなことも知らないのよ」
「は、はい?」
「なによ、この碁に及んでしらばっくれる気?」
「い、いえ、俺はただの一般人ですけど……」
「え、もしかして……自分の能力に気づいてない?」
「え?だって能力なんて使ったことないし、第一、なんでそんなことがわかるんですか」
「有力者って覚醒すると体の何処かにアザみたいな跡があるのよ、ほら、私は肘、あなたは首裏ね、看護師さんが首を傾げていたわよ」
「は、はぁ……」

 なにがなんだかわからないまま、俺は近くにある鏡でうなじの部分をなんとか確認する、あった、確かにカスミさんと同じようなアザが。
 マジかよ、と口に出した後の口が塞がらない。
 するとカスミさんは少し考える仕草をして、人差し指を立てて、俺にこう質問を投げかける

「あなた、最近おかしなことはなかったかしら」
「おかしなこと……」

 考える間もなく、俺は心当たりがあることに気づく。
 最近よく見る夢、あの夢だ。
 何日も連続で見るなんて、普通じゃない、きっとあれに違いない。

「最近ずっと、ここ数週間、同じ夢を見続けてます」
「ほほぉ?どんな夢さ」
「えっと……」

 俺は流されるままに自分の悩まされてる夢について語る、すると、カスミさんは横に置いてあった通信機を手に取りこう言う。

「だってさライブラリ、見解は?」

 すると通信機の向こう側から小さい少年に近い声が聞こえてきた。

『う~ん、にわかに信じがたいが…予知能力に近い能力かもしれない』

 そのことにカスミさんは目を丸くして答える。

「よ、予知能力!?なによそれ!!そんなのまだかなり少数しか確認されてないはずでしょ!!」

 かなり興奮した状態のようで、喋り続ける口は止まらない。

「それに、これまで確認されてる予知能力の有力者は、寿命が短くて、10代の始めぐらいに全員亡くなっているじゃない!!高校生になるまで育つなんて、そんな前例ないわ!!」
『まぁまぁ、そこは病院だろ?静かにしたまえ、それとその君のツバのたくさんついた通信機はしっかりと消毒してから返すようにしてくれよ、ばっちぃ』

 少年にしてはかなり落ち着いているし、言葉も大人びている、この会話を文字に起こすと霞さんの方が年下に感じるレベルだ。

 不思議な人たちだな、と僕はただただ思う。
 そして、この病室が二人部屋でよかった、と心底思う。
 こんなうるさい声を病院で聞くことになるなんて思わなかった。

 そうして、そんなことを考えている間に二人の間で会話が進んでいたらしく、俺は最後の部分だけ聞き取ることができた。

『とりあえず、そんな危険因子を野放しにしておくわけにはいかない、即刻確保、そして、本部に連行を頼む』
「ラジャ、通信終わり」

 そして、カスミさんは俺の方に向き直り、ニコッと笑うと、目にも止まらぬ速さで俺の首に手刀を食らわせた、当然俺は急に与えられた衝撃に耐えられない。
 白目を向きながら、意識が遠のくのを感じ、こう思うのであった。

「今日は厄日だ……お祓いにも行かないとな……」と。
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