異世界では悔いの残らないよう頑張ります!!

建月 創士

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少年期

#31 新章開幕

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 いつの時もそうだったが特に何か目立ったことが起こるわけでもなく五年という平穏な日々は過ぎ去り、俺とターシャは中等部の一年生、クルシュとレイラは初等部の六年生となった。
 唯一、何かあったか、と聞かれれば、俺とターシャが初等部で初めて例の勝ち抜きトーナメント優勝の皆勤賞を達成したことぐらいしかなかった。
 ……まぁ快挙ではあるのだが。

 それと、鍛冶の腕が上がって魔法祭で俺が打った武器を使って商売をすることが出来た、まぁ俺が次席であるがために直々に売ることは出来ず、クルーゼに売ってもらったのだが。
 
 まぁそんなことをしているうちに5年という月日が経ったということである。

 レック君の家との関係は良好で、毎年俺とターシャ、クルシュとレイラは避暑休みの度にお邪魔させてもらっていた。
 ちなみにレック君はというと、しっかりと首席になってくれた。
 そして、その避暑休み中俺はマルート家の当主であるアマザさんからある物を貰った。
 それはアイテムボックスという限りなく固有装備アーティファクトに近いが固有装備アーティファクトとは違う魔導装備マギファクトと呼ばれる種類の道具だ。
 使い方は簡単、腰につけるだけ、そうすれば、魔力を込めれば込めるだけ容量が大きくなるとっても便利な荷物入れの完成だ。

 え?都合が良すぎないか……と?……まぁそうかも知れないけどあるものはあるのだからしょうがない。

 まぁそんなこんなで年々成長してきた俺達は今も元気に平和に生きている。
 いつか来る、争いの日に背を向けながら。
_________________________________________________

「兄さん、これどうかな?」

 俺は自分で鍛えた剣を、兄、ニム=グラントに見てもらう。
 すると、兄さんは少しじっと剣を見つめると問題点を上げていく。

「そうだな……まぁ完成度は十分……だけどここの刃がほんの少しだが、歪んでる、これじゃあまだ完全な売り物とは言えないな」
「あ、ホントだちょっと歪んでる……はぁ……まだ荒いんだな、やっぱ」
「まぁ、無理のないよう頑張れや」

 すると兄さんは笑う。
 そして、そんな様子の兄さんを尻目に俺は兄さんの作った武器を手に取る。

 いつ見てもすごい、それが素直に一番最初に出てくる感想だ。
 一つとして歪みのない刀身に無駄のなく洗練されていても、なお魅力的な装飾、そして、絶妙な軽さと持つやすさ。
 その全てをとっても完璧だ、しかし、それでも兄さんは「ダメだ、全くダメ、こんなの父さんの足元にも及ばないさ」と言う。
 出来る人の謙遜は訳分からん。

「ありゃ、もうこんな時間か、それじゃ兄さん、俺はここで」
「はいよ」

 俺は寮の門限を過ぎようとしていることに気が付き、急いで帰り支度をして、工房を出る。
 工房と外の温度差に少々身震いをしながらも俺は寮へ戻ったのだった。
_________________________________________________

 寮に戻ると、ターシャ、クルーゼ、クルシュにレイラという俺を抜いたいつも通りのメンバーが晩御飯を囲んでいた。
 すると、帰ってきた俺に気付いたクルーゼが手を振り「おせーぞ!」と声を掛けてくる。
 それに俺はちょっと申し訳なさげに謝りながら、椅子に荷物を置き、食堂のおばちゃんに頼み、晩御飯をついでもらう。
 出てきたのは、いわゆるカレーもどき、そう、もどきだ。
 見た目はカレーなのだが……いかんせん味が違うため、なんともカレーとは言い難い。
 こういうところを考えると、見た目も味も同じだった[四爪の狼]ってスゴイんだなと、しみじみ思う。
 今度、魔法祭終わり、三ヶ月ぶりにみんなで行ってみようかしら、と心の中で思っておく。
 そして、その日はちゃっちゃと食事を取り、各々の部屋で休んだのだった。
 ちなみに全く部屋構成は変わっていない。
 そう、俺はまだターシャと同じ部屋なのである。
 正直、年頃の男女ではありえないことなのだろうが、もう慣れてしまったため、変なことは起きていない。
 たまにちょっと男の子としてのうんたらかんたらが湧き上がってくるが、俺は我慢している、俺スゴイ、偉いぞ。

 そんなこんなで新章開幕です。
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