文字サイズ
小
中
大
特大
1 / 43
佐城沙知はまだ恋を知らない
一話『あたしに恋を教えて』
「……」
人と知り合うきっかけといえば様々だ。
例えば同じクラスで席が隣同士だったり。
例えば同じ部活だったり。
例えば家同士が近所で自然と遊ぶようになったり。
今挙げた一例以外にも様々なきっかけの形がある。そんな星の数ほどの出会いがやがてかけがえない友人や恋人、そして家族の始まりとなる。
なぜこんなことを語りだしたかというと、今まさに僕は一つの出会いのきっかけに直面したからである。
「マジで……死ぬ……」
目の前で、しかも放課後の学校の廊下で、死にそうに倒れている女の子が居た。
「あの……大丈夫ですか……」
僕は恐る恐る近づいて女の子に声をかけてみると、彼女はガシッと僕の脚を掴んだ。
「ひっ!!」
「あたしを……第二科学室まで……連れてって……」
急に脚を掴まれて驚いて尻餅をついてしまった僕に彼女は気にせず死にそうな声でお願いをしてくる。
「分かった!!分かったから!!とりあえず脚を離してください!!」
あまりにも恐すぎる状況だったので、僕は彼女のお願いを聞き、彼女を第二科学室まで連れて行ってあげた。
※※※
「いや~君のお陰で死なずに済んだよ、ありがとう」
科学室の机で向かい合いながら椅子に座る彼女は笑顔でお礼を言う。
お互いの手には準備室にあった栄養ドリンクを持っている。科学室に連れていった際に、ついでに取ってきて欲しいと言われたものだ。
彼女をチラッと見ると、顔立ちが綺麗に整いながらも知的なメガネを掛け、綺麗に手入れされた黒髪をポニーテールで結んだ女の子。
制服のリボンから僕と同じ一年生だということが分かる。
「別にお礼を言われるほどじゃあ……」
「イヤイヤイヤ、マジで死ぬところだったから君には感謝しかないよ、え~と、確か……誰だっけ?」
「同じクラスの島田頼那だよ……佐城沙知さん……」
「あれ? そうだっけ? ごめんね、あたしって人の顔と名前を覚えるの苦手で、というかよくみんな覚えられるよね」
「まだ入学して一ヶ月だから、別にみんなが覚えているとは言いきれないけど……」
「じゃあ……何で君はあたしのこと覚えてるの?」
「うぅ……それは……」
彼女のことをちゃんと覚えていた理由を答えることができなかった。というか言えるはずもない。
「へぇ~言えない理由があるんだ~、あたし気になるなぁ~」
僕の反応を見て、面白そうなおもちゃを見つけたような悪い顔をする佐城さん。何か嫌な予感がする。
「ふ~ん、もしかしてあたしの身体でエッチな妄想とかしたりしてる?」
「はあ!?」
「あたしっておっぱい大きいから男子に自慰行為のオカズにされてると思うんだよね」
初めて話す相手にとんでもないこと口にする佐城さんにドン引きせざるを得なかった。
スタイルが良いのは認めるけど、これをさらっと言える思考回路は理解できない。
「仮にしてたとしてもそれを本人の前で言うと思う?」
「まあ、確かに……けど、あたしとしては年頃の男子がどういったシチュエーションであたしを辱めているのか気になるんだよね」
「か、変わってるね……」
知的な容姿から繰り出される直球な猥談。あまりにもギャップがありすぎてマジで思考回路が理解できない。
「ちなみにバストは90のFカップだよ」
バスト90……Fカップか……。ダメだ、ダメだ。邪な妄想をしてしまいそうになる。
「あっ、今、あたしの胸見たでしょ」
「見てないって!!」
「ウソついても無駄だよ、目線で分かるよ」
「ごめんなさい!! チラッと見てました!!」
不敵な笑みを僕に向ける佐城さんに対して、恐怖を感じて、直ぐ様机に全力で頭を着ける。マジで何されるか分からない。
「素直でよろしいけど、物足りないなぁ~」
つまらなそうな顔をする佐城さん。マジで謝らなければ変な方向でからかってきたかもしれない。
「さて、話を戻して君があたしのこと覚えてたのは、もしかしてあたしのこと好きだった?」
「……違う」
「おっ!! この反応マジっぽい!! ねえねえあたしのどういうところに惚れたの!? 顔? おっぱい? お尻?」
エサに食い付いたようにグイグイと質問責めする佐城さん。この人、恥じらいってものがないな。
「おっと、話さないとこの教室から出さないし、何だったら逃げようものなら学校中に広めまくるよ!!」
有無を言わさず、素早い動きで教室の至るところの鍵を掛けて、更に脅してくる。
おかしいな。ただ行き倒れてた佐城さんを助けただけなのに何でこんなことになってるんだろう。
「それでそれで、一体あたしのどこを見て惚れたの!!」
「……一目惚れだよ……」
下手に誤魔化したりすると、変な方向に話が進むかもしれないからボソッと口にする。
「一目惚れかぁ~!! どんな感じなの!? どこで一目惚れしたの!? 教えて!!」
何でこの人、自分に対しての恋バナでそんなに盛り上がれるのだろうか。何で僕はこんな恥ずかしい思いをしなければならないんだろうか。
「言わないとダメなのか?」
「聞きたいなぁ~、聞きたいなぁ~」
キラキラと目を輝かせてる顔を近づけながら僕を見つめる佐城さんに、目を逸らして諦めるように話した。
「入学式の日に佐城さんをパッと見て、目が離せなくなって気づいたら好きになってた」
「入学式の日に一目惚れって……ラブコメマンガみたいな展開だね!! 興味深い!! ちなみにどこに目が離せないの!?」
「笑顔……」
「THE・王・道!! 良いじゃん良いじゃん!! 何で笑顔なの!?」
「無邪気っぽい笑顔が可愛かったから……」
「なるほどね!! エッチな見た目の女の子の子どもっぽさのギャップにエモさ感じたんだ!!」
「分析しなくていい!! 恥ずかしいから!!」
何故僕は初恋の相手にこんなことを答えているのだろうか。というか恥ずかしくないのか佐城さんは。
「何でこんなこと聞くんだよ、てか相手が自分だっていうのに恥ずかしくないのかよ」
「え~別に恥ずかしいとは思わないし、ただ単純に恋をしている人の感情とか知りたいだけ」
からっとした表情で答える彼女。この反応からして、この人はただ好奇心だけで僕の恋心を知ろうとしていただけ。
「あたしって昔から好奇心旺盛で知らないことは知るまでとことん調べないと気が済まないタイプなんだよね」
「何となくそんな気はした」
「やっぱりそう思われちゃうよね~、知らないことあるとグイグイ行ってよく引かれることも日常茶飯事だし、ウザがられるなんて当たり前だよ」
「でも止められないんだよね~、どんな状況だろうと、空気読めなくても、あたしは知りたいって思ったらもう行動しちゃってるから~」
自分の性質を自覚した上で、曲げるつもりはないと感じさせる彼女の言葉に僕は思わず口にした。
「何かカッコいい……」
「うぇ!? カッコいいなんて初めて言われたよ!! 何で何でそう思ったの!?」
「何て言うか生き方に芯がある感じがカッコいいって」
正直、この感想は僕が彼女に恋をしているせいで、フィルターが掛かってそんな風に思えたのかもしれない。恋愛感情がない状態で同じことを聞いたら、もしかしたら彼女のことをウザがってしまってたかもしれない。
「なるほど~信念……あたしは知的好奇心の赴くままに行動しているだけだけどね……君にはそんな風に見えるのか……」
僕の答えを聞いて突然あれこれ考え始める佐城さん。
「これも彼があたしに恋をしているから……それとも彼自身の感性かな……これは……ヨシッ!!」
色々とぶつぶつ何か独り言を言ったと思ったら突然、何かを決断したかのように僕の方を見る。
「確認だけど、あなたはあたしのことを好きなんだよね?」
「うん……まあ……そうだけど……」
面と向かってもう一度言うのは恥ずかしいというか照れる。てか何の確認だよ。
「で、あたしは恋を知りたいって思ってる……これってお互いに利害が一致していると思うんだよ」
「一体何の話をしているんだ……」
「つまり、あたしたちが付き合えば、お互いに欲しいものは手に入るって話だよ!!」
「……はあ!?」
一瞬、話の内容が理解できなくて、理解が遅れたが、いや、理解できたところで全く頭に追い付かない。
「君はあたしを恋人にできて、あたしは恋を知ることができる、ほらっ、Win-Winでしょ?」
「いや……確かに……そうだけど!! そんな簡単に恋人を選んで良いのか!?」
「別にあたしは恋を知れればそれで良いし、君もあたしを恋人にできる、お互いに得をできてるから問題ないって」
無邪気な笑顔で答える彼女。本当に自分が知らないことに対してなりふり構わずに行動するみたいだ。
実際に彼女の発言を耳にして、ようやく実感ができた。彼女は知的好奇心だけで生きている獣。自分が知らないものを知れるとなれば、どこまでも貪欲に食らい付いていく。
彼女の本質は無邪気とも言えるし、狂っているとも言える。
そんな彼女が怖いと思う僕がいると同時に、彼女が自分の恋人になるという事実に高揚感で昂ぶる自分もいた。
佐城さんは美人だし、スタイルも良いし、何より胸が大きい。こんな人が僕の彼女になるなんて、僕の人生でもう二度とないかもしれない。
いや、しかし、知的好奇心だけで付き合おうとしてくる人だ。どう見ても見えている地雷でしかない。下手をすれば面倒事に巻き込まれるなんて一度や二度じゃ済まないはず。
「あたしは恋が知りたいの!!」
思考を巡らせている僕の不意を突くように佐城さんは腕を掴み、真っ直ぐ僕を見つめながら──
「だからあなたがあたしに恋を教えて!!」
無邪気な笑顔でお願いする彼女を見て僕は決心した。
「分かった!! だから、佐城さんも僕の彼女になって欲しい!!」
もういい。この無邪気な笑顔が一番近くで見られるなら面倒事の十個や百個、千個だってドンと来い。
「おぉ~!! 引き受けてくれると思ってたよ、これからもよろしくね、ラインハルトくん!!」
「頼那だよ!!」
「おっと、そうだっけ? あはは、ごめんごめん」
まさか、名前すら覚えてない人と恋人になろうとするなんて思ってもみなかったけど……先行き不安だ……。
そんな不安を感じているとは露知らずに無邪気な笑顔を向けたまま握った手をブルンブルン上下に振り回す佐城さんを見て思った。
僕はもう既に彼女の笑顔によって狂わされたみたいだと。
人と知り合うきっかけといえば様々だ。
例えば同じクラスで席が隣同士だったり。
例えば同じ部活だったり。
例えば家同士が近所で自然と遊ぶようになったり。
今挙げた一例以外にも様々なきっかけの形がある。そんな星の数ほどの出会いがやがてかけがえない友人や恋人、そして家族の始まりとなる。
なぜこんなことを語りだしたかというと、今まさに僕は一つの出会いのきっかけに直面したからである。
「マジで……死ぬ……」
目の前で、しかも放課後の学校の廊下で、死にそうに倒れている女の子が居た。
「あの……大丈夫ですか……」
僕は恐る恐る近づいて女の子に声をかけてみると、彼女はガシッと僕の脚を掴んだ。
「ひっ!!」
「あたしを……第二科学室まで……連れてって……」
急に脚を掴まれて驚いて尻餅をついてしまった僕に彼女は気にせず死にそうな声でお願いをしてくる。
「分かった!!分かったから!!とりあえず脚を離してください!!」
あまりにも恐すぎる状況だったので、僕は彼女のお願いを聞き、彼女を第二科学室まで連れて行ってあげた。
※※※
「いや~君のお陰で死なずに済んだよ、ありがとう」
科学室の机で向かい合いながら椅子に座る彼女は笑顔でお礼を言う。
お互いの手には準備室にあった栄養ドリンクを持っている。科学室に連れていった際に、ついでに取ってきて欲しいと言われたものだ。
彼女をチラッと見ると、顔立ちが綺麗に整いながらも知的なメガネを掛け、綺麗に手入れされた黒髪をポニーテールで結んだ女の子。
制服のリボンから僕と同じ一年生だということが分かる。
「別にお礼を言われるほどじゃあ……」
「イヤイヤイヤ、マジで死ぬところだったから君には感謝しかないよ、え~と、確か……誰だっけ?」
「同じクラスの島田頼那だよ……佐城沙知さん……」
「あれ? そうだっけ? ごめんね、あたしって人の顔と名前を覚えるの苦手で、というかよくみんな覚えられるよね」
「まだ入学して一ヶ月だから、別にみんなが覚えているとは言いきれないけど……」
「じゃあ……何で君はあたしのこと覚えてるの?」
「うぅ……それは……」
彼女のことをちゃんと覚えていた理由を答えることができなかった。というか言えるはずもない。
「へぇ~言えない理由があるんだ~、あたし気になるなぁ~」
僕の反応を見て、面白そうなおもちゃを見つけたような悪い顔をする佐城さん。何か嫌な予感がする。
「ふ~ん、もしかしてあたしの身体でエッチな妄想とかしたりしてる?」
「はあ!?」
「あたしっておっぱい大きいから男子に自慰行為のオカズにされてると思うんだよね」
初めて話す相手にとんでもないこと口にする佐城さんにドン引きせざるを得なかった。
スタイルが良いのは認めるけど、これをさらっと言える思考回路は理解できない。
「仮にしてたとしてもそれを本人の前で言うと思う?」
「まあ、確かに……けど、あたしとしては年頃の男子がどういったシチュエーションであたしを辱めているのか気になるんだよね」
「か、変わってるね……」
知的な容姿から繰り出される直球な猥談。あまりにもギャップがありすぎてマジで思考回路が理解できない。
「ちなみにバストは90のFカップだよ」
バスト90……Fカップか……。ダメだ、ダメだ。邪な妄想をしてしまいそうになる。
「あっ、今、あたしの胸見たでしょ」
「見てないって!!」
「ウソついても無駄だよ、目線で分かるよ」
「ごめんなさい!! チラッと見てました!!」
不敵な笑みを僕に向ける佐城さんに対して、恐怖を感じて、直ぐ様机に全力で頭を着ける。マジで何されるか分からない。
「素直でよろしいけど、物足りないなぁ~」
つまらなそうな顔をする佐城さん。マジで謝らなければ変な方向でからかってきたかもしれない。
「さて、話を戻して君があたしのこと覚えてたのは、もしかしてあたしのこと好きだった?」
「……違う」
「おっ!! この反応マジっぽい!! ねえねえあたしのどういうところに惚れたの!? 顔? おっぱい? お尻?」
エサに食い付いたようにグイグイと質問責めする佐城さん。この人、恥じらいってものがないな。
「おっと、話さないとこの教室から出さないし、何だったら逃げようものなら学校中に広めまくるよ!!」
有無を言わさず、素早い動きで教室の至るところの鍵を掛けて、更に脅してくる。
おかしいな。ただ行き倒れてた佐城さんを助けただけなのに何でこんなことになってるんだろう。
「それでそれで、一体あたしのどこを見て惚れたの!!」
「……一目惚れだよ……」
下手に誤魔化したりすると、変な方向に話が進むかもしれないからボソッと口にする。
「一目惚れかぁ~!! どんな感じなの!? どこで一目惚れしたの!? 教えて!!」
何でこの人、自分に対しての恋バナでそんなに盛り上がれるのだろうか。何で僕はこんな恥ずかしい思いをしなければならないんだろうか。
「言わないとダメなのか?」
「聞きたいなぁ~、聞きたいなぁ~」
キラキラと目を輝かせてる顔を近づけながら僕を見つめる佐城さんに、目を逸らして諦めるように話した。
「入学式の日に佐城さんをパッと見て、目が離せなくなって気づいたら好きになってた」
「入学式の日に一目惚れって……ラブコメマンガみたいな展開だね!! 興味深い!! ちなみにどこに目が離せないの!?」
「笑顔……」
「THE・王・道!! 良いじゃん良いじゃん!! 何で笑顔なの!?」
「無邪気っぽい笑顔が可愛かったから……」
「なるほどね!! エッチな見た目の女の子の子どもっぽさのギャップにエモさ感じたんだ!!」
「分析しなくていい!! 恥ずかしいから!!」
何故僕は初恋の相手にこんなことを答えているのだろうか。というか恥ずかしくないのか佐城さんは。
「何でこんなこと聞くんだよ、てか相手が自分だっていうのに恥ずかしくないのかよ」
「え~別に恥ずかしいとは思わないし、ただ単純に恋をしている人の感情とか知りたいだけ」
からっとした表情で答える彼女。この反応からして、この人はただ好奇心だけで僕の恋心を知ろうとしていただけ。
「あたしって昔から好奇心旺盛で知らないことは知るまでとことん調べないと気が済まないタイプなんだよね」
「何となくそんな気はした」
「やっぱりそう思われちゃうよね~、知らないことあるとグイグイ行ってよく引かれることも日常茶飯事だし、ウザがられるなんて当たり前だよ」
「でも止められないんだよね~、どんな状況だろうと、空気読めなくても、あたしは知りたいって思ったらもう行動しちゃってるから~」
自分の性質を自覚した上で、曲げるつもりはないと感じさせる彼女の言葉に僕は思わず口にした。
「何かカッコいい……」
「うぇ!? カッコいいなんて初めて言われたよ!! 何で何でそう思ったの!?」
「何て言うか生き方に芯がある感じがカッコいいって」
正直、この感想は僕が彼女に恋をしているせいで、フィルターが掛かってそんな風に思えたのかもしれない。恋愛感情がない状態で同じことを聞いたら、もしかしたら彼女のことをウザがってしまってたかもしれない。
「なるほど~信念……あたしは知的好奇心の赴くままに行動しているだけだけどね……君にはそんな風に見えるのか……」
僕の答えを聞いて突然あれこれ考え始める佐城さん。
「これも彼があたしに恋をしているから……それとも彼自身の感性かな……これは……ヨシッ!!」
色々とぶつぶつ何か独り言を言ったと思ったら突然、何かを決断したかのように僕の方を見る。
「確認だけど、あなたはあたしのことを好きなんだよね?」
「うん……まあ……そうだけど……」
面と向かってもう一度言うのは恥ずかしいというか照れる。てか何の確認だよ。
「で、あたしは恋を知りたいって思ってる……これってお互いに利害が一致していると思うんだよ」
「一体何の話をしているんだ……」
「つまり、あたしたちが付き合えば、お互いに欲しいものは手に入るって話だよ!!」
「……はあ!?」
一瞬、話の内容が理解できなくて、理解が遅れたが、いや、理解できたところで全く頭に追い付かない。
「君はあたしを恋人にできて、あたしは恋を知ることができる、ほらっ、Win-Winでしょ?」
「いや……確かに……そうだけど!! そんな簡単に恋人を選んで良いのか!?」
「別にあたしは恋を知れればそれで良いし、君もあたしを恋人にできる、お互いに得をできてるから問題ないって」
無邪気な笑顔で答える彼女。本当に自分が知らないことに対してなりふり構わずに行動するみたいだ。
実際に彼女の発言を耳にして、ようやく実感ができた。彼女は知的好奇心だけで生きている獣。自分が知らないものを知れるとなれば、どこまでも貪欲に食らい付いていく。
彼女の本質は無邪気とも言えるし、狂っているとも言える。
そんな彼女が怖いと思う僕がいると同時に、彼女が自分の恋人になるという事実に高揚感で昂ぶる自分もいた。
佐城さんは美人だし、スタイルも良いし、何より胸が大きい。こんな人が僕の彼女になるなんて、僕の人生でもう二度とないかもしれない。
いや、しかし、知的好奇心だけで付き合おうとしてくる人だ。どう見ても見えている地雷でしかない。下手をすれば面倒事に巻き込まれるなんて一度や二度じゃ済まないはず。
「あたしは恋が知りたいの!!」
思考を巡らせている僕の不意を突くように佐城さんは腕を掴み、真っ直ぐ僕を見つめながら──
「だからあなたがあたしに恋を教えて!!」
無邪気な笑顔でお願いする彼女を見て僕は決心した。
「分かった!! だから、佐城さんも僕の彼女になって欲しい!!」
もういい。この無邪気な笑顔が一番近くで見られるなら面倒事の十個や百個、千個だってドンと来い。
「おぉ~!! 引き受けてくれると思ってたよ、これからもよろしくね、ラインハルトくん!!」
「頼那だよ!!」
「おっと、そうだっけ? あはは、ごめんごめん」
まさか、名前すら覚えてない人と恋人になろうとするなんて思ってもみなかったけど……先行き不安だ……。
そんな不安を感じているとは露知らずに無邪気な笑顔を向けたまま握った手をブルンブルン上下に振り回す佐城さんを見て思った。
僕はもう既に彼女の笑顔によって狂わされたみたいだと。
感想 0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
貞操逆転世界のメンズエステで働くことになった
貞操観念が逆転した現代日本。大学生の佐伯恒一は、金のない生活を変えるため、男性セラピストが女性を施術する「メンズエステ」で働き始める。
そこで待っていたのは、個性的な先輩セラピストと、どこか怪しい女性オーナー、そして一癖も二癖もある女性客たち。
普通の大学生だった恒一は、次第にメンズエステの世界へとのめり込んでいく。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
恋人より先に、夫婦になった。
少子化対策の一環として創設された、全国唯一の実験校「国立未来共生学園」。
新入生たちは最新AIによって将来、最も幸せな家庭を築ける相手とペアを組み、3年間の模擬夫婦生活を送ることになる。学年トップクラスの優等生・神崎悠真の相手は、全国レベルのスポーツ少女・天海美羽。正反対の二人は衝突を繰り返しながらも、少しずつ互いを理解していく――。
これは、恋より先に「夫婦」を学ぶ二人の青春ラブストーリー。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
クラスの茨姫にフラれた俺がなりゆきで付き合ったのは、茨姫に瓜二つの俺の恋愛相談役の子でした。
これは小さな秘密から始まる物語——
鳳湊人は田舎から上京してきた高校2年生。
湊人は、一年の頃から同じクラスで誰にも心を開かない美少女。通称【孤高の茨姫】——朝凪澪に恋をしていた。
湊人には恋愛相談に乗ってくれる雫という女友達がおり、男子たちが澪へのアプローチを諦めて次々ドロップ・アウトしていく中、湊人だけは雫の支えもあり一年間諦めずにアプローチを続けることができていた。
そして2年生に上がった新学期。雫に背中を押された湊人は、澪に告白することを決意する。
だが、その結果は惨敗。
傷心の湊人はいつものように雫へ結果を報告し、心の内を吐き出していると、雫は思いもよらない行動に出る。
そんな雫の暴走の中、湊人はあることに気づくのだった——
この物語は湊人と彼を取り巻くふたりの美少女の不思議な恋愛関係を描く、ちょっと切ない秘密を巡る物語。