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佐城沙知はまだ恋を知らない
十九話 『例えば……?』
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その後、僕の涙が止まり落ち着くと、改めて自分の状況を頭の中で整理した。
今のところ沙知に自分の告白は信じて貰えた。だけど、彼女が僕に対してどんな感情を抱いているかは分からない。
最初に恋人関係になったときは沙知には恋愛感情が一切なかった。ただ僕という都合の良い彼氏役を用意して恋というものを知りたかっただけ。
なら今回はどうだろう。最初のときとは違い、僕の気持ちを伝えた上で彼女は僕のことをどう思っているのか。彼女の気持ちを知りたい。
だから僕は改めて彼女の目を真っ直ぐに見ながら尋ねた。
「ねえ、沙知……君に聞きたいことがあるんだけど……」
「……うん」
彼女は布団を被りながら答える。そのせいで顔は見えない。
「もし、答えたくなかったら無理して答えなくてもいいんだけど……沙知は僕のことをどう思ってる?」
そう単刀直入に尋ねた。そんな僕の問い掛けに対して彼女はしばらくの間黙ったままだった。でもしばらくすると小さな声で呟いた。
「……わかんない」
沙知の返答はそんな言葉だった。
好きとか嫌いとかではなく分からない。それが彼女が僕に抱いている気持ち。
「あたしには……恋がわかんない……」
その言葉を呟くと沙知はまた黙ってしまった。けど、なんとなく分かる気がした。彼女は恋というのを知らないから。
その好きという気持ちが分からなくて僕に対して、どうすれば良いのか、彼女は分からず困惑させているみたいだ。
「ごめん……僕の気持ちを一方的に押し付けちゃって……沙知からしたら迷惑だったよね」
沙知の気持ちも考えずに自分の気持ちばかりをぶつけてしまった。
よくよく考えれば、好意の一切ない相手に好意の言葉を投げかけられるなんて恐怖でしかない。
「何で頼那くんが謝るの? 君は君の気持ちを正直に伝えてくれただけじゃない」
僕の謝罪に沙知は布団を被ったまま答えた。相変わらず表情は見えない彼女は続けて口にした。
「あ、あたしね……最初に君が告白したときにはね……君の言葉が冗談じゃないってことはちゃんと伝わっていたんだよ……だからこそ自分の感情に戸惑った……」
呟くような弱々しい声が布団の中から聞こえてきた。僕は沙知の言葉に耳を傾ける。
「誰かに素直な気持ちで自分のことを好きって言って貰えるのって、すごく嬉しいことなんだなって思った……」
弱々しい声からだんだんと声が少しずつ大きくなっていく。
「こんなにも純粋で真っ直ぐで……正直な想いを人から向けられたことなんてあたしなかったから、心がね、震えたんだよ、人ってこんなにも誰かを好きになれるんだなって思った」
ようやく彼女は顔をこちらに向けた。その顔は頬が真っ赤になっており、彼女の綺麗な青い瞳は潤んでいた。
「あたしもその気持ちが知りたい、誰かをそんな風に好きになってみたい、恋を知りたいって……そんな風に思ったんだ……けど……」
「けど……?」
その僕の問い掛けに彼女は悲しそうな顔をして答えた。
「だけど、あたしには分からないんだよ……どうして、君はあたしのことを好きなんだろって、思ったら……なんか分かんなくなって……」
彼女の言葉の最後の方はすでに消え入りそうな声だった。それだけ彼女は僕が好意を寄せていることに戸惑っている。
「あたしはこんな体質だからできないことも多くて……正直、知ってたら絶対に避けるよ……それに……」
沙知は唇を噛みながら顔を下に向ける。そして沙知の口からポツリ、ポツリと言葉がこぼれ落ちる。
「それに……あたしと……瓜二つの……お姉ちゃんを……知ってたら……絶対に……あたしよりも……お姉ちゃんのことが……好きになるに決まってる……」
彼女がこんなに悲しそうな顔で話しているのを僕は今まで見たことがなかった。
沙知は自分のお姉さん──沙々さんのことはとても好きだと言っていた。彼女の役に立ちたいって言って、すごい発明をするくらいに。
きっと、それだけ沙知にとって沙々さんは理想の姉でとても大切な存在なんだろう。彼女が特別だというほど。
ただそれと同時に沙知にとって彼女はとても強いコンプレックスになっている。
「お姉ちゃんは……ちょっと趣味は変わっているけど……みんなに頼られて……優しくて……運動も勉強もできて……可愛くて……そんなお姉ちゃんを知ったら……誰だって好きになっちゃう……あたしが勝てる要素なんて……一つもない……」
「沙知……」
僕は思わず彼女の名前を呟いた。彼女の瞳には涙が溜まっていた。
「それに……健康だから……ちゃんとエッチなこともできるし……スタイルも良いから……男の子だったら……絶対にお姉ちゃんの方を選ぶし……」
自虐的な笑みを浮かべながら、彼女は涙をポロポロと流す。本当はこんな悲しいことなんて言いたくないはずなのに、涙と共に本音が溢れる。
それは彼女がずっと誰にも打ち明けずに一人で抱えてきたものだ。そんな彼女の言葉を黙って聞く。
「だから、なおさら……分からないんだよ……」
彼女は布団の端をギュッと握りながら震えた声で続けて話した。
「君があたしのこと好きって言っても好きになる理由が一切分からないんだよ……」
それは彼女の本音。ずっと溜め込んでいた心の奥にある本当の想い。
彼女の深意を聞いて、僕はやっと沙知の一連の行動の意味が理解できた気がした。
つまり、彼女は怖いんだ。
ただでさえ沙知は自分に対して恋愛感情を抱いている僕にも困惑していた。
好きという感情さえもよく分かっていないのに、なぜ相手が自分に好意を持っているのかが理解できないから。
佐城沙々という沙知にとっては目の上のたんこぶの存在がいて、それなのになぜ自分を選んだのかが理解できない。
佐城沙知にとって、知るということは空気を吸うように当たり前のことだ。
逆に言えば、知らない、理解できないは彼女にとって、恐怖そのものだ。だから、自分が僕から好かれる理由が分からないのが怖くて怖くて仕方がない。
僕から逃げ出したのも怖かったから。分からないものが近づいてくる恐怖に身体が反応して、その場から逃げ出した。
沙知は再び布団に顔を埋めながら言葉を続けた。
「だから……どうして君にここまで好かれてるのかが分かんないよ……」
そんな彼女の弱々しい、縋るような声はとても痛々しかった。
僕は布団を掴んでいる彼女の手をそっと掴んだ。すると、沙知はビクッと身体を振るわせ、恐る恐る顔を上げた。その瞳からは涙が流れ続けている。
そんな怯える少女を見て僕は優しく微笑んだ。
彼女になんと言えば彼女は安心するだろう。そんなことは分かりきっている。だからこそ、僕は率直な言葉で伝えることにした。
「ありがとう、沙知の気持ちを教えてくれて、君のことをまた知ることができたから」
僕が笑顔で感謝の気持ちを伝えると沙知は驚いたように僕の顔を見る。
「え……なんで……」
そんな言葉を漏らして戸惑いの表情で彼女は僕を見た。そんな彼女に僕は優しく微笑みながら言った。
「だって、本当に嬉しかったから」
彼女の本心を僕に教えてくれたことが嬉しいんだ。
前はただ沙知の側に居れば、自然と彼女は僕に惹かれて、好きになってくれると思っていた。でもそれじゃあダメだって分かった。知ることができた。だからこそ……。
「あのね、沙知。僕は君が沙々さんと比べて劣っているところがあるとか以前に君は僕にとっては素敵な女の子だよ」
彼女の瞳をしっかり見ながら伝えると、彼女はまだ信じられないように僕を見ていた。
「例えば……?」
彼女は小さな声でそう尋ねた。まだ僕のことを信じられていないんだ、きっと沙知は。
だから、僕はそんな疑いを晴らすように微笑んで口を開く。
「楽しそうに笑っている君の笑顔が僕は好き」
そう伝えると彼女は少し顔を紅くしながら小さな声で言う。
「もっと……」
彼女がそう言うので、僕はさらに言葉を続ける。
「自分の興味あることに対して、真っ直ぐな好奇心を持っているところがカッコいい」
「もっと……」
沙知がまたおねだりしてくる。何度だって言ってあげる。僕が今思っている彼女への気持ちを。
「結構スキンシップ近いところがドキッする」
「もっと……言って……」
彼女は切ない声で次を催促する。僕はその彼女のおねだりを断らないで次の言葉を紡ぐ。
「実は負けず嫌いなところが可愛い」
「……」
「すごい発明が作れるところが尊敬する」
「……」
「けど、僕をモルモットにするのはちょっと止めて欲しい」
その言葉を聞くと、ちょっと沙知はシュンっと下を向いてしまった。僕はそんな沙知の頭に手を置きながら続けて言った。
「そういう顔も……可愛い」
「……っ!」
僕がそう伝えると彼女はさらに顔を赤くして布団の中に潜ってしまう。
だから、僕はそんな彼女から布団を優しく引き剥がして顔を近付ける。すると、僕と沙知の顔がすごく近い距離になる。
彼女の綺麗な瞳と僕の視線が交わる。その青い瞳は本当に綺麗な目をしていた。
その宝石のように綺麗な目は涙で濡れており、いつもの沙知からは感じられないどこか色っぽさを感じる。
そんな目の前にいる彼女はとても可愛らしくて愛しかった。
長くて綺麗な黒髪からいい香りがした。僕はそんな香りに誘われるようにさっきの続きを口にする。
「発明品を自慢しているときのドヤ顔とかも好き」
「っ……」
沙知は驚きで言葉を失っていた。そんな彼女に僕は言葉を続ける。
「ナイーブになると、甘え坊になるところが可愛い」
そんな僕の言葉を聞き、ようやく彼女は口を開いた。
「……ば、……ばか……」
そう小さく呟いて僕から目を逸らした彼女の顔は真っ赤になっていた。
「もう……やめてよ……あんまり可愛いって言わないで……」
そんな反応に僕は素直に思ったことを口にした。
「照れた沙知が可愛い」
「……もう!」
沙知は布団を手でモジモジと掴みながら行き場のない羞恥心を露わにする。そんな可愛らしい姿を見て僕は笑う。
「ははっ……いつものお返しだよ」
「ん~っ!!」
沙知は恥ずかしいのを誤魔化そうとしているのか、僕の胸をポスポスと両手で叩いてくる。正直、全く痛くない。
「さっきの不安そうな表情より、今の沙知の方が僕は好きだよ」
僕がそう微笑みながら伝えると彼女はボソッと小さな声で言った。
「……いじわる……」
沙知はそんなことを呟いたが、その表情にはもう先程までの不安さは窺えなかった。ただその仕草や表情はとても可愛かった。僕はそんな彼女の頭をまた優しく撫でた。
「また君の新しい一面を知ることができて僕は嬉しいよ」
僕はありのままの思いを素直に伝える。すると沙知は恥ずかしそうに小さく頷く。
「そう……なんだね……」
「うん、だからこれからも色々と知りたいなって思っているよ、もちろん、君が良かったらの話だけど」
そう沙知に問いかけると、彼女は顔を背けて、こう呟いた。
「今から……ちょっと気持ちを整理するから……時間ちょうだい……」
そう言うと沙知はまた顔を僕から逸らしてしまった。まあ、それはそうだ。好きな人に自分のことをいろいろと知られてしまったんだから、恥ずかしくなるのは当然だ。
「うん……分かった」
だから僕もその気持ちを汲むことにした。すると、沙知は再び布団を被り、布団に潜ったまま気持ちを整理するのだった。
今のところ沙知に自分の告白は信じて貰えた。だけど、彼女が僕に対してどんな感情を抱いているかは分からない。
最初に恋人関係になったときは沙知には恋愛感情が一切なかった。ただ僕という都合の良い彼氏役を用意して恋というものを知りたかっただけ。
なら今回はどうだろう。最初のときとは違い、僕の気持ちを伝えた上で彼女は僕のことをどう思っているのか。彼女の気持ちを知りたい。
だから僕は改めて彼女の目を真っ直ぐに見ながら尋ねた。
「ねえ、沙知……君に聞きたいことがあるんだけど……」
「……うん」
彼女は布団を被りながら答える。そのせいで顔は見えない。
「もし、答えたくなかったら無理して答えなくてもいいんだけど……沙知は僕のことをどう思ってる?」
そう単刀直入に尋ねた。そんな僕の問い掛けに対して彼女はしばらくの間黙ったままだった。でもしばらくすると小さな声で呟いた。
「……わかんない」
沙知の返答はそんな言葉だった。
好きとか嫌いとかではなく分からない。それが彼女が僕に抱いている気持ち。
「あたしには……恋がわかんない……」
その言葉を呟くと沙知はまた黙ってしまった。けど、なんとなく分かる気がした。彼女は恋というのを知らないから。
その好きという気持ちが分からなくて僕に対して、どうすれば良いのか、彼女は分からず困惑させているみたいだ。
「ごめん……僕の気持ちを一方的に押し付けちゃって……沙知からしたら迷惑だったよね」
沙知の気持ちも考えずに自分の気持ちばかりをぶつけてしまった。
よくよく考えれば、好意の一切ない相手に好意の言葉を投げかけられるなんて恐怖でしかない。
「何で頼那くんが謝るの? 君は君の気持ちを正直に伝えてくれただけじゃない」
僕の謝罪に沙知は布団を被ったまま答えた。相変わらず表情は見えない彼女は続けて口にした。
「あ、あたしね……最初に君が告白したときにはね……君の言葉が冗談じゃないってことはちゃんと伝わっていたんだよ……だからこそ自分の感情に戸惑った……」
呟くような弱々しい声が布団の中から聞こえてきた。僕は沙知の言葉に耳を傾ける。
「誰かに素直な気持ちで自分のことを好きって言って貰えるのって、すごく嬉しいことなんだなって思った……」
弱々しい声からだんだんと声が少しずつ大きくなっていく。
「こんなにも純粋で真っ直ぐで……正直な想いを人から向けられたことなんてあたしなかったから、心がね、震えたんだよ、人ってこんなにも誰かを好きになれるんだなって思った」
ようやく彼女は顔をこちらに向けた。その顔は頬が真っ赤になっており、彼女の綺麗な青い瞳は潤んでいた。
「あたしもその気持ちが知りたい、誰かをそんな風に好きになってみたい、恋を知りたいって……そんな風に思ったんだ……けど……」
「けど……?」
その僕の問い掛けに彼女は悲しそうな顔をして答えた。
「だけど、あたしには分からないんだよ……どうして、君はあたしのことを好きなんだろって、思ったら……なんか分かんなくなって……」
彼女の言葉の最後の方はすでに消え入りそうな声だった。それだけ彼女は僕が好意を寄せていることに戸惑っている。
「あたしはこんな体質だからできないことも多くて……正直、知ってたら絶対に避けるよ……それに……」
沙知は唇を噛みながら顔を下に向ける。そして沙知の口からポツリ、ポツリと言葉がこぼれ落ちる。
「それに……あたしと……瓜二つの……お姉ちゃんを……知ってたら……絶対に……あたしよりも……お姉ちゃんのことが……好きになるに決まってる……」
彼女がこんなに悲しそうな顔で話しているのを僕は今まで見たことがなかった。
沙知は自分のお姉さん──沙々さんのことはとても好きだと言っていた。彼女の役に立ちたいって言って、すごい発明をするくらいに。
きっと、それだけ沙知にとって沙々さんは理想の姉でとても大切な存在なんだろう。彼女が特別だというほど。
ただそれと同時に沙知にとって彼女はとても強いコンプレックスになっている。
「お姉ちゃんは……ちょっと趣味は変わっているけど……みんなに頼られて……優しくて……運動も勉強もできて……可愛くて……そんなお姉ちゃんを知ったら……誰だって好きになっちゃう……あたしが勝てる要素なんて……一つもない……」
「沙知……」
僕は思わず彼女の名前を呟いた。彼女の瞳には涙が溜まっていた。
「それに……健康だから……ちゃんとエッチなこともできるし……スタイルも良いから……男の子だったら……絶対にお姉ちゃんの方を選ぶし……」
自虐的な笑みを浮かべながら、彼女は涙をポロポロと流す。本当はこんな悲しいことなんて言いたくないはずなのに、涙と共に本音が溢れる。
それは彼女がずっと誰にも打ち明けずに一人で抱えてきたものだ。そんな彼女の言葉を黙って聞く。
「だから、なおさら……分からないんだよ……」
彼女は布団の端をギュッと握りながら震えた声で続けて話した。
「君があたしのこと好きって言っても好きになる理由が一切分からないんだよ……」
それは彼女の本音。ずっと溜め込んでいた心の奥にある本当の想い。
彼女の深意を聞いて、僕はやっと沙知の一連の行動の意味が理解できた気がした。
つまり、彼女は怖いんだ。
ただでさえ沙知は自分に対して恋愛感情を抱いている僕にも困惑していた。
好きという感情さえもよく分かっていないのに、なぜ相手が自分に好意を持っているのかが理解できないから。
佐城沙々という沙知にとっては目の上のたんこぶの存在がいて、それなのになぜ自分を選んだのかが理解できない。
佐城沙知にとって、知るということは空気を吸うように当たり前のことだ。
逆に言えば、知らない、理解できないは彼女にとって、恐怖そのものだ。だから、自分が僕から好かれる理由が分からないのが怖くて怖くて仕方がない。
僕から逃げ出したのも怖かったから。分からないものが近づいてくる恐怖に身体が反応して、その場から逃げ出した。
沙知は再び布団に顔を埋めながら言葉を続けた。
「だから……どうして君にここまで好かれてるのかが分かんないよ……」
そんな彼女の弱々しい、縋るような声はとても痛々しかった。
僕は布団を掴んでいる彼女の手をそっと掴んだ。すると、沙知はビクッと身体を振るわせ、恐る恐る顔を上げた。その瞳からは涙が流れ続けている。
そんな怯える少女を見て僕は優しく微笑んだ。
彼女になんと言えば彼女は安心するだろう。そんなことは分かりきっている。だからこそ、僕は率直な言葉で伝えることにした。
「ありがとう、沙知の気持ちを教えてくれて、君のことをまた知ることができたから」
僕が笑顔で感謝の気持ちを伝えると沙知は驚いたように僕の顔を見る。
「え……なんで……」
そんな言葉を漏らして戸惑いの表情で彼女は僕を見た。そんな彼女に僕は優しく微笑みながら言った。
「だって、本当に嬉しかったから」
彼女の本心を僕に教えてくれたことが嬉しいんだ。
前はただ沙知の側に居れば、自然と彼女は僕に惹かれて、好きになってくれると思っていた。でもそれじゃあダメだって分かった。知ることができた。だからこそ……。
「あのね、沙知。僕は君が沙々さんと比べて劣っているところがあるとか以前に君は僕にとっては素敵な女の子だよ」
彼女の瞳をしっかり見ながら伝えると、彼女はまだ信じられないように僕を見ていた。
「例えば……?」
彼女は小さな声でそう尋ねた。まだ僕のことを信じられていないんだ、きっと沙知は。
だから、僕はそんな疑いを晴らすように微笑んで口を開く。
「楽しそうに笑っている君の笑顔が僕は好き」
そう伝えると彼女は少し顔を紅くしながら小さな声で言う。
「もっと……」
彼女がそう言うので、僕はさらに言葉を続ける。
「自分の興味あることに対して、真っ直ぐな好奇心を持っているところがカッコいい」
「もっと……」
沙知がまたおねだりしてくる。何度だって言ってあげる。僕が今思っている彼女への気持ちを。
「結構スキンシップ近いところがドキッする」
「もっと……言って……」
彼女は切ない声で次を催促する。僕はその彼女のおねだりを断らないで次の言葉を紡ぐ。
「実は負けず嫌いなところが可愛い」
「……」
「すごい発明が作れるところが尊敬する」
「……」
「けど、僕をモルモットにするのはちょっと止めて欲しい」
その言葉を聞くと、ちょっと沙知はシュンっと下を向いてしまった。僕はそんな沙知の頭に手を置きながら続けて言った。
「そういう顔も……可愛い」
「……っ!」
僕がそう伝えると彼女はさらに顔を赤くして布団の中に潜ってしまう。
だから、僕はそんな彼女から布団を優しく引き剥がして顔を近付ける。すると、僕と沙知の顔がすごく近い距離になる。
彼女の綺麗な瞳と僕の視線が交わる。その青い瞳は本当に綺麗な目をしていた。
その宝石のように綺麗な目は涙で濡れており、いつもの沙知からは感じられないどこか色っぽさを感じる。
そんな目の前にいる彼女はとても可愛らしくて愛しかった。
長くて綺麗な黒髪からいい香りがした。僕はそんな香りに誘われるようにさっきの続きを口にする。
「発明品を自慢しているときのドヤ顔とかも好き」
「っ……」
沙知は驚きで言葉を失っていた。そんな彼女に僕は言葉を続ける。
「ナイーブになると、甘え坊になるところが可愛い」
そんな僕の言葉を聞き、ようやく彼女は口を開いた。
「……ば、……ばか……」
そう小さく呟いて僕から目を逸らした彼女の顔は真っ赤になっていた。
「もう……やめてよ……あんまり可愛いって言わないで……」
そんな反応に僕は素直に思ったことを口にした。
「照れた沙知が可愛い」
「……もう!」
沙知は布団を手でモジモジと掴みながら行き場のない羞恥心を露わにする。そんな可愛らしい姿を見て僕は笑う。
「ははっ……いつものお返しだよ」
「ん~っ!!」
沙知は恥ずかしいのを誤魔化そうとしているのか、僕の胸をポスポスと両手で叩いてくる。正直、全く痛くない。
「さっきの不安そうな表情より、今の沙知の方が僕は好きだよ」
僕がそう微笑みながら伝えると彼女はボソッと小さな声で言った。
「……いじわる……」
沙知はそんなことを呟いたが、その表情にはもう先程までの不安さは窺えなかった。ただその仕草や表情はとても可愛かった。僕はそんな彼女の頭をまた優しく撫でた。
「また君の新しい一面を知ることができて僕は嬉しいよ」
僕はありのままの思いを素直に伝える。すると沙知は恥ずかしそうに小さく頷く。
「そう……なんだね……」
「うん、だからこれからも色々と知りたいなって思っているよ、もちろん、君が良かったらの話だけど」
そう沙知に問いかけると、彼女は顔を背けて、こう呟いた。
「今から……ちょっと気持ちを整理するから……時間ちょうだい……」
そう言うと沙知はまた顔を僕から逸らしてしまった。まあ、それはそうだ。好きな人に自分のことをいろいろと知られてしまったんだから、恥ずかしくなるのは当然だ。
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