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出会い編
伍 ベートーベンと夜鳴る楽器の場合
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学校の七不思議の一つ『夜鳴る楽器』。
それと、同じ音楽室にいる『ベートーベン』。
一つ目の『夜鳴る楽器』は、音楽が感受性を必要とされるためか学校の七不思議として意外と知られている。
『夜鳴る楽器』は、その名の通り、夜に鳴る楽器だ。楽器の種類にもよるが、ピアノが有名だ。
「死んだ音楽の先生が夜になるとピアノを弾いている」と、言うものもあるが、多分、「この世に未練を残した生徒が夜になると演奏する」と、言うもののほうが有名だと思う。
もう一つの『ベートーベン』については、一度は聞いたことがあるはずな有名な音楽家が描かれている肖像画のことだ。音楽室にずらっと並んでいる音楽家の人達の肖像画の一つだ。あの、肖像画達にじっと見られているようで何だか怖いよね。クラスの男子が一人でもベートーベンの髪型がカツラだと言い、笑いの種になったりならなかったりするかもしれないあの肖像画だ。
話が逸れたね。知っている人が多いと思うけど、夜になるとベートーベンの目が光ったり、ベートーベン自体が動いたり、喋ったり…。うん。まぁ、取り敢えず動くんだよ。動くんだ。
「帰してください」
此所は音楽室。
そこに黒炎が一人たっている。他には誰もいない。黒炎だけだ。
「嫌である」
こうなった理由は、大したことではない。
今日の授業の音楽を音楽室でやることになった。まぁ、ここまではいつも通りだ。しかし、チャイムが鳴り、挨拶を済ませ、音楽室から出ようとした瞬間、扉が勢いよく閉まり、閉じ込められる形となった。
ついでに言うと、最後に音楽室から出ようとしたのは黒炎だったりする。
音楽室に閉じ込められる形となってしまった黒炎は、すぐ出ようとしたがガタガタと音が音が鳴るだけでちっとも開く気配はない。
「ハーハッハッハ!」
突然、笑い声が聞こえた。
黒炎は、笑い声の聞こえた方を向く。
そこには
──ベートーベンの肖像画があった。
「小娘、貴様は二度とこの部屋から出られないのである。
ざまー見やがれ!!ハーハッハッハ!!」
聞こえてくる声と口が動きが合っているところから、この肖像画が話していると分かる。
さらに、後半の言葉は何かイラついてくる。
一方、その話を聞いていた黒炎はというと──
ガタガタガタガタッ
思いっきりベートーベンの話を聞かずに扉をガタガタと揺らしていた。
黒炎らしいと言えば黒炎らしい。と、いうかブレないな。
「おい、おい!おい!!おい!!!
小娘!話を聞けーーーー!!!」
最終的にはベートーベンのほうが折れた。
もはや、大声で吠えるように叫んでいる。
「五月蝿いですね。犬ですか?貴方は」
…うん。本当に黒炎はブレないね。
「早く帰してくださいよ」
黒炎は、ベートーベンの方を向き、そう話しかけた。
「だから、嫌である」
「何故ですか?
早く帰してくないと扉を壊して、ついでに貴方も壊して無理矢理に突破しますよ」
『ついでに』で、ベートーベンを壊そうとするな。
「わ、分かったのだ。
特別に教えてあげるのだ」
『破かれる』ということにびびったのか教えてくれるらしい。ただし、上から目線だが。
「最近、この学校で小娘が我輩たち相手にでしゃばっていると聞いたのである。それで、我輩が自ら小娘に親切にこの学校の決まりを教えてやろうとしたのである」
わざわざ、『親切』と、いう言葉を強調して言った。
「でしゃばる?
私はでしゃばるようなことをした覚えはないんですが?」
意味が分からないと言うように、黒炎はコテンと首を傾げた。
「なんと。
自覚をしていなかったであるか。これはこれは、どうしよもないであるな。これだから、小娘は……」
鼻にかけたような話し方だ。
「我輩が直々に教えてやろう。
この学校で我輩たちに敬意を払い、敬って話したり、行動するべきなのだ。
そして、我輩のために下婢のように動き、役にたつのだ。
花子と変態標本と無口男のような阿呆と一緒にいた小娘には分からぬだろうがな」
花子は、花子さんのことだろう。無口男は…二宮金次郎で、変態標本は…これは間違いなくケレートのことを指しているだろう。……否定は出来ない。ごめん。ケレート…。
後半の言葉を聞いた途端、黒炎がピクッと動いた。
ドカッ
突然、大きな音が音楽室に響く。
音のした方を見ると、壁が蜘蛛の巣状に割れている。
壁を壊したのは
──黒炎だ。
パラパラと壁の欠片が壁から手を離した黒炎の手から落ちる。
──ベートーベンはというと、額縁ごとガタガタと震えていた。
軽くトラウマになっているだろう。
黒炎は、いつもと変わらない。──が、どこかどす黒いヤバい空気を発している。
「……さっきから、ベラベラベラベラ。お喋りが少し過ぎますよ。
いっそのこと、貴方を破いたほうがいいですかね?一生喋ることができなくなって静かになりますよ。まぁ、大方、そこら辺の魂がこの肖像画に入り込んだ。ってところでしょうがね。
あぁ、いっそのこと輪廻転生が出来なくなるまで魂を粉々に砕いたほうがいいですか?
私のことをどれだけ貶しても、私は気にしませんし、泣きもしません。
──しかし、私の友達を貶すのは止めてください。
ウッカリ貴方を魂ごと壊してしまいそうですから」
いつもの黒炎と変わらない。しかし、絶対にいつもの黒炎と違う。
コンコン
扉をノックする音が聞こえた。
ガラガラガラ
先程まで全く開かなかった扉が開けられ、背の低い子が入ってきた。
おかっぱ頭に赤いスカート。
七不思議の一つ。トイレの花子さんだ。
「やっぱりここにいたのね。先生達が探していたわよ」
「…花姉さん」
黒炎がポツリと呟くように言った。
黒い空気を引っ込めた黒炎がいつもの黒炎に戻った。
花子さんは、周りをぐるりと見、状況を理解したようだ。
「はぁーー。あんたも飽きないわね。そんなに負け喧嘩をしたいわけ?いい加減にしたほうがいいと思うわよ。アリス」
花子さんが、ベートーベンに向かって言った。
ん?
アリスって誰?
もしかして、あのベートーベンの肖像画の人?
「花姉さん。『アリス』って誰ですか?」
そのことは黒炎も気になったみたいだ。
「あぁ、聞いてなかったのね。このベートーベ「言うな!!言うな!!その小娘に絶対に言うな!!!」
ベートーベンが途中で口を挟んだため、花子さんの話を最後まで聞けなかった。
「五月蝿いわね。女みたいな名前の癖にギャーギャー騒ぐんじゃないわよ。あんた、男でしょう?」
「あぁぁーーーーーーーーーーー!!!」
うん。結局言っちゃうんだね。
そして、ベートーベン…いや、アリス五月蝿い。
「えーと、改めてよろしくお願いします。アリスちゃん」
「うゎーーーーーーーーぁ!!
何故、『ちゃん』付けで呼ぶ!?」
五月蝿い。
てか、追いうちをかけたな。
「あら、良いじゃない。可愛くなったわね。名前が」
花子さん。後半明らかに煽っている。
「さて、もうそろそろ戻るわよ」
花子さんが、灰になりかけているアリスを見ながら言った。少し笑っている。
「そうですね。先生方に迷惑を掛けるのはあまり良くないですしね」
黒炎も灰になりかけているアリスを見ながら言った。
花子さんは、扉を開けた…が、そこはいつもの廊下ではなく、グチャグチャとした空間が広がっている。
「……あぁ、そう。忘れてたわ。
──リュウ。居るんでしょう?この扉の向こう元に直して」
と、コンコンと扉を叩きながら、ピアノの方を見た。
ポローン
と、独りでにピアノがなり、半透明なこの学校の制服を着た、やや長い白い髪に黒い目を持つ少年が現れた。
「あ、やっぱり僕だってバレてた?」
ピアノの音のような声だ。
「バレてるわよ。早く戻して。
まぁ、大方こいつに頼まれてだと思うけどね」
と、未だ灰のアリスを見ながら言った。
「そうだよ。
本当、コイツだけを違うところに移してよ。
五月蝿いんだよね。
まぁ、楽しめたからいいんだけどね」
リュウと呼ばれている少年もアリスをみながら言った。
「さてと…戻すんだよね」
パチンッ
と、指を鳴らした。
黒炎が扉を引くとスムーズに動いて廊下が見える。
もう一度扉を開けるといつもの廊下。
どうやら、戻ったようだ。
「じゃあ、また、遊びに来てね。
えーと、黒炎ちゃん?」
と、ひらひらと手を振って言った。
「はい。遊びに来ます。
ありがとうございました。
えーと、リュウ君とアリスちゃん」
ペコリとお辞儀をし、花子さんと共に廊下を歩いていった。
「アリスちゃんって呼ぶなぁーーーーーーーーーーーーー!!!」
灰から復活したアリスが廊下に響くほどの声で叫んだ。
「ふふふふっ。
面白いね。あの少女──黒炎と言っていたかな?
近いうちに、遊びたいね」
何処からともなく声が聞こえてくる。
男か女かよく分からない声だ。
彼──いや、彼女(?)出るのはまた次の話。
それと、同じ音楽室にいる『ベートーベン』。
一つ目の『夜鳴る楽器』は、音楽が感受性を必要とされるためか学校の七不思議として意外と知られている。
『夜鳴る楽器』は、その名の通り、夜に鳴る楽器だ。楽器の種類にもよるが、ピアノが有名だ。
「死んだ音楽の先生が夜になるとピアノを弾いている」と、言うものもあるが、多分、「この世に未練を残した生徒が夜になると演奏する」と、言うもののほうが有名だと思う。
もう一つの『ベートーベン』については、一度は聞いたことがあるはずな有名な音楽家が描かれている肖像画のことだ。音楽室にずらっと並んでいる音楽家の人達の肖像画の一つだ。あの、肖像画達にじっと見られているようで何だか怖いよね。クラスの男子が一人でもベートーベンの髪型がカツラだと言い、笑いの種になったりならなかったりするかもしれないあの肖像画だ。
話が逸れたね。知っている人が多いと思うけど、夜になるとベートーベンの目が光ったり、ベートーベン自体が動いたり、喋ったり…。うん。まぁ、取り敢えず動くんだよ。動くんだ。
「帰してください」
此所は音楽室。
そこに黒炎が一人たっている。他には誰もいない。黒炎だけだ。
「嫌である」
こうなった理由は、大したことではない。
今日の授業の音楽を音楽室でやることになった。まぁ、ここまではいつも通りだ。しかし、チャイムが鳴り、挨拶を済ませ、音楽室から出ようとした瞬間、扉が勢いよく閉まり、閉じ込められる形となった。
ついでに言うと、最後に音楽室から出ようとしたのは黒炎だったりする。
音楽室に閉じ込められる形となってしまった黒炎は、すぐ出ようとしたがガタガタと音が音が鳴るだけでちっとも開く気配はない。
「ハーハッハッハ!」
突然、笑い声が聞こえた。
黒炎は、笑い声の聞こえた方を向く。
そこには
──ベートーベンの肖像画があった。
「小娘、貴様は二度とこの部屋から出られないのである。
ざまー見やがれ!!ハーハッハッハ!!」
聞こえてくる声と口が動きが合っているところから、この肖像画が話していると分かる。
さらに、後半の言葉は何かイラついてくる。
一方、その話を聞いていた黒炎はというと──
ガタガタガタガタッ
思いっきりベートーベンの話を聞かずに扉をガタガタと揺らしていた。
黒炎らしいと言えば黒炎らしい。と、いうかブレないな。
「おい、おい!おい!!おい!!!
小娘!話を聞けーーーー!!!」
最終的にはベートーベンのほうが折れた。
もはや、大声で吠えるように叫んでいる。
「五月蝿いですね。犬ですか?貴方は」
…うん。本当に黒炎はブレないね。
「早く帰してくださいよ」
黒炎は、ベートーベンの方を向き、そう話しかけた。
「だから、嫌である」
「何故ですか?
早く帰してくないと扉を壊して、ついでに貴方も壊して無理矢理に突破しますよ」
『ついでに』で、ベートーベンを壊そうとするな。
「わ、分かったのだ。
特別に教えてあげるのだ」
『破かれる』ということにびびったのか教えてくれるらしい。ただし、上から目線だが。
「最近、この学校で小娘が我輩たち相手にでしゃばっていると聞いたのである。それで、我輩が自ら小娘に親切にこの学校の決まりを教えてやろうとしたのである」
わざわざ、『親切』と、いう言葉を強調して言った。
「でしゃばる?
私はでしゃばるようなことをした覚えはないんですが?」
意味が分からないと言うように、黒炎はコテンと首を傾げた。
「なんと。
自覚をしていなかったであるか。これはこれは、どうしよもないであるな。これだから、小娘は……」
鼻にかけたような話し方だ。
「我輩が直々に教えてやろう。
この学校で我輩たちに敬意を払い、敬って話したり、行動するべきなのだ。
そして、我輩のために下婢のように動き、役にたつのだ。
花子と変態標本と無口男のような阿呆と一緒にいた小娘には分からぬだろうがな」
花子は、花子さんのことだろう。無口男は…二宮金次郎で、変態標本は…これは間違いなくケレートのことを指しているだろう。……否定は出来ない。ごめん。ケレート…。
後半の言葉を聞いた途端、黒炎がピクッと動いた。
ドカッ
突然、大きな音が音楽室に響く。
音のした方を見ると、壁が蜘蛛の巣状に割れている。
壁を壊したのは
──黒炎だ。
パラパラと壁の欠片が壁から手を離した黒炎の手から落ちる。
──ベートーベンはというと、額縁ごとガタガタと震えていた。
軽くトラウマになっているだろう。
黒炎は、いつもと変わらない。──が、どこかどす黒いヤバい空気を発している。
「……さっきから、ベラベラベラベラ。お喋りが少し過ぎますよ。
いっそのこと、貴方を破いたほうがいいですかね?一生喋ることができなくなって静かになりますよ。まぁ、大方、そこら辺の魂がこの肖像画に入り込んだ。ってところでしょうがね。
あぁ、いっそのこと輪廻転生が出来なくなるまで魂を粉々に砕いたほうがいいですか?
私のことをどれだけ貶しても、私は気にしませんし、泣きもしません。
──しかし、私の友達を貶すのは止めてください。
ウッカリ貴方を魂ごと壊してしまいそうですから」
いつもの黒炎と変わらない。しかし、絶対にいつもの黒炎と違う。
コンコン
扉をノックする音が聞こえた。
ガラガラガラ
先程まで全く開かなかった扉が開けられ、背の低い子が入ってきた。
おかっぱ頭に赤いスカート。
七不思議の一つ。トイレの花子さんだ。
「やっぱりここにいたのね。先生達が探していたわよ」
「…花姉さん」
黒炎がポツリと呟くように言った。
黒い空気を引っ込めた黒炎がいつもの黒炎に戻った。
花子さんは、周りをぐるりと見、状況を理解したようだ。
「はぁーー。あんたも飽きないわね。そんなに負け喧嘩をしたいわけ?いい加減にしたほうがいいと思うわよ。アリス」
花子さんが、ベートーベンに向かって言った。
ん?
アリスって誰?
もしかして、あのベートーベンの肖像画の人?
「花姉さん。『アリス』って誰ですか?」
そのことは黒炎も気になったみたいだ。
「あぁ、聞いてなかったのね。このベートーベ「言うな!!言うな!!その小娘に絶対に言うな!!!」
ベートーベンが途中で口を挟んだため、花子さんの話を最後まで聞けなかった。
「五月蝿いわね。女みたいな名前の癖にギャーギャー騒ぐんじゃないわよ。あんた、男でしょう?」
「あぁぁーーーーーーーーーーー!!!」
うん。結局言っちゃうんだね。
そして、ベートーベン…いや、アリス五月蝿い。
「えーと、改めてよろしくお願いします。アリスちゃん」
「うゎーーーーーーーーぁ!!
何故、『ちゃん』付けで呼ぶ!?」
五月蝿い。
てか、追いうちをかけたな。
「あら、良いじゃない。可愛くなったわね。名前が」
花子さん。後半明らかに煽っている。
「さて、もうそろそろ戻るわよ」
花子さんが、灰になりかけているアリスを見ながら言った。少し笑っている。
「そうですね。先生方に迷惑を掛けるのはあまり良くないですしね」
黒炎も灰になりかけているアリスを見ながら言った。
花子さんは、扉を開けた…が、そこはいつもの廊下ではなく、グチャグチャとした空間が広がっている。
「……あぁ、そう。忘れてたわ。
──リュウ。居るんでしょう?この扉の向こう元に直して」
と、コンコンと扉を叩きながら、ピアノの方を見た。
ポローン
と、独りでにピアノがなり、半透明なこの学校の制服を着た、やや長い白い髪に黒い目を持つ少年が現れた。
「あ、やっぱり僕だってバレてた?」
ピアノの音のような声だ。
「バレてるわよ。早く戻して。
まぁ、大方こいつに頼まれてだと思うけどね」
と、未だ灰のアリスを見ながら言った。
「そうだよ。
本当、コイツだけを違うところに移してよ。
五月蝿いんだよね。
まぁ、楽しめたからいいんだけどね」
リュウと呼ばれている少年もアリスをみながら言った。
「さてと…戻すんだよね」
パチンッ
と、指を鳴らした。
黒炎が扉を引くとスムーズに動いて廊下が見える。
もう一度扉を開けるといつもの廊下。
どうやら、戻ったようだ。
「じゃあ、また、遊びに来てね。
えーと、黒炎ちゃん?」
と、ひらひらと手を振って言った。
「はい。遊びに来ます。
ありがとうございました。
えーと、リュウ君とアリスちゃん」
ペコリとお辞儀をし、花子さんと共に廊下を歩いていった。
「アリスちゃんって呼ぶなぁーーーーーーーーーーーーー!!!」
灰から復活したアリスが廊下に響くほどの声で叫んだ。
「ふふふふっ。
面白いね。あの少女──黒炎と言っていたかな?
近いうちに、遊びたいね」
何処からともなく声が聞こえてくる。
男か女かよく分からない声だ。
彼──いや、彼女(?)出るのはまた次の話。
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