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出会い編
肆 二宮金次郎の場合
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学校の七不思議の一つである『動く二宮金次郎の像』。
動く二宮金次郎の像。夜な夜な校庭を駆け回ったり、歩き回ったり(たまに背負っている薪を落とすらしい)、図書館に本を借りに行くとか…取り敢えず動くらしい。
それと、これは余談。知っていても知っていなくてもどちらでも良いし、知っていたからと言って特に何か特があるわけではない。
二宮金次郎の話。
二宮金次郎または、二宮尊徳。
全部話すと長くなるし、めんどくさいから掻いつ摘んで説明しよう。
災害によって貧しくなった生家を努力で再興させ、自分の家だけではなく、他家や貧しい村々の救済を行い功績を上げた。その功績が認められて幕府の役人になった。
と、いうものである。
何故、小学校とかに建てられることが多いかというと、明治政府の政策によってらしい。
でも、要するに『二宮金次郎のようにひたすら勉強をしてして出世できるようにしろ』と、いうことだろう。
歩きスマホを連想させるため、最近の学校には撤去されてあまり置かれていないようだが。
勿論、黒炎の通っている瑞獣学校には建てられている。まぁ、本当に隅の木とかの影になってあまり生徒に見られていないし、人気もないようだが。
「柴刈り 縄ない 草鞋をつくり」
パンッ
「親の手を助け 弟を世話し」
パンッ
「兄弟仲良く孝行をつくす」
パンッ
「手本は二宮金次郎」
パンッ パンッ パンッ
「骨身を惜しまず 仕事を励み」
パンッ
「夜なべ済まして 手習い読書」
パンッ
「せわしい中にも撓まず学ぶ」
パンッ
「手本は二宮金次郎」
パンッ パンッ パンッ
「家業大事に 費をはぶき」
パンッ
「少しの物をも粗末にせずに」
パンッ
「遂には身を立て 人をもすくう」
パンッ
「手本は二宮金次郎」
パンッ パンッ パンッ
校庭の滅多に人の来ない人気のない場所。
その校庭の一角にある場所から歌と手を叩く音が聞こえてくる。
木に囲まれていて、一見見ただけでは誰も気がつかないであろう場所。まるで秘密基地みたいだ。
よくよく聞いてみると二宮金次郎の歌だということが分かる。
鈴を鳴らしたような高くて、弱く、凛とした声だ。
声の主は
──黒炎である。
そして、手を叩いているのは一度は写真でも見たことがある物
──二宮金次郎の像である。
うん。可笑しいよね。
そもそも、最近の小学生が二宮金次郎の歌を歌っているのだってかなり違和感があるのにそばに動く二宮金次郎の像がいるのだ。動くという点では人体標本のエスケレートことケレートと一緒だけれども、何か像だとまた、何か違った違和感が出てくる。
何故、このような異様な状況になっているのかというのを説明するには少し、時間を遡らないといけない。
その日は黒炎が図書当番であった。
瑞獣学校の図書館は流石小・中・高、集まっているからか、かなり広い。
──が、全くと言っていいほど人が来ない。
何故か瑞獣学校に通っている人はアウトドア系でかなり活発な人ばかり集まるからだ。
ついでに言うと黒炎は、図書委員の委員長だ。
その日も先生に頼まれていたことや次の委員会の準備、本の整理…など休みなく働いていた。
ガラガラガシャーン
静かで時計の針の音しか聞こえない空間で急に大きな音が響いた。
何やら本を大量に落としたような音だ。
黒炎は、耳をピクッと動かし、やっていた作業を一時中断させて、音が聞こえた方向に足を進めた。
「…今日は誰も来ていなかったはずでしたが……」
一つしかない扉の近くにずっといて作業をしていた黒炎が誰かが来たことに気がつかないわけない。
考えられることは不法侵入者か猫か何かが迷いこんで本棚の本を落としたというところだろう。
しかし、その予想とはかなり違った。
音がしたところにいたのは(気がついている人もいると思うが)、
二宮金次郎(の像)だ。
「………」
「………」
二人が見つめ合うこと約三分。
先に動いたのは黒炎だ。
落ちていた一冊の本を手に取り、二宮金次郎(の像)の前に差し出す。
「あの、その本借りますか……?」
いや、違う。違うんだ。
悲鳴をあげたり、何故、此所にいるのかを聞くのかをした方がいいと思う。…まぁ、黒炎は、そんなことをしないか。
「……あの。聞こえていますか?」
黒炎は、返事がないため、いまだに落とした本の中心にいてメドゥーサに会って石にされたように固まっている二宮金次郎(の像)にもう一度呼び掛けた。
「-------!!」
ハッと目が覚めたように手を振り、『聞こえているよ』という、手振りで伝えている。
「話せないんですか?」
いや、像って口動かないから話せないと思うよ。
「---」
どうやら話せないらしい。
「この本借りますか?」
「---、-----」
「分かりました。この本とかだとこの本もおすすめですよ」
「---」
ちゃっかり、おすすめの本もすすめている。
「・・・そうですか。良いですよねこの本」
「----!」
会話成り立つの?
…うん。もう何も言わない。
この事が切っ掛けで二人は仲良くなった。
そして、今のように歌を歌ったり、勉強を教えてくれたりする。
二宮金次郎は、教えるのが冗談抜きで上手い。教えかたが的確なのだ。黒炎も習えばある程度出来るが、難しい問題があった場合はこうして教えてもらっている。
教えるときは、手振りだけでなく紙に説明を書いてくれたりしてくれる。
…ただ、凄く達筆だ。黒炎は読めるらしいが、ボクは読めない。
「金次郎君。金次郎君。ここはどう解くんですか?」
「-----。----、----------」
「……あぁ、なるほど。ありがとうございます」
風で揺れる木に囲まれながら今日も黒炎は、二宮金次郎に会いに行き、勉強を教えてもらったりしている。
動く二宮金次郎の像。夜な夜な校庭を駆け回ったり、歩き回ったり(たまに背負っている薪を落とすらしい)、図書館に本を借りに行くとか…取り敢えず動くらしい。
それと、これは余談。知っていても知っていなくてもどちらでも良いし、知っていたからと言って特に何か特があるわけではない。
二宮金次郎の話。
二宮金次郎または、二宮尊徳。
全部話すと長くなるし、めんどくさいから掻いつ摘んで説明しよう。
災害によって貧しくなった生家を努力で再興させ、自分の家だけではなく、他家や貧しい村々の救済を行い功績を上げた。その功績が認められて幕府の役人になった。
と、いうものである。
何故、小学校とかに建てられることが多いかというと、明治政府の政策によってらしい。
でも、要するに『二宮金次郎のようにひたすら勉強をしてして出世できるようにしろ』と、いうことだろう。
歩きスマホを連想させるため、最近の学校には撤去されてあまり置かれていないようだが。
勿論、黒炎の通っている瑞獣学校には建てられている。まぁ、本当に隅の木とかの影になってあまり生徒に見られていないし、人気もないようだが。
「柴刈り 縄ない 草鞋をつくり」
パンッ
「親の手を助け 弟を世話し」
パンッ
「兄弟仲良く孝行をつくす」
パンッ
「手本は二宮金次郎」
パンッ パンッ パンッ
「骨身を惜しまず 仕事を励み」
パンッ
「夜なべ済まして 手習い読書」
パンッ
「せわしい中にも撓まず学ぶ」
パンッ
「手本は二宮金次郎」
パンッ パンッ パンッ
「家業大事に 費をはぶき」
パンッ
「少しの物をも粗末にせずに」
パンッ
「遂には身を立て 人をもすくう」
パンッ
「手本は二宮金次郎」
パンッ パンッ パンッ
校庭の滅多に人の来ない人気のない場所。
その校庭の一角にある場所から歌と手を叩く音が聞こえてくる。
木に囲まれていて、一見見ただけでは誰も気がつかないであろう場所。まるで秘密基地みたいだ。
よくよく聞いてみると二宮金次郎の歌だということが分かる。
鈴を鳴らしたような高くて、弱く、凛とした声だ。
声の主は
──黒炎である。
そして、手を叩いているのは一度は写真でも見たことがある物
──二宮金次郎の像である。
うん。可笑しいよね。
そもそも、最近の小学生が二宮金次郎の歌を歌っているのだってかなり違和感があるのにそばに動く二宮金次郎の像がいるのだ。動くという点では人体標本のエスケレートことケレートと一緒だけれども、何か像だとまた、何か違った違和感が出てくる。
何故、このような異様な状況になっているのかというのを説明するには少し、時間を遡らないといけない。
その日は黒炎が図書当番であった。
瑞獣学校の図書館は流石小・中・高、集まっているからか、かなり広い。
──が、全くと言っていいほど人が来ない。
何故か瑞獣学校に通っている人はアウトドア系でかなり活発な人ばかり集まるからだ。
ついでに言うと黒炎は、図書委員の委員長だ。
その日も先生に頼まれていたことや次の委員会の準備、本の整理…など休みなく働いていた。
ガラガラガシャーン
静かで時計の針の音しか聞こえない空間で急に大きな音が響いた。
何やら本を大量に落としたような音だ。
黒炎は、耳をピクッと動かし、やっていた作業を一時中断させて、音が聞こえた方向に足を進めた。
「…今日は誰も来ていなかったはずでしたが……」
一つしかない扉の近くにずっといて作業をしていた黒炎が誰かが来たことに気がつかないわけない。
考えられることは不法侵入者か猫か何かが迷いこんで本棚の本を落としたというところだろう。
しかし、その予想とはかなり違った。
音がしたところにいたのは(気がついている人もいると思うが)、
二宮金次郎(の像)だ。
「………」
「………」
二人が見つめ合うこと約三分。
先に動いたのは黒炎だ。
落ちていた一冊の本を手に取り、二宮金次郎(の像)の前に差し出す。
「あの、その本借りますか……?」
いや、違う。違うんだ。
悲鳴をあげたり、何故、此所にいるのかを聞くのかをした方がいいと思う。…まぁ、黒炎は、そんなことをしないか。
「……あの。聞こえていますか?」
黒炎は、返事がないため、いまだに落とした本の中心にいてメドゥーサに会って石にされたように固まっている二宮金次郎(の像)にもう一度呼び掛けた。
「-------!!」
ハッと目が覚めたように手を振り、『聞こえているよ』という、手振りで伝えている。
「話せないんですか?」
いや、像って口動かないから話せないと思うよ。
「---」
どうやら話せないらしい。
「この本借りますか?」
「---、-----」
「分かりました。この本とかだとこの本もおすすめですよ」
「---」
ちゃっかり、おすすめの本もすすめている。
「・・・そうですか。良いですよねこの本」
「----!」
会話成り立つの?
…うん。もう何も言わない。
この事が切っ掛けで二人は仲良くなった。
そして、今のように歌を歌ったり、勉強を教えてくれたりする。
二宮金次郎は、教えるのが冗談抜きで上手い。教えかたが的確なのだ。黒炎も習えばある程度出来るが、難しい問題があった場合はこうして教えてもらっている。
教えるときは、手振りだけでなく紙に説明を書いてくれたりしてくれる。
…ただ、凄く達筆だ。黒炎は読めるらしいが、ボクは読めない。
「金次郎君。金次郎君。ここはどう解くんですか?」
「-----。----、----------」
「……あぁ、なるほど。ありがとうございます」
風で揺れる木に囲まれながら今日も黒炎は、二宮金次郎に会いに行き、勉強を教えてもらったりしている。
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