天使と悪魔

天界湊

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第一章

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死ねばいい。
その言葉で僕は死んだ。これは僕が死んでからの物語だ。

おはよう!
いつもの日差しが眩しくて僕は目覚める。A.M14:30。彼女の笑顔は眠そうに笑う。呑んだくれた僕の喉を癒そうとせかせかと水を運ぶ。
「あのさ…」
ありがとうと言おうとした瞬間だった。彼女が振り返る。セミロングに伸びた髪はまだ少しうねっている。微笑ましく笑顔になるはずの顔は強張った。
「何?」
さきほどまでの笑顔は消え死体の様に冷たい眼差しと薄青白い肌、鮮やかな花柄のワンピースは白いユリの花に変わっていた。
開いた窓の空気は軽い。カラスが遠くで鳴いている。僕は全ての思考を止めようとした。言葉も出ない。「白いユリの花は~♪あなたにあげるの~♪良い時も悪い時も一緒にいれたらいいね」
彼女は僕の顔を見ながら歌い始める。最後の一言は昔僕が言った言葉だ。良い時も悪い時も一緒にいれたらいいね。吐き捨てる様に歌は終わる。
その後彼女はキッチンの壁を見つめたままため息をつく。
異様なまでの恐ろしさは消え寂しい感情が僕の中で渦を巻く。
「どうして…」
今度出た言葉は詰まる。続きが分からない。僕は何て言おうとしたのか?
その瞬間彼女に羽が生え始める。灰色の羽が背の傍から伸びていく。
「ひどいよ…」
彼女は呟き泣き崩れる。この言葉には聞き覚えがある。僕はよくこの言葉を吐いた。
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