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不遇な水魔法使い
16話 サヨナキドリのなく頃に
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通りを歩いていると、向こうからこちら側へやってくる人の流れの中に、変わった服装の少女の姿が目に留まった。元の世界ならコスプレとして少し感心する程度だが、この世界では前の常識は通用しない。
その少女は修道女——シスターだった。美しい白銀の長い髪を揺らしながら歩き、端正な顔立ちをしているが、目を閉じたままでいる。それでは危ないのではと心配しながら見ていたが、人とぶつかる様子もなく危なげなしに悠々と歩みを進めていた。
「すごいな、あれって本職だよな。本物のシスターなんて初めて見た」
俺は小声で呟いた。「あれで目は見えているのか?」
そう関心したのもつかの間、
コテンッ!
その瞬間、シスターは派手に転んだ、どうやら石につまずいたらしい。人の流れは見えていても足元までは見えていなかったようだ。
目の前で転ばれたのに素通りするのは人道に反する。俺は咄嗟にその少女に駆け寄り、手を貸そうとした。
「お、おい。君、大丈夫か?」
「あう……痛いのです」少女は幼い声で言った。
地面におでこからいったせいか額にかすり傷ができている。その少女は涙目を浮かべながら額にてを当てながら体を起こしてこちらを向いて目が合う。吸い込まれそうになるほど深淵な紫紺の瞳をしていた、思わず心を奪われそうになるが、それを阻止したのはその下の口元から発せられた可愛らしい声だった
「あう、ありがとうなのです、大丈夫なのですよ」
まだ少し腰が抜けているようで手を貸そうと、俺は彼女の手を取り、立ち上がらせようとした瞬間——
ポロッ
握った彼女の手が、腕ごと落ちたのだ。肩からぶらんと外れ、握った手が無機質に見える。なぜ腕が?腕とは握ると外れるものだったか。
「ごごご、ごめん。う、うううう腕が!?」俺は驚愕し、動揺した声を上げた。それとは対照的に面倒くさそうな表情をする少女。
「あ、落ちてしまいましたか」シスターは平然と言った。
「ありがとうなのです、心配しなくていいのですよ。これはただの義手ですから」
彼女はため息をつき、
「……別にこんなの物必要ないと言ったのにジルは本当に余計なお世話なのですよ」と小さく呟いた。
「えっ、義手!?」俺は戸惑いながらも納得しようとした。
「な、なんだ、そうなのか。立てるか?もう片方の手を貸すよ」
そう言ってもう片方の彼女の手に手を貸そうとしたが——
ポロッ
残った腕も落ちてしまった。袖からスルスルと義手が落ち地面に腕二本が転がる、傍から見たら猟奇殺人の現場だろう。
「え、えええ!?もう片方も!?」
俺は落ちた腕を拾い上げて目を丸くする。
「あう、こっちの固定が上手くいってなかったのです」少女は困ったように言ったが、すぐに「心配無いのですよ」と付け加えた。
仰天し、唖然とする俺を尻目に、無腕の少女は器用に重心の位置を保って楽々と立ち上がった。その明らかに何も入っていない袖でありながら、平然とする 彼女と、俺の両手に持つ彼女の腕を見比べる。
「両腕がない……大丈夫なのか?」
「大丈夫って言いましたですよ」少女は微笑んだ。「慣れたら平気なのです。あう——」
「——お嬢様!」
突如として叫び声が響き、長身の修道士が現れた。フランさんと同じ金髪の髪を後ろで結んだその青年は、凄い形相でシスターの背後からこちら側へ全速力で走ってくる。がっちりとした体形の男が猛スピードで駆けるさまに、周囲の人々は驚きながらも道を開けた。
「お嬢、大丈夫ですか!?」彼は少女に駆け寄ると、次の瞬間には敵意に満ちた視線で俺を睨みつけた。
「ん、貴様その義手は何だ!まさかお嬢様に危害を……!」
素敵な誤解をした彼は、担いでいた布袋に手を伸ばした。布から取り出されたのは、棒の柄先に反りのある刀身がついた武器——薙刀だった。刃の根本には赤く輝く宝石が埋め込まれている。明らかに金属器だ。ということは彼も魔法使いなのだろうか。
「ちょ、ちょっと待ってください!」俺は両手を上げて必死に叫んだ。
「誤解です!」
「……誤解?」男は薙刀を構えたまま眉を寄せる。
「何を言う」
「ジル、物騒なものはしまうのです」シスターが鋭く命じた。
「彼は石につまずいたボクを助けようとしただけなのです。その時に義手が取れてしまったのです」
彼女は不満そうに付け加えた。「あう、ジルがこんなもの付けろとか言うからですよ」
「外出なされるなら、人目がありますから付けてもらわないと困ります」男は目をつむり義務的に言ってから、疑わしげな目で俺を見た。
「……本当に誤解なんですか?」
俺はうんうんと何度も頷き、無言で訴える。両腕欠損のシスターはため息をつき、男を見つめた。ようやく状況を飲み込めたのか、彼は深く頭を下げた。
「申し訳ございません」彼は真摯に謝罪した。
「てっきりお嬢様が襲われたのかと思いまして。なんとお詫びしたらいいのか」
「いえいえ、大丈夫ですから頭を上げてください」俺は慌てて言った。
「このお詫びはいつか返させていただきます!」男は熱意を込めて宣言した。
「あう、ジル。しつこいのですよ」シスターは呆れたように言った。
「それにそろそろ時間なのです」
彼女は俺に向き直り、微笑んだ。「あなたも、ありがとうございます。先を急ぐので失礼しますよ」
「あ、ああ。どういたしまして」俺は少し気の抜けた返事をした。
「ほら行きますよ、ジル」少女は付き添いの男に言い。
「それではまた会いましょうなのです、カイ」と俺に告げた。
「待ってください、お嬢!義手をつけますから!」
すたすたと歩くシスターと、それを慌ただしく追いかける修道士。まるで嵐のように彼らは通り過ぎていった。
「あ、いけね」俺は我に返った。
「俺もそろそろ行かなくちゃ遅刻してしまう」
足早に歩き出しながら、ふと立ち止まって考え込んだ。
「……ん?俺、名前なんて名乗ったっけ?」
ピピピ、ピィーと鳥の声
もう夕暮れ時、その後二人と共に立ち向かう最悪についてサヨナキドリだけが知っていた。
その少女は修道女——シスターだった。美しい白銀の長い髪を揺らしながら歩き、端正な顔立ちをしているが、目を閉じたままでいる。それでは危ないのではと心配しながら見ていたが、人とぶつかる様子もなく危なげなしに悠々と歩みを進めていた。
「すごいな、あれって本職だよな。本物のシスターなんて初めて見た」
俺は小声で呟いた。「あれで目は見えているのか?」
そう関心したのもつかの間、
コテンッ!
その瞬間、シスターは派手に転んだ、どうやら石につまずいたらしい。人の流れは見えていても足元までは見えていなかったようだ。
目の前で転ばれたのに素通りするのは人道に反する。俺は咄嗟にその少女に駆け寄り、手を貸そうとした。
「お、おい。君、大丈夫か?」
「あう……痛いのです」少女は幼い声で言った。
地面におでこからいったせいか額にかすり傷ができている。その少女は涙目を浮かべながら額にてを当てながら体を起こしてこちらを向いて目が合う。吸い込まれそうになるほど深淵な紫紺の瞳をしていた、思わず心を奪われそうになるが、それを阻止したのはその下の口元から発せられた可愛らしい声だった
「あう、ありがとうなのです、大丈夫なのですよ」
まだ少し腰が抜けているようで手を貸そうと、俺は彼女の手を取り、立ち上がらせようとした瞬間——
ポロッ
握った彼女の手が、腕ごと落ちたのだ。肩からぶらんと外れ、握った手が無機質に見える。なぜ腕が?腕とは握ると外れるものだったか。
「ごごご、ごめん。う、うううう腕が!?」俺は驚愕し、動揺した声を上げた。それとは対照的に面倒くさそうな表情をする少女。
「あ、落ちてしまいましたか」シスターは平然と言った。
「ありがとうなのです、心配しなくていいのですよ。これはただの義手ですから」
彼女はため息をつき、
「……別にこんなの物必要ないと言ったのにジルは本当に余計なお世話なのですよ」と小さく呟いた。
「えっ、義手!?」俺は戸惑いながらも納得しようとした。
「な、なんだ、そうなのか。立てるか?もう片方の手を貸すよ」
そう言ってもう片方の彼女の手に手を貸そうとしたが——
ポロッ
残った腕も落ちてしまった。袖からスルスルと義手が落ち地面に腕二本が転がる、傍から見たら猟奇殺人の現場だろう。
「え、えええ!?もう片方も!?」
俺は落ちた腕を拾い上げて目を丸くする。
「あう、こっちの固定が上手くいってなかったのです」少女は困ったように言ったが、すぐに「心配無いのですよ」と付け加えた。
仰天し、唖然とする俺を尻目に、無腕の少女は器用に重心の位置を保って楽々と立ち上がった。その明らかに何も入っていない袖でありながら、平然とする 彼女と、俺の両手に持つ彼女の腕を見比べる。
「両腕がない……大丈夫なのか?」
「大丈夫って言いましたですよ」少女は微笑んだ。「慣れたら平気なのです。あう——」
「——お嬢様!」
突如として叫び声が響き、長身の修道士が現れた。フランさんと同じ金髪の髪を後ろで結んだその青年は、凄い形相でシスターの背後からこちら側へ全速力で走ってくる。がっちりとした体形の男が猛スピードで駆けるさまに、周囲の人々は驚きながらも道を開けた。
「お嬢、大丈夫ですか!?」彼は少女に駆け寄ると、次の瞬間には敵意に満ちた視線で俺を睨みつけた。
「ん、貴様その義手は何だ!まさかお嬢様に危害を……!」
素敵な誤解をした彼は、担いでいた布袋に手を伸ばした。布から取り出されたのは、棒の柄先に反りのある刀身がついた武器——薙刀だった。刃の根本には赤く輝く宝石が埋め込まれている。明らかに金属器だ。ということは彼も魔法使いなのだろうか。
「ちょ、ちょっと待ってください!」俺は両手を上げて必死に叫んだ。
「誤解です!」
「……誤解?」男は薙刀を構えたまま眉を寄せる。
「何を言う」
「ジル、物騒なものはしまうのです」シスターが鋭く命じた。
「彼は石につまずいたボクを助けようとしただけなのです。その時に義手が取れてしまったのです」
彼女は不満そうに付け加えた。「あう、ジルがこんなもの付けろとか言うからですよ」
「外出なされるなら、人目がありますから付けてもらわないと困ります」男は目をつむり義務的に言ってから、疑わしげな目で俺を見た。
「……本当に誤解なんですか?」
俺はうんうんと何度も頷き、無言で訴える。両腕欠損のシスターはため息をつき、男を見つめた。ようやく状況を飲み込めたのか、彼は深く頭を下げた。
「申し訳ございません」彼は真摯に謝罪した。
「てっきりお嬢様が襲われたのかと思いまして。なんとお詫びしたらいいのか」
「いえいえ、大丈夫ですから頭を上げてください」俺は慌てて言った。
「このお詫びはいつか返させていただきます!」男は熱意を込めて宣言した。
「あう、ジル。しつこいのですよ」シスターは呆れたように言った。
「それにそろそろ時間なのです」
彼女は俺に向き直り、微笑んだ。「あなたも、ありがとうございます。先を急ぐので失礼しますよ」
「あ、ああ。どういたしまして」俺は少し気の抜けた返事をした。
「ほら行きますよ、ジル」少女は付き添いの男に言い。
「それではまた会いましょうなのです、カイ」と俺に告げた。
「待ってください、お嬢!義手をつけますから!」
すたすたと歩くシスターと、それを慌ただしく追いかける修道士。まるで嵐のように彼らは通り過ぎていった。
「あ、いけね」俺は我に返った。
「俺もそろそろ行かなくちゃ遅刻してしまう」
足早に歩き出しながら、ふと立ち止まって考え込んだ。
「……ん?俺、名前なんて名乗ったっけ?」
ピピピ、ピィーと鳥の声
もう夕暮れ時、その後二人と共に立ち向かう最悪についてサヨナキドリだけが知っていた。
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