50 / 86
追加エピソード
第16話:唯一無二
しおりを挟む
*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*
風呂から上がり、少し気不味い気持ちでリビングに戻ると、テレビを見ていた龍之介が顔を上げた。
「ね、寝る?」
「ん」
いつものやり取りのはずなのに、何故か緊張して声がうわずってしまう。幸い龍之介は早く眠りたいからか、細かいことには気付いていない。
連れ立って寝室に入り、同じベッドに入る。
先程のこともあって、謙太は端のほうで横になった。新しいベッドは広い。端に寄れば、間には大人一人分の隙間が出来る。
「なんでそんな隅っこで寝んの」
「……なんとなく」
「ふぅん?」
そう尋ねながら、龍之介は既に寝落ちそうになっていた。昨夜は離れて眠る練習をするために仕事部屋で寝ようとして失敗し、結局数時間しか眠れていないのだ。早く眠りたくて謙太の帰りを待ち侘びていた。
今にも寝そうな龍之介を横目に見ながら、謙太は小さく息をついた。
親友で興奮して勃った事実が後ろめたくて、龍之介をまともに見られなくなった。何故今まで平気でいられたのか分からなくなるほど意識してしまう。
数時間しか眠れていないのは同じなのに、謙太は寝付けずにいた。飲み会の酔いもすっかり醒めている。
すうすうと規則正しい寝息が聞こえてくるまでにそう長くは掛からなかった。完全に龍之介が眠ったのを確認してから、謙太はそっとベッドから降りた。音を立てないように寝室を出てリビングのソファーに座り込み、頭を抱える。
「……あー、ダメだ。寝れん」
あの件以降、龍之介と一緒の時だけ安眠できた。それは、自分は一人じゃないと安心できたからだ。文句を言いながらも必ず謙太を助けてくれる。友人はたくさんいるが、本当に困った時に頼れる存在は龍之介だけ。
唯一無二の親友。
その大事な親友相手に欲情してしまった。
ただでさえも個人的な面倒ごとに巻き込み、その後もこうしてマンションに転がり込んで迷惑を掛けている。今はお互いの利害が一致しているから許されているが、流石にコレは駄目だ。
幸い仕事部屋にもベッドがある。
今夜はそこで過ごそうかと思った時、寝室の扉がバン!と勢いよく開いた。
「り、リュウ」
眠そうな目を擦りながら、龍之介が起きてきた。隣にいたはずの謙太がいないことに気付いたのだろう。不機嫌そうにソファーに座る謙太を見下ろしている。
「……何やってんだ」
「いや」
「頭が痛いのか?」
「う、うん」
頭を抱えているからそう見えたようだ。正直に言うわけにもいかず、謙太は龍之介の言葉を肯定した。
「飲み過ぎだ、ばぁか」
鼻で笑いながらも、龍之介は引き出しから薬を取り出し、謙太に差し出した。鎮痛剤かと思ったら湿布薬の箱だ。どうやら寝ボケて間違えたようだ。そんな状態なのに気遣ってくれたことが嬉しくて、間違いを指摘せず、礼を言ってから台所で飲むふりをした。
「ほら、早く寝るぞ」
手を引かれて寝室に連れ戻される。
いつもは一緒に寝ることを避けたがっている龍之介の真逆の行動に謙太は動揺を隠せなかった。せめて再び端で寝ようとするが、ベッドに入ってからも龍之介は離れない。身体を強張らせる謙太の顔を覗き込む。
「まだ痛むのか?」
「あ、ああ」
「よしよし、大丈夫だからな」
そう言って正面から謙太の身体を抱き、龍之介は頭を優しく撫でた。そして、そのまますぐに寝入ってしまった。
昼間甥っ子を預かっていた影響で子どもをあやすような口調になっている。そうとは知らない謙太はただ驚くばかりだったが、体温の心地良さに負けて眠りについた。
風呂から上がり、少し気不味い気持ちでリビングに戻ると、テレビを見ていた龍之介が顔を上げた。
「ね、寝る?」
「ん」
いつものやり取りのはずなのに、何故か緊張して声がうわずってしまう。幸い龍之介は早く眠りたいからか、細かいことには気付いていない。
連れ立って寝室に入り、同じベッドに入る。
先程のこともあって、謙太は端のほうで横になった。新しいベッドは広い。端に寄れば、間には大人一人分の隙間が出来る。
「なんでそんな隅っこで寝んの」
「……なんとなく」
「ふぅん?」
そう尋ねながら、龍之介は既に寝落ちそうになっていた。昨夜は離れて眠る練習をするために仕事部屋で寝ようとして失敗し、結局数時間しか眠れていないのだ。早く眠りたくて謙太の帰りを待ち侘びていた。
今にも寝そうな龍之介を横目に見ながら、謙太は小さく息をついた。
親友で興奮して勃った事実が後ろめたくて、龍之介をまともに見られなくなった。何故今まで平気でいられたのか分からなくなるほど意識してしまう。
数時間しか眠れていないのは同じなのに、謙太は寝付けずにいた。飲み会の酔いもすっかり醒めている。
すうすうと規則正しい寝息が聞こえてくるまでにそう長くは掛からなかった。完全に龍之介が眠ったのを確認してから、謙太はそっとベッドから降りた。音を立てないように寝室を出てリビングのソファーに座り込み、頭を抱える。
「……あー、ダメだ。寝れん」
あの件以降、龍之介と一緒の時だけ安眠できた。それは、自分は一人じゃないと安心できたからだ。文句を言いながらも必ず謙太を助けてくれる。友人はたくさんいるが、本当に困った時に頼れる存在は龍之介だけ。
唯一無二の親友。
その大事な親友相手に欲情してしまった。
ただでさえも個人的な面倒ごとに巻き込み、その後もこうしてマンションに転がり込んで迷惑を掛けている。今はお互いの利害が一致しているから許されているが、流石にコレは駄目だ。
幸い仕事部屋にもベッドがある。
今夜はそこで過ごそうかと思った時、寝室の扉がバン!と勢いよく開いた。
「り、リュウ」
眠そうな目を擦りながら、龍之介が起きてきた。隣にいたはずの謙太がいないことに気付いたのだろう。不機嫌そうにソファーに座る謙太を見下ろしている。
「……何やってんだ」
「いや」
「頭が痛いのか?」
「う、うん」
頭を抱えているからそう見えたようだ。正直に言うわけにもいかず、謙太は龍之介の言葉を肯定した。
「飲み過ぎだ、ばぁか」
鼻で笑いながらも、龍之介は引き出しから薬を取り出し、謙太に差し出した。鎮痛剤かと思ったら湿布薬の箱だ。どうやら寝ボケて間違えたようだ。そんな状態なのに気遣ってくれたことが嬉しくて、間違いを指摘せず、礼を言ってから台所で飲むふりをした。
「ほら、早く寝るぞ」
手を引かれて寝室に連れ戻される。
いつもは一緒に寝ることを避けたがっている龍之介の真逆の行動に謙太は動揺を隠せなかった。せめて再び端で寝ようとするが、ベッドに入ってからも龍之介は離れない。身体を強張らせる謙太の顔を覗き込む。
「まだ痛むのか?」
「あ、ああ」
「よしよし、大丈夫だからな」
そう言って正面から謙太の身体を抱き、龍之介は頭を優しく撫でた。そして、そのまますぐに寝入ってしまった。
昼間甥っ子を預かっていた影響で子どもをあやすような口調になっている。そうとは知らない謙太はただ驚くばかりだったが、体温の心地良さに負けて眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る
112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。
★本編で出てこない世界観
男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
ユッキー
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
