【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

文字の大きさ
59 / 86
追加エピソード

第25話:引き止める手段

しおりを挟む
*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*


 告白して以来、龍之介りゅうのすけの様子が少しおかしくなっていることに謙太けんたは気付いていた。

 普通に会話もするし、よく笑う。
 だが、謙太が触れようとすると一瞬身体を硬くする。そして、その後は何事もなかったように振る舞う。

 その僅かな反応に気付いてからは少しスキンシップを控えた。夜に寝る時も極力触れずに添い寝するだけ。
 それが却って龍之介を不安にさせていた。

「……なあ、なんもしねーの?」

 数日後、とうとう龍之介の方から尋ねてきた。
 恥ずかしいのか、背を向けた状態だ。
 同じベッドで横になっている時にそんな風に問われれば、誘われているのかと勘違いしてしまう。逸る気持ちを抑え、謙太は平常心を保った。

「したくないといえば嘘になるけど」
「そう、なんだ」
「……」
「……」

 しばらく無言が続く。
 顔が見えないからどんなつもりで聞いてきたのかが分からず、謙太は龍之介の肩に手を伸ばした。
 指先が触れた瞬間、ビクッと大きく身体が揺れ、謙太は思わず手を離した。

「リュウ?」
「……ビックリしただけだから」

 少し震えた声とその様子から、龍之介が警戒をしているのが分かった。
 誘っているだなんてとんでもない。その逆で、同じベッドにいるだけで緊張させてしまっているのだ。

「リュウ、こっち向いて」
「断る」
「頼むから、なあ」
「やめろって」

 再び肩に手を掛けると、今度は腕を振り上げてそれを払った。拒絶とも取れるその態度に、謙太は怯んだ。龍之介も過剰な態度を取ったことに気付き「ごめん」とすぐに謝罪した。

「……悪い。ちょっとまだ気持ちの整理がついてなくて」

 離れたままだが、龍之介はようやく謙太のほうに身体を向けた。目線は合わないようにわざと逸らされている。

「いや、オレが悪い。追い出されずに一緒に居られるだけで嬉しいのに、つい欲張り過ぎた」
「今更追い出さねーよ」

 謙太が自分の意志で出て行くならともかく、龍之介から追い出そうとは今は考えていない。

「でも、抵抗あるんだろ抱かれるの」
「そりゃ普通ヤだろ。だから、抱く側ならいけねーかなと考えたんだけど」
「うん……、うん?」
「色々想像してみたけど、やっぱ男相手じゃ勃ちそうもなくてな……」
「……そうか」

 それを聞いて、謙太は心の底から安堵した。身勝手な話だが、自分が抱かれる側に回る可能性など微塵も予想していなかったからだ。

「一緒にいるなら、いつかはそういうこともするんだろうけど……その、覚悟が決まらなくて……」

 申し訳なさと恥ずかしさで、龍之介の声はどんどん小さくなっていく。

「そんなに思い詰めなくても」
「でも、セックス出来ない相手なんかめんどくさいだけだろ。それでおまえがどっか行くくらいなら、俺は」

 謙太は龍之介の考えていることを理解した。
 そして、そこまで言わせてしまったことを恥じた。

「リュウに無理させたいわけじゃない。だから、オレを引き止めるためだけ・・に抱かれようとしないでくれ」
「ケンタ……」

 相手に我慢を強いていると互いが感じていた。

「……あのな、俺もケンタが好きなんだ。おまえが女の人と歩いてるとこ見るとモヤモヤするし、いないと寂しいし、一緒にいると楽しいから。多分、おまえと同じ意味で」

 それを聞いて、謙太はじわりと胸の奥が熱くなるのを感じた。好きな相手に必要とされる幸福。

「……はー、結婚したい……」
「おまえは離婚したばっかだろ」

 思わず漏らした言葉に、龍之介が呆れたように笑った。それは久しぶりに見た自然な笑顔で、謙太は更に感極まってしまった。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

ユッキー
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

処理中です...