【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

文字の大きさ
65 / 86
追加エピソード

第31話:解決法

しおりを挟む
*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*


「いま、なんて?」




 とんでもないことをサラリと言われた気がして、謙太けんたはすぐに聞き返した。

「だから、寧花ねいかさんにも立場ってもんがあるだろ? ただでさえも向こうの親からの心証が良くないんだ。いつまでも元ダンナのおまえと連絡取り合ってたらマズいだろ」
「あ、ああ」
「それに、彼氏……陽色ひいろの父親だって不安に思うはずだ。今はともかく、あっちが入籍した後まで直接やり取りを続けるのは良くない」
「……確かに」

 龍之介りゅうのすけが考えていたのは、寧花の今後のことだった。離婚後に参っているのは知っていた。だから、少しでも助けになる存在を作ってほしかった。
 今回、偶然妹の朱音あかねが近くに住んでいたから紹介し、彼女が一人で悩まないようにした。

 母親を精神的に支えることは子どもを守ることに繋がる。全ては陽色のため。

 こういった配慮が謙太には出来ない。それどころか、言われて初めて気付いたくらいだ。

「色々ありがとな、リュウ」
「別に。勝手にやったことだ」

 礼を言われ、龍之介は照れ臭そうに顔を逸らした。その頬に手を当て、無理やり顔を自分の方へと向けさせる。謙太は鈍いが、龍之介がまた・・思い悩んでいることだけは分かった。

「──で、さっき、オレがいなくなる前提で話しただろ」
「そんなことは」
「誤魔化すなよ。酔って口が滑ったのか?」
「……」

 正面から向き合っているにも関わらず、龍之介は頑なに目を合わせようとしない。以前の謙太なら聞き逃していた程度の言葉だが、今は違う。




『もしおまえがいなくなっても』




 確かに龍之介はそう言った。

「好きだって言ったよな?」
「……」
「おまえも好きだって言ってくれたよな?」
「……ああ」

 詰め寄られ、目を逸らしたまま龍之介は小さく応えた。

「それなのに、まだオレがどっか行くと思ってんの?」
「……」

 無言の肯定。
 龍之介は謙太を切り捨てることを諦めてはいなかった。取り返しがつかなくなる前に手放す気でいた。

「なんでだよ。おまえ、オレがいなきゃ眠れないだろ。一人じゃ嫌だってあれほど」

 確かにそうだった。
 謙太が龍之介の部屋に転がり込んできてからは、寂しさを自覚したせいで一緒でないと眠れなくなった。

 でも、解決する方法を見つけてしまった。

「最初からコレに頼っておけば良かったんだよな」

 そう言いながら龍之介は謙太の手を払い除けて立ち上がり、リビングの片隅に置かれていた紙袋を持ってきた。

「この前風邪ひいたとき市販薬で眠れたんだ。まあ、夢見は良くなかったけどな。だから、病院でちゃんとした薬を処方してもらった」

 紙袋の中身は睡眠薬だった。

「おまえに頼らなくてもこれで眠れる」
「……え?」
「おまえもが見つかるまで飲めばいい。いつでもここから出て行けるように」

 差し出された紙袋を一旦受け取り、中身を確認する。錠剤のシートがたくさん入っている。まだ使われた形跡はない。

「次ってなんだよ」
「俺と居ても未来さきがないだろ」

 普段なら適当に誤魔化していたところだが、今日の龍之介は酔っているせいか素直に心の内を吐き出している。言わなくても良い事まで。

「おまえがいないと陽色の情報が入らなくなる。俺は無関係な他人だからな。それもあって、おまえと縁を切りたくなかった。これからは朱音から写真とか送ってもらえるから、もういい」
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

ユッキー
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

処理中です...