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第30話:繋がり
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*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*
謙太から一方的に迫られ流されるばかりだった現状を変えるため、龍之介は行動を起こした。
要は主導権を握ればいい。
セックスの相手を務める気はさらさらないが、謙太が嫌いなわけではない。このまま同居を続けるためにはある程度の歩み寄りは必須。
その妥協点として、欲求発散のため文字通り手を貸すことにした。定期的に抜いてやればこれ以上の行為を求められることはないだろう、というのが龍之介の目論見だった。
しかし、想定外のことが起きた。
親友に対して性的に反応してしまった。二年前のあの件以降ほぼ枯れていて、そういった欲は自分にはもう無いと思い込んでいた。そのはずだった。
「……まずいな」
洗面所から出て寝室に戻る途中、キッチンのカウンターに飾られた小さな額が視界に入った。陽色の写真だ。寧花から送ってもらった写真をプリントして追加で飾っていた。
謙太が時々その額を手に取って眺めているのを龍之介は知っている。
龍之介は謙太を通じて寧花に連絡を取った。
次の週の平日昼間、駅前にあるカフェで待ち合わせ、約束の時間より少し早い時間に合流する。ここは龍之介が住んでいるところから電車で一時間ほど離れた町だ。
寧花は陽色を連れてきていた。
久しぶりに見た陽色は相変わらず可愛くて、龍之介はそれだけで嬉しくなった。
「纏さん、その節は大変お世話にになりました。きちんとお礼も言えないままですみませんでした」
顔を合わせるなり、寧花は深々と頭を下げた。抱っこ紐の中の陽色が逆さになりかけ、慌てて頭を上げさせる。
「お礼とか言われるようなことしてないから。それより、今は実家じゃなくて彼氏と住んでるんだよね?」
「はい、この市内に」
「ちょうど良かった」
「え?」
待ち合わせ時間ぴったりにカフェに飛び込んできたのは朱音だった。彼女は下の子を抱っこした状態で店内をキョロキョロ見回し、龍之介の姿を見つけて駆け寄ってきた。
「龍兄、おまたせー!」
「ま、纏さん、この方は?」
「これは俺の妹の朱音」
「どーも、はじめまして!」
「は、はあ……」
朱音は龍之介の隣の席にどかっと座り、店員を呼んで飲み物を注文した。向かいに座る寧花は事態が飲み込めず、ポカンと口を開けている。
「偶然だけど、うちの妹もこの市内に住んでるんだ。新しい土地でイチからママ友作るの大変だろうから紹介しようと思って」
「よろしく~! ちなみにどの辺?」
「あ、ええと、□□町の……」
「校区は違うけど割と近いねー!」
勢いに押され気味だったが、子どもの月齢が近いこともあり、寧花は朱音とすぐ打ち解けた。
「ありがとうございます。初めての場所で、まだ知り合いとか誰もいなくて心細かったんです」
「わかるー、私も一人目の時そうだったもん! 連絡先交換しよ。色々教えるから!」
「は、はいっ!」
早速二人は情報を交換し始め、その間龍之介が子どもたちの相手をすることになった。久々に陽色を抱っこして、あたたかくて柔らかな感触を堪能した。
「妹さんと寧花がママ友に?」
「そ。たまたま同じ市内に住んでたから紹介した。タイプは違うけど仲良くやれそうだよ」
「そっかー、そんなら良かった」
風呂上がりの晩酌中、今回の件を謙太に報告すると安心したように表情を綻ばせた。
「あれ以来ずっと沈んでて、それどころじゃなかったみたいでさー」
「だろうな。そんな感じだった」
寧花は謙太と結婚していた頃、育児サークルに通うなどしてママ友を作っていた。だが、それでも連絡先を交換するまでに至っていない。
単なる顔見知りから更に仲良くなるには、多少強引にでも距離を詰めてくる相手でなくてはならない。
例えば、朱音のような。
「でも、まさかリュウが妹さんを紹介するとは思わなかったよ」
グラスを傾けながら謙太が笑った。
龍之介から『寧花と会って話がしたい』と言われた時には意図が分からず混乱した。だが、その理由は環境が変わった寧花に対するアフターケアのようなものだった。
「寧花さんと朱音が繋がってれば、もしおまえがいなくなっても陽色の情報が入ってくるからな」
「…………は?」
謙太から一方的に迫られ流されるばかりだった現状を変えるため、龍之介は行動を起こした。
要は主導権を握ればいい。
セックスの相手を務める気はさらさらないが、謙太が嫌いなわけではない。このまま同居を続けるためにはある程度の歩み寄りは必須。
その妥協点として、欲求発散のため文字通り手を貸すことにした。定期的に抜いてやればこれ以上の行為を求められることはないだろう、というのが龍之介の目論見だった。
しかし、想定外のことが起きた。
親友に対して性的に反応してしまった。二年前のあの件以降ほぼ枯れていて、そういった欲は自分にはもう無いと思い込んでいた。そのはずだった。
「……まずいな」
洗面所から出て寝室に戻る途中、キッチンのカウンターに飾られた小さな額が視界に入った。陽色の写真だ。寧花から送ってもらった写真をプリントして追加で飾っていた。
謙太が時々その額を手に取って眺めているのを龍之介は知っている。
龍之介は謙太を通じて寧花に連絡を取った。
次の週の平日昼間、駅前にあるカフェで待ち合わせ、約束の時間より少し早い時間に合流する。ここは龍之介が住んでいるところから電車で一時間ほど離れた町だ。
寧花は陽色を連れてきていた。
久しぶりに見た陽色は相変わらず可愛くて、龍之介はそれだけで嬉しくなった。
「纏さん、その節は大変お世話にになりました。きちんとお礼も言えないままですみませんでした」
顔を合わせるなり、寧花は深々と頭を下げた。抱っこ紐の中の陽色が逆さになりかけ、慌てて頭を上げさせる。
「お礼とか言われるようなことしてないから。それより、今は実家じゃなくて彼氏と住んでるんだよね?」
「はい、この市内に」
「ちょうど良かった」
「え?」
待ち合わせ時間ぴったりにカフェに飛び込んできたのは朱音だった。彼女は下の子を抱っこした状態で店内をキョロキョロ見回し、龍之介の姿を見つけて駆け寄ってきた。
「龍兄、おまたせー!」
「ま、纏さん、この方は?」
「これは俺の妹の朱音」
「どーも、はじめまして!」
「は、はあ……」
朱音は龍之介の隣の席にどかっと座り、店員を呼んで飲み物を注文した。向かいに座る寧花は事態が飲み込めず、ポカンと口を開けている。
「偶然だけど、うちの妹もこの市内に住んでるんだ。新しい土地でイチからママ友作るの大変だろうから紹介しようと思って」
「よろしく~! ちなみにどの辺?」
「あ、ええと、□□町の……」
「校区は違うけど割と近いねー!」
勢いに押され気味だったが、子どもの月齢が近いこともあり、寧花は朱音とすぐ打ち解けた。
「ありがとうございます。初めての場所で、まだ知り合いとか誰もいなくて心細かったんです」
「わかるー、私も一人目の時そうだったもん! 連絡先交換しよ。色々教えるから!」
「は、はいっ!」
早速二人は情報を交換し始め、その間龍之介が子どもたちの相手をすることになった。久々に陽色を抱っこして、あたたかくて柔らかな感触を堪能した。
「妹さんと寧花がママ友に?」
「そ。たまたま同じ市内に住んでたから紹介した。タイプは違うけど仲良くやれそうだよ」
「そっかー、そんなら良かった」
風呂上がりの晩酌中、今回の件を謙太に報告すると安心したように表情を綻ばせた。
「あれ以来ずっと沈んでて、それどころじゃなかったみたいでさー」
「だろうな。そんな感じだった」
寧花は謙太と結婚していた頃、育児サークルに通うなどしてママ友を作っていた。だが、それでも連絡先を交換するまでに至っていない。
単なる顔見知りから更に仲良くなるには、多少強引にでも距離を詰めてくる相手でなくてはならない。
例えば、朱音のような。
「でも、まさかリュウが妹さんを紹介するとは思わなかったよ」
グラスを傾けながら謙太が笑った。
龍之介から『寧花と会って話がしたい』と言われた時には意図が分からず混乱した。だが、その理由は環境が変わった寧花に対するアフターケアのようなものだった。
「寧花さんと朱音が繋がってれば、もしおまえがいなくなっても陽色の情報が入ってくるからな」
「…………は?」
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