【完結】断罪待ち悪役令息と絶対断罪しない王太子殿下

みやこ嬢

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王太子はまたしても嫉妬しているようです

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 ステイン先輩の名前を出した途端、ローガン様の表情が強張った。どうしたのかと思い、歩み寄って顔を覗き込む。

「おまえはベリーニ隊長と仲が良いのだな」
「はあ、それなりには」

 肯定すると、ローガン様は眉間にシワを寄せた。怒っているわけではなく、機嫌を損ねているようだ。

「どうかされましたか。気に障るようなことでも?」

 私の言動によって不快感を与えたのなら改善せねばならない。不機嫌の理由を尋ねると、ローガン様はプイと顔をそらした。

「ちゃんと教えてください。このままではどう対処するべきかわかりません。私はなにか失礼をしましたか?」

 ローガン様の両肩に手を置き、冷静さを心掛けながら再び尋ねる。先ほどまで普段通りだったというのに、急に態度が変わると不安になってしまう。問題があるならさっさと解決して、いつもの笑顔を見せてほしかった。

「教えてくださるまで離しませんよ」
「……っ」

 肩を掴まれたまま、ローガン様はバツが悪そうに小さく舌打ちした。同時に、私の宣言が嘘ではないと理解しているようで、渋々だが口を開いた。

「ベリーニ隊長は、俺の知らないおまえを知っているんだろう。それが悔しいだけだ」

 貴族学院の長期休みに入るたび、私はアミル様の計らいで王国軍での鍛錬に勤しんでいた。その間、王都の屋敷には戻らず、家族とも手紙のやり取りはなし。もちろん学友であるローガン様とも一度も連絡を取らなかった。ステイン先輩と共に過ごしていたのは確かなのだが。

「まさか、また妬いてくださったのですか」
「またって言うな!」

 私の言葉に憤慨するローガン様。言い当てられて悔しかったのか、眉を吊り上げて怒っている。私が満面の笑みを浮かべている姿を見て更に機嫌を損ねるかと思いきや、意外にも素直に胸の内を吐露し始めた。

「以前おまえが言っていただろう。軍の知り合いに男が好きな奴がいる、と。もしやベリーニ隊長がその人物なのではないかと思ったら落ち着かなくてだな……」

 確かに言ったな、と記憶を掘り起こしてみる。わざと怒らせようとして言葉責めをした時の話だ。あれを覚えていたらしい。

「昨夜だって、許可したらすぐにベリーニ隊長の部屋に行ったではないか」
「行ってほしくなかったんですか?」
「違う。ヴァインの交友関係に口出しするつもりはない。でも……」

 そこでローガン様は言葉を詰まらせ、視線を伏せる。急かすことなく黙って続きを待つと、しばらくして再び語り始めた。

「……おまえが男の抱きかたをここで学んだのかと思ったら複雑な気持ちになっただけだ」

 なるほど。かつて私とベリーニ隊長がそういう関係だったのではないかと疑っているということか。

「ローガン様、誤解です。私とベリーニ隊長はそんな仲ではありません」
「では別の者と関係を持っていたのか? 男好きの兵士がいたのだろう?」

 どうも軍で男色を覚えたと思われている。まずはその勘違いから正していかねばならない。

「良いですか、ローガン様。王国軍は実力主義ではありますが、私は正規兵ではなくあくまで期間限定で修行にきた貴族の子息です。アミル様の庇護下にありましたし、誰も私に手出しなんてできません」
「そ、そうなのか……?」

 一気に捲し立てると、ローガン様は目を瞬かせた。

「男色趣味の兵士もいましたが、発散する時はそういう店を利用するそうです。素人を相手にすると面倒だとかなんとか言ってましたよ。くだんの兵士は既に除隊しております」

 ちなみに、男色趣味の兵士とはフィガロ先輩のことである。彼は自分好みの新入り兵士を庇って負傷したらしい。良いところを見せて惚れさせるつもりが予想以上に傷がひどくて引退したという。昨夜ステイン先輩から詳しい経緯を聞いた後で後悔したくらいだ。

「そうか、良かった」

 ホッと安堵の息をはくローガン様。ここが壁の薄い宿舎じゃなければ抱き潰していたところだ。

「……口を塞げばイケるか……?」
「ヴァイン、なにをぶつぶつ言ってるんだ」

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