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興奮を収めるには第三者の介入が有効です
しおりを挟む走行中の馬車の中、私はローガン様を抱きしめて口付けをしていた。何度も何度も角度を変え、わずかに唇が離れた隙にもれる吐息すら逃さずに貪った。
「っ、んん……」
唾液の混ざり合う音と吐息が耳に届き、気持ちが昂ってゆく。既に股間は痛いくらいに張り詰め、ズボンを押し上げている。ローガン様の肩を掴んでいた手を片方下ろしてみると、私と同じように反応していた。唇を重ねたまま、布越しに先端を撫でてみる。すると、驚いたローガン様が腕を突っ張って私を押し退けた。
「待て、触るなヴァイン!」
「どうしてです?」
「こんなところで、そんな」
走行中の馬車内で淫行に及ぶなどあってはならない。閉め切られているとはいえ、側面には窓があり、外からも中の様子が見える。馬で並走している護衛兵が覗き込んできたら丸見えとなる。しかも前方にも馭者台に通じる小窓がある。こちらは目隠しの布が掛けられているが鍵はなく、開ければ中の声が聞こえてしまう。
更に、この馬車は王族の公務用。陛下や妹君も使用する馬車の中で側近といかがわしい行為をするわけにはいかないとお考えのようだ。
見られたくないと言うのなら、と体を離した。元通り、馬車の進行方向を向いて横並びに座り直す。そして、にこやかに笑いかけた。
「確かに、護衛兵に見られたら困りますよね」
「そうだろう? だから触るのは……え、ちょ、待っ」
抱きかかえる体勢はやめたが、下半身に伸ばした手は引っ込めない。会話しながらずっと触り続けている。
「話を聞いていたか? 触るなと言ったんだ俺は!」
「シッ。声を上げると何事かと思われますよ」
「はあ? おまえが触らなければいいだろうが!」
異議を唱えられたが無視して撫でてやると、時折りビクンとローガン様の体が跳ねた。呼吸は再び荒くなり、頬も上気している。
「あ、ほんとに、だめ」
布越しに刺激し続けた結果、ローガン様の股間ははちきれんばかりに膨らんでいた。あと少し触れれば達する、といったところで手を止める。
「出してはいけませんよ。下着を汚してしまいますからね。流石に走る馬車の中で着替えはできませんから」
「お、おまえ……!」
涙目で睨まれた。今のローガン様は誰かに見られそうな場所で触れられた挙げ句に射精を寸止めされ、必死に堪えている。頭の中は快楽を逃がすことと私に対する怒りで占められている。ディアナ嬢に遭遇したことなど考える余地もないくらいに。
「宿屋に着いたら出しましょうね」
「うるさい、黙れ」
「おや、お手伝いは要りませんか? お一人で済ませられますか?」
「黙れと言うのに!」
抗議の声が大きかったからだろうか。馬車側面が軽くノックされた。少し窓を開けると、馬で並走している護衛兵の一人が声をかけてきた。
「殿下の声が聞こえましたが、なにかありましたか」
「い、いや、なんでもない。大丈夫だ!」
「そうですか。失礼いたしました」
焦ったローガン様が否定すると、護衛兵はあっさり退いた。私とローガン様の仲が良いことは皆が知っている。会話が盛り上がって騒いでしまったのだろうと受け止めてくれたようだ。
もし口付けをしていたり抱き合っている時に声をかけられていたらどうなっていたことか。ローガン様は相当肝を冷やしたらしく、青い顔をしている。
「おや」
「うん?」
私が声を上げると、ローガン様は怪訝な顔で聞き返してきた。笑顔で下を指差し「興奮が収まったようで助かりましたね」と答えると、思いきり肩を殴られてしまった。
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