【完結】断罪待ち悪役令息と絶対断罪しない王太子殿下

みやこ嬢

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王太子の妹君に贈り物をしました

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 道中トラブルはあったが、予定通りの日程をこなして王都へと帰還した。ローガン様と二人で国境の砦の視察報告をしに行った。

「建て直しか否かは決まりませんでしたか」
「イリスティーン卿があまり乗り気ではないようでな」
「ふむ。彼女は国家予算の不足を気にしていますからね。財務大臣も必要な場所には回すと言ってはいるのですが」

 内務大臣のシュタルク侯爵は私の父である。大臣の執務室にて、ローガン様は内務大臣とテーブルを挟んで腰を下ろし、私が書き上げた報告書を見ながら話をしている。私はローガン様の後ろに立って控えている。

「しかし、予算に関しては先日ローガン様が治水工事の予算横領の件を対応してくださったおかげでなんとかなる見込みです」
「うん? そうなのか」
「男爵の財産を根こそぎ没収しましたので。作業員への未払い分の賃金の分配を終えれば、残りはすべて国庫に戻ります。砦の建て直しも可能になりますよ」

 以前視察した王都郊外の治水工事の件だ。責任者の男爵を油断させるため、ローガン様と私の二人だけで視察に行ったのである。男爵はかなり私腹を肥やしていた。財産没収ともなれば、かなりの額になるだろう。

「俺としては建て直しをしたほうがいいと思う。予算の心配さえなければイリスティーン卿も反対はしないだろう」
「では、次の議会で話をしておきましょう」

 報告も終わり、執務室を辞そうとした時に父から呼び止められた。

「ヴァイン、久々に家族揃って食事をしないか」
「父上。仕事中に家の話などしなくても」
「ルインが寂しがっていたぞ」
「……」

 普段から朝食時にしか顔を合わせていなかったというのに一週間も家を空けていたのだ。悲しげなルインの顔を思い浮かべると胸が痛む。

「レネリアも気にかけていた。早く帰って顔を見せてやれ」
「……はい」

 義母上が私を気にかけるはずなどない。彼女は前妻の子である私のことなど嫌っているに決まっている。ローガン様の前で嫌な部分を見せたくなくて、私は渋々頷いた。

「おまえの荷物もまとめて俺の部屋に運ばれてしまったようだ。取りに来い」
「は、わかりました」

 内務大臣の執務室を出て、王宮奥にある王族の居住区へと向かう。廊下を行き交う侍女たちは立ち止まって恭しく頭を下げ、ローガン様を出迎えている。

「ローガン様、ミレーナ様が午後のお茶をご一緒したいとのことです。殿下のお部屋でよろしいですか?」
「構わん、用意を頼む」
「かしこまりました」

 ローガン様の妹君、ミレーナ殿下は貴族学院に通っている。今日の授業を終え、もう王宮に帰ってきているようだ。

 ローガン様の部屋で荷解きをしていると、程なくして侍女たちがカートを押して現れた。手際良くテーブルに真新しいクロスを敷き、茶器を並べ、何種類もの菓子が乗ったケーキスタンドを置いていく。すべての支度が整った頃、ミレーナ殿下がやってきた。

「お兄様、ヴァイン様、おかえりなさいませ!」
「ただいま、ミレーナ」
「ミレーナ様、お久しぶりです」

 ドレスのすそを摘んで挨拶するミレーナ殿下はとても可愛らしい。ローガン様と同じ鮮やかな赤い髪はゆるく巻かれ、綺麗に結われている。大きな瞳は力強く、強い意思が宿っているとわかる。

「国境って、とても遠いのでしょう? わたし行ったことがないから興味あるわ」
「面白いものなどないぞ。なあ? ヴァイン」
「は。古びた砦と宿舎しかありません」
「んもう! そういうのがいいんじゃないの!」

 年若い令嬢が好むものなどなにもない場所だ。嘘ではない。実際、土産を購入した場所は国境ではなく途中に寄った町なのだから。

「そうだ。ミレーナに土産がある」

 ローガン様が銀細工の髪飾りが入った小箱を渡すと、ミレーナ殿下は「まあ!」と感嘆の声を上げた。

「お兄様ありがとうございます、大事にします!」
「気に入ってくれて良かった」

 妹君の喜ぶ姿に、ローガン様も嬉しそうに笑っている。ふと思い立ち、私も小箱をミレーナ殿下へと差し出した。

「ミレーナ様。これは私からです」
「まあ、ヴァイン様がわたしに?」

 驚きながらも、ミレーナ殿下は受け取った小箱を開けた。中には小さな銀細工のブローチが入っている。

「ローガン様が贈られた髪飾りと似た意匠の品です。胸元のリボンやタイを留めるのに丁度良いかと思いまして。揃いで着けていただければ嬉しいのですが」
「本当ね、とっても素敵! ヴァイン様ありがとう!」

 喜びを隠しもしないミレーナ殿下に私の表情もついゆるんでしまった。

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