『嘘憑き探偵・逆宮くんの失言』

蚊か何か/カカナンカ

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『嘘憑き探偵・逆宮くんの失言』

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 人が嘘をつくのは呼吸と同じ。

 だから、嘘を見抜くのは肺活量が必要だ。

などと、探偵にしてはトチ狂ったことを堂々とほざくのが、僕の相棒であり、他称・嘘憑き探偵――逆宮(さかみや)くんである。

「つまりだね、僕の発言のうち七割は嘘で、二割がジョークで、残りの一割は、だいたい沈黙だ」

 そんな彼が、今日も教室の窓際でコアラみたいにぶら下がっていた。自らの体重より重い真実を支えきれないらしい。かわいそうに。

「ねぇ、聞いた? 二年C組の剣城さんが、また記憶をなくしたって」

 唐突な話題にしては、やけに重たい一言を吐いたのは、僕――語原(かたるば)つづりである。名前からして胡散臭いが、生まれたときからそうなので仕方がない。

「彼女がなくすのは記憶じゃない。時間だよ」

 逆宮くんは、返す刀でそう言った。どういう意味かは分からないが、とりあえずカッコイイ。少なくとも、前置詞の使い方が独特なのは確かだ。

「剣城さんの机、今朝から血がついてるらしいよ。でも誰のものかは分からない。彼女は覚えていない。目覚めたら黒板の上に立ってたって」

「……それは、器用な寝相だね」

 その程度の返ししかできない僕が情けないのか、それともこの事象自体が冗談めいているのか。よくわからないが、たぶん両方だ。

「ところで語原くん、君、今朝何か失くした?」

「え? いや、別に……あ、でも財布がないかも。って、なに? なんでそんなこと聞くの?」

「だって、君の記憶は、僕の手の中にあるからね」

 そう言って、逆宮くんはポケットから取り出した。僕の財布でも、記憶でもなく、青いビー玉を。

「それ、なに?」

「彼女の記憶の一部。きみの名前が彫ってあったよ。つまり、君は剣城さんと過去に関係があったというわけだ」

「え……?」

「まあ、全部嘘だけどね」

 と、満面の笑みを浮かべながら、ビー玉を窓の外に放り投げた。
 確かに彼は、七割は嘘を言う。だけど、一番怖いのは、その残りの三割が、どこかに本当を含んでいることなんだ。
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