『嘘憑き探偵・逆宮くんの失言』

蚊か何か/カカナンカ

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【最終章】「名前を呼ぶには、まだ早すぎる」

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 放課後の教室には、もう誰もいない。

 窓から差す夕陽は、まるで世界の終わりみたいな色だった。
 そしてそこに――逆宮くんが、いなかった。

 あいつが、いない教室。
 それだけで、何か大事なものが抜け落ちた気がした。

> 「やぁ。ずいぶん探させたじゃないか、語原くん」



 声は、屋上から降ってきた。
 そこに立っていたのは、白い制服、黒い髪、そして、もう一つのビー玉を手にした――逆宮くん。
 いや、もう“逆宮”と呼んでいいのかも分からない。

「ずっと聞きたかった。君は、誰なんだ?」

 僕は問う。息が白くなるほど緊張していた。

 逆宮くんは、少し間を置いて、静かに答えた。

> 「僕の本当の名前は、“語原つづり”だよ」



 時間が止まった。
 心臓が、一回跳ねた。いや、逆さに跳ねたようだった。

「じゃあ、僕は……?」

> 「君は“ひずみ”だ。僕が語ることで、この世界に留めていた、“ひずみ”という名前の残骸だ」



「意味が分からない……っ!」

> 「簡単な話さ。
 ――君は“僕の罪”だよ。
 君が“生きてる”限り、僕は正気でいられた。
 でももう、限界なんだ」




---

【真相】

 あの日、剣城あめは本当に消えた。
 いや、僕が消してしまった。
 存在を否定して、記憶を封印して、
 彼女を“なかったこと”にした。僕自身を守るために。

 でも、それでも残ってしまった“罪”が、
 人格を裂いた。
 名前を二つに割った。

> 「語原ひずみは、語原つづりが生きるために作り出した、“もう一つの名前”。」
「そして逆宮という探偵は、その名前をずっと監視していた。」




---

「なら、僕は……もう消えるの?」

> 「違うよ。“統合”するんだ」
「あめの記憶も、罪も、喪失も、全部引き受けて、君は“本当の名前”を取り戻す」
「それが、君と僕の嘘の終わり方だ」



 逆宮くんは、最後のビー玉を投げた。
 それは空中で砕け、雨のように光が降った。

 その瞬間――僕は、自分の本名を、はっきりと口にした。


---

> 「俺の名前は――語原 雨留(あめる)」



 つづりでもなく、ひずみでもなく。
 あめを、留めるための、最後の名前。


---

【エピローグ】

 教室には、もう誰もいない。
 黒板の隅には、ビー玉が一粒。青くて、透き通っていて、あたたかかった。
 僕はそれを拾って、そっとポケットにしまう。

> 「ねえ、あめ。もう、君を嘘にはしないよ」



 雨が降り出した。
 きっとそれは、世界が許してくれたサイン。
 僕が、ようやく“語り始めた”証。


---

**Fin**
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