ローズマリーと犬

無名

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前章

Side I 11

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こすって、こねて、つまんで、つぶして。
まだ意識があるので声を我慢する意志を見せるもものの、
これらの動作ひとつひとつにびくびくとかわいらしい反応を見せる。
足の指さきが耐えるように丸まっている。
腰がカクカクと動いて、すがる腕がぷるぷると震えているのを見とめて、

「透さん、座ってるのしんどいでしょ。横になろうか?」

と尋ねると、首を横に振って嫌がられた。
汗で張り付いた髪が俺の首筋を撫でてくすぐったい。


「んっ…ッいい、このまま…ふくっ…」


そう言って腕の力を強められたら、何も言えなくなる。
平常心、と心を無にする忍耐がぷつんと切れそうだが、
なんのために彼がここまで体を張ってくれてるんだと思い出しては
喘ぎ声とフェロモンに顕著に反応して張りつめている下半身をなんとかやりすごす。
これだけはなんとか耐えなければ、とこちらも抑制剤を多めに飲んだ。
最悪勃たなくてもいいと思ったがモノは全然反応していて己の欲深さが嫌になる。
とはいえ、以前なら意識が白飛びして情欲に流されていたが、
ギリギリ平静を保てているのでこのあと副作用でぶっ倒れたとしても後悔はない。
欲に流されそうになるたびに、腕の中で頑張ってくれる人への愛情で塗りつぶすように心がけた。

ヒートのとき、Ωの男性は後ろから潤滑油的に愛液が漏れて、
肉壁も柔らかくなり受け入れ態勢ができるというのは知識として知ってはいたが、
ヒート以外のときは普通の男性と同じらしく、
ローションを継ぎ足しつつかなり丁寧に処置しなければ肉はかたいままだということを
ここで初めて知る。
思ったより、普通のからだだ。
けれどヒートで後ろの快感を知っているせいか感度は非常によいのが幸いで、
今のところは怖がることなく、与えられる快感に身を委ねている。
痛かったり怖かったりしなくてよかった、とほうと息を吐く。

けど、挿れるには少し、キツいかもしれない。

そんなことを考えながら、いったいどのくらいそうしていたかわからないが、
俺が限界を訴えるより先に音を上げたのは透さんのほうだった。


「いつきぃ…! も、むり…! あっ…だいじょうぶ、だから、いれてぇ…!」


普段の落ち着いた静かな声がとろとろに溶けて甘ったるい。
耳に入り込んだ途端脳を揺さぶった。フェロモンがぶわりと部屋に充満する。
喉が鳴る。

請求に指をちゅぽんと抜くと、
喪失感に腕の中の人が「ああっ…!!」と艶めかしい声を上げて背を反らした。
俺のスウェットは、彼の先走りでびしょびしょで、シーツも広い範囲で冷たくなっていたので、
それを避けて、なるべく濡れてないところに彼のからだをおろした。
負担が少ないように腰の下に枕を差し入れて体勢を作る。

もやのかかった頭。遠くで聴こえる己の息が荒い。正気を保つのが限界だ。
スウェットをズラしながら自分のを取り出すと限界まで膨張していた。
痛くて熱い。そして、目の前に準備を済ませた好きな人がいて、止められない。
手荒く彼の足を手で割り開いて、先端をそこにくっつけてから、はあと熱い息を吐いて、
そしてふと、自分のとは違う不規則な呼吸に気づいて顔を上げた。



「は、はぁっ…は、はっ、はっ」
「…透さん…?」
「はっはっ、はっ、はあっ…はあっ」
「透さん!?」


興奮した息遣いとは違う、顔が青ざめて紙みたいに真っ白だ。
口元を手で押さえて、目の焦点が合っていない。
俺は慌てて彼を抱き上げて腕の中へぎゅっと力強く閉じ込めた。
冷たい指が俺の背中に回って弱弱しくすがる。

やばい。しまった。今、意識飛んでた。
また同じことを…と熱が一気に引いていくのを感じる。
ごめん、もうやめよう、と口を開いた。
こんなチャンスをくれたことだけでも行幸だったのだ。
それを反故にすべきではない。もう十分だ。
俺はαで、欲に逆らえない。大事な人を傷つけてしまうような、野蛮な。

そのときだ。

小さい手が伸びて、俺の後頭部をわしりと掴んで、正しい角度に引き寄せた。
ちゅっと音を立てて唇が合わさる。
それからそのまま、彼は顔を俺の肩口にうずめてすうーと大きく息を吸った。

どれくらいだろう。数秒、数十秒。…そのくらい。
ゆっくり顔を上げた透さんは、よし、とかすれ声で呟いて俺の背を小さく叩いた。


「はあ、大丈夫…。続き、しよう」


それからころりと自ら寝転がると、足を自分で持ち上げた。
てらてらと濡れたピンク色の秘部がこちらに向けられる。
頭がだめになっているから、視界の暴力にもう全身が熱を帯びてぐらぐらする。


「…い、や…でも…」
「ここまでやって、逃げるのはなしだろ。お互いに。
 …いいから、気が変わらないうちに、ほら」


足で軽く小突かれて、色気の欠片もない。
それでもためらう俺に眉をひそめてじゃあと手を差し出した。


「手握って。あと、挿れたらキスして。お前の匂いが近いほうがいい」
「ッ…!」


頭の熱のままに鼻血が出そうだったが、
かぶりを数度振ってそれから差し出された手をぎゅっと握る。
あったかい。あったかくなっている。…大丈夫だ。
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