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前章
Side I 10
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「…包丁、マットレスの下にあるから必要なら使って」
俺の部屋ですることになったので、注意事項としてそう伝えると、
透さんは呆れたように目をすがめて言う。
「とっくに見つけて危険ゴミとして捨てたっての」
「……」
「合意だって言った。腹くくれよ。おれの、特別になるって」
全くかなわない。
下だけスウェットを履いた俺は肩を竦めて、Tシャツとパンツ姿の彼の横に腰を下ろす。
ベッドが大きく沈んで、透さんのからだがびくりと揺れる。
「怖いんでしょ」
「…怖い、けど、やる」
「抱きしめてもいい?」
「…ん」
そろりと手を回してなるべく優しく包むと、
同じようにおそるおそるといった手つきで小さい冷たい手が俺の背中に回った。
まるでこうなるようあつらえたかのように透さんのからだはぴったりと俺に収まった。
危ないといけないからと抑制剤は改めて飲ませたが、
それでも首筋からはふわりとローズマリーの匂いが舞う。
熱中症予防にクーラーは強め。
薄着だと寒かったけど、しばらくとけるようにくっついていたら体の芯から熱が湧いてきた。
大丈夫かな、怖がってないかな、と様子を窺っていたが、
脈拍は少し速いくらいだが正常範囲、身体も震えてないし冷たくもない。
大丈夫そうだ。
「…電気消す?」
「…暗いのは、やだ…」
「だよね…じゃあこのままで」
ちゅ、と音を立てて耳の裏にキスをするとびくりと反応された。
けれど拒まなさそうなので、そのまま始めることにする。
ローションとゴム買いに行かないとともう一度外に出ようとしたら、
もう買ってある、と準備のいい透さんに言われてかたまってしまった。
どんな顔でそれを買ったんだろうとぐるぐるする。
ベッドの上に転がされたローションを抱き合ったまま取り、左手にぶちゅと出すと、
露骨に身体が硬直されたのがわかって、苦笑いしながら汚れていない右手で頭を撫でてやる。
前戯をどうしようかと思ったが、緊張でそれどころではなさそうなので、
はなからほぐすのに集中したほうがいいと判断した。
透さんが自分から服を脱いで、それからまた俺の腕に収まった。
素肌がぺたりとくっついて恥ずかしい。
「触るよ。怖かったら言ってね」
そう言って頭をぽんぽんとすると、回された腕に力が込められて俯いた額が俺の肩口にこすられた。
すがったところでこれから行為を施すのは俺なんだけれど、とかわいらしい仕草にまた少し笑う。
とはいえ腰を持ち上げて協力的な姿勢を作ってくれたので、
俺も右手で身体を支えて負担の小さい体勢を手伝った。
ひたりと中指を触れる。
後孔は本人の申告通りかたく閉じていて、
すぐに埋めるのは難しそうなので周辺をやわらかくなるようマッサージしていく。
焦らない焦らない、と思いつつ緊張で額を汗が伝った。
それと同時に透さんの背中も汗が伝っているのが見えて、お互い緊張してるなと思う。
時折首筋にキスをしたり、背中を撫でたりしてなだめながら、
機嫌を取るようにかたいそこをほころばせていく。
ローションを指先で少しずつ送り込むとだんだんひらいてきたので、中指の先を入れた。
第一関節の半分くらいだが、
俺の手がでかいせいで透さんのからだのサイズ的には大したことはないと言い難い。
「ッ…!!」
「大丈夫? 今ね、指先くらい入ったよ」
「だ、いじょうぶ…。朝になっちゃうから、早く…」
「怪我するとよくないし丁寧さ優先かな…まあ朝になったらなったでしょうがない」
「お、れが、緊張し疲れるって…!」
そんなことを言われたので思わずんふふと笑うと、
安心したように力が抜けて、一気に中指が中ほどまで埋まる。
「はぁうッ…」と背がのけぞって鼻孔を香りがくすぐるのに、平常心平常心、と頭の中で唱えた。
ゆっくり指を進めていき、そこからは指一本で丁寧にほどいていく作業だ。
どんどん力がこもっていくので、そのたびに「力抜ける?」とお願いして、できたら褒めるの繰り返し。
「上手上手。だいぶ柔らかくなってきたから指増やすね」
「ふうぅ…っく…」
かたくならないように努めて息を吐いて弛緩させてくれる健気さに嬉しくなる。
「俺勝手にヒートのとき以外もやわらかいのかと思ってた」
「は…、ヒートのとき以外にも、いじってるやつは、そうだろうけど…」
着々と準備は進んでいる。
もとが緊張からくる強張りであるためかだんだん会話ができる余裕がでてきたようで、
ふうふう言いながらも返してくれるようになってきた。
そろそろいいかな、と中指の先で意図的に避けていた前立腺をやわく押す。
「ひいあッ!?」
身体が跳ねあがって、腰が逃げるのをやんわり押さえながら、
さらに押したりこねたりと弱点の性感帯をかわいがると、抱き着く腕に力が込められた。
細いとはいえ男の腕だ。力を込められればそれなりに痛い。
「うっ、うぁ…! そこ、やだッ…! んっ…んん…、ッ!!」
このやだは大丈夫なやつ、と判断して、
気持ちよくなれる箇所を触りながらもう一本指を増やしてぐるりとかき回した。
ああ、それにしても甲高い声がうなじの匂いと相まって脳に来る。
透さんが暴れるのに合わせて俺の顔からも汗がぱたぱたと落ちる。
俺の部屋ですることになったので、注意事項としてそう伝えると、
透さんは呆れたように目をすがめて言う。
「とっくに見つけて危険ゴミとして捨てたっての」
「……」
「合意だって言った。腹くくれよ。おれの、特別になるって」
全くかなわない。
下だけスウェットを履いた俺は肩を竦めて、Tシャツとパンツ姿の彼の横に腰を下ろす。
ベッドが大きく沈んで、透さんのからだがびくりと揺れる。
「怖いんでしょ」
「…怖い、けど、やる」
「抱きしめてもいい?」
「…ん」
そろりと手を回してなるべく優しく包むと、
同じようにおそるおそるといった手つきで小さい冷たい手が俺の背中に回った。
まるでこうなるようあつらえたかのように透さんのからだはぴったりと俺に収まった。
危ないといけないからと抑制剤は改めて飲ませたが、
それでも首筋からはふわりとローズマリーの匂いが舞う。
熱中症予防にクーラーは強め。
薄着だと寒かったけど、しばらくとけるようにくっついていたら体の芯から熱が湧いてきた。
大丈夫かな、怖がってないかな、と様子を窺っていたが、
脈拍は少し速いくらいだが正常範囲、身体も震えてないし冷たくもない。
大丈夫そうだ。
「…電気消す?」
「…暗いのは、やだ…」
「だよね…じゃあこのままで」
ちゅ、と音を立てて耳の裏にキスをするとびくりと反応された。
けれど拒まなさそうなので、そのまま始めることにする。
ローションとゴム買いに行かないとともう一度外に出ようとしたら、
もう買ってある、と準備のいい透さんに言われてかたまってしまった。
どんな顔でそれを買ったんだろうとぐるぐるする。
ベッドの上に転がされたローションを抱き合ったまま取り、左手にぶちゅと出すと、
露骨に身体が硬直されたのがわかって、苦笑いしながら汚れていない右手で頭を撫でてやる。
前戯をどうしようかと思ったが、緊張でそれどころではなさそうなので、
はなからほぐすのに集中したほうがいいと判断した。
透さんが自分から服を脱いで、それからまた俺の腕に収まった。
素肌がぺたりとくっついて恥ずかしい。
「触るよ。怖かったら言ってね」
そう言って頭をぽんぽんとすると、回された腕に力が込められて俯いた額が俺の肩口にこすられた。
すがったところでこれから行為を施すのは俺なんだけれど、とかわいらしい仕草にまた少し笑う。
とはいえ腰を持ち上げて協力的な姿勢を作ってくれたので、
俺も右手で身体を支えて負担の小さい体勢を手伝った。
ひたりと中指を触れる。
後孔は本人の申告通りかたく閉じていて、
すぐに埋めるのは難しそうなので周辺をやわらかくなるようマッサージしていく。
焦らない焦らない、と思いつつ緊張で額を汗が伝った。
それと同時に透さんの背中も汗が伝っているのが見えて、お互い緊張してるなと思う。
時折首筋にキスをしたり、背中を撫でたりしてなだめながら、
機嫌を取るようにかたいそこをほころばせていく。
ローションを指先で少しずつ送り込むとだんだんひらいてきたので、中指の先を入れた。
第一関節の半分くらいだが、
俺の手がでかいせいで透さんのからだのサイズ的には大したことはないと言い難い。
「ッ…!!」
「大丈夫? 今ね、指先くらい入ったよ」
「だ、いじょうぶ…。朝になっちゃうから、早く…」
「怪我するとよくないし丁寧さ優先かな…まあ朝になったらなったでしょうがない」
「お、れが、緊張し疲れるって…!」
そんなことを言われたので思わずんふふと笑うと、
安心したように力が抜けて、一気に中指が中ほどまで埋まる。
「はぁうッ…」と背がのけぞって鼻孔を香りがくすぐるのに、平常心平常心、と頭の中で唱えた。
ゆっくり指を進めていき、そこからは指一本で丁寧にほどいていく作業だ。
どんどん力がこもっていくので、そのたびに「力抜ける?」とお願いして、できたら褒めるの繰り返し。
「上手上手。だいぶ柔らかくなってきたから指増やすね」
「ふうぅ…っく…」
かたくならないように努めて息を吐いて弛緩させてくれる健気さに嬉しくなる。
「俺勝手にヒートのとき以外もやわらかいのかと思ってた」
「は…、ヒートのとき以外にも、いじってるやつは、そうだろうけど…」
着々と準備は進んでいる。
もとが緊張からくる強張りであるためかだんだん会話ができる余裕がでてきたようで、
ふうふう言いながらも返してくれるようになってきた。
そろそろいいかな、と中指の先で意図的に避けていた前立腺をやわく押す。
「ひいあッ!?」
身体が跳ねあがって、腰が逃げるのをやんわり押さえながら、
さらに押したりこねたりと弱点の性感帯をかわいがると、抱き着く腕に力が込められた。
細いとはいえ男の腕だ。力を込められればそれなりに痛い。
「うっ、うぁ…! そこ、やだッ…! んっ…んん…、ッ!!」
このやだは大丈夫なやつ、と判断して、
気持ちよくなれる箇所を触りながらもう一本指を増やしてぐるりとかき回した。
ああ、それにしても甲高い声がうなじの匂いと相まって脳に来る。
透さんが暴れるのに合わせて俺の顔からも汗がぱたぱたと落ちる。
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