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「あれ、多分カレシ、なんだろーなー」
自嘲気味の言葉に、
「まあ、共学だしな」なんて陳腐な答え。
実際何も見ていないだけに、恵那としては何も言えないわけで。
「色、白くてさ。髪はショートなんだけど、さらっさらで。目、おっきくて睫毛長くて、ちょお可愛いんだ、乃彩は」
「ちょい待て。そりゃ、ほぼほぼおまえじゃねーか」
涼の口から出てきた彼女――のあちゃんですか?――を形容する単語は総てそのまま涼に当てはまるものだから、思わず恵那が突っ込むと。
「はあ? 僕、オトコだし」
睨まれた。
さすがに今していい発言ではなかったらしい。
「あ、ごめん。続けて?」
苦笑して促す。
思ったことをすぐ口にしてしまうのは悪い癖だと自分でも思う。
「でね、僕よりちょっと小さいんだ。なんかこう、護ってやりたくなる感じで」
もはや、涼がなんと言おうとも恵那の中では女の子バージョンの涼でしかない。だとすれば、それはもはや高嶺の花以外の何物でもないだろう。
「いつも笑ってて、イケイケ女子な集団にも普通に接してんだけど、でも全然染まらないってゆーか。僕みたいな陰キャ丸出しな男子にも全然普通に喋ってくれるし」
「涼は陰キャじゃなくて、ただの人見知りだろ」
「人見知ってる時点で陰キャじゃん。別に、自覚あるし。そもそも陽キャなえなに僕なんて絶対理解できないでしょ」
涼が拗ねて言う。けれど、さっきまでの地底を彷徨っているような重い空気は消えていて。
「陰キャも陽キャも俺はわかんねーよ。でも涼のことは理解できるよ?」
くふ、と不敵に嗤って涼の鼻をきゅ、と軽く摘まんだ。
「俺は別に、そのコのこと無理して忘れろなんて思わねーし、思い出して泣きたいならいくらでも泣けばいいと思う。のあちゃんのことは涼の中で大事な思い出なんだから、そんなの必要なくなるまで味わってればいいんじゃねーの?」
「味わうって……」
「今みたいに、可愛かったなーとか、イイコだったなーとか、思い出せばいいじゃん。思い出の中の彼女は誰のモノでもない、涼のモンだ。だから何やってもOK」
「えな……」
涼のうるうるな目が自分を見上げて来るのを、可愛いと思ったけれどとりあえず押しとどまる。恵那にだってそれくらいの学習能力はある。
「こんな話したらさ、大抵新しく彼女作ればいいじゃんとかゆーんだよ。誰だって」
「それな。んなモン簡単にできるくらいだったら、まず失恋してねーっつの」
「でしょでしょ? だから、なんかえなが言ってくれたの新鮮で、ちょっと嬉しい」
「俺も一緒だからな。結局のトコ、初恋忘れられてないだけで、彼女ほしーなんてのはノリみたいなもんだし」
彼女以外に、土岐と自分を見分けて欲しいなんて思ったコはいなくて。
誰とでも仲良くなれるけれど、だからって本気でスキだと思えるコなんていなくて。
結局友達とバカやってる方が楽しいからって、彼女なんてできたことはない。
先輩からは“恵那はモテる”なんて言われるけれど、そんなことは全然ないのだ。
中学卒業の時に告白ってのはされたけれど、全部ごめんなさいしかできなかった。
それは、こっちの気持ちがない限り、付き合うなんてできないと恵那は思っているから。
「もお、モテない同士で開き直っとこーぜ。で、俺、腹減ったからメシ食うし。涼も食ってけよ」
恋愛感情がどうこうなんてことより、目先の空腹の方が大事な自分だからモテないんだろうと、自嘲して。
それでも涼が笑ってくれたから。
とりあえず現状のままでいいかと涼の手を引いて立ち上がった。
自嘲気味の言葉に、
「まあ、共学だしな」なんて陳腐な答え。
実際何も見ていないだけに、恵那としては何も言えないわけで。
「色、白くてさ。髪はショートなんだけど、さらっさらで。目、おっきくて睫毛長くて、ちょお可愛いんだ、乃彩は」
「ちょい待て。そりゃ、ほぼほぼおまえじゃねーか」
涼の口から出てきた彼女――のあちゃんですか?――を形容する単語は総てそのまま涼に当てはまるものだから、思わず恵那が突っ込むと。
「はあ? 僕、オトコだし」
睨まれた。
さすがに今していい発言ではなかったらしい。
「あ、ごめん。続けて?」
苦笑して促す。
思ったことをすぐ口にしてしまうのは悪い癖だと自分でも思う。
「でね、僕よりちょっと小さいんだ。なんかこう、護ってやりたくなる感じで」
もはや、涼がなんと言おうとも恵那の中では女の子バージョンの涼でしかない。だとすれば、それはもはや高嶺の花以外の何物でもないだろう。
「いつも笑ってて、イケイケ女子な集団にも普通に接してんだけど、でも全然染まらないってゆーか。僕みたいな陰キャ丸出しな男子にも全然普通に喋ってくれるし」
「涼は陰キャじゃなくて、ただの人見知りだろ」
「人見知ってる時点で陰キャじゃん。別に、自覚あるし。そもそも陽キャなえなに僕なんて絶対理解できないでしょ」
涼が拗ねて言う。けれど、さっきまでの地底を彷徨っているような重い空気は消えていて。
「陰キャも陽キャも俺はわかんねーよ。でも涼のことは理解できるよ?」
くふ、と不敵に嗤って涼の鼻をきゅ、と軽く摘まんだ。
「俺は別に、そのコのこと無理して忘れろなんて思わねーし、思い出して泣きたいならいくらでも泣けばいいと思う。のあちゃんのことは涼の中で大事な思い出なんだから、そんなの必要なくなるまで味わってればいいんじゃねーの?」
「味わうって……」
「今みたいに、可愛かったなーとか、イイコだったなーとか、思い出せばいいじゃん。思い出の中の彼女は誰のモノでもない、涼のモンだ。だから何やってもOK」
「えな……」
涼のうるうるな目が自分を見上げて来るのを、可愛いと思ったけれどとりあえず押しとどまる。恵那にだってそれくらいの学習能力はある。
「こんな話したらさ、大抵新しく彼女作ればいいじゃんとかゆーんだよ。誰だって」
「それな。んなモン簡単にできるくらいだったら、まず失恋してねーっつの」
「でしょでしょ? だから、なんかえなが言ってくれたの新鮮で、ちょっと嬉しい」
「俺も一緒だからな。結局のトコ、初恋忘れられてないだけで、彼女ほしーなんてのはノリみたいなもんだし」
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「もお、モテない同士で開き直っとこーぜ。で、俺、腹減ったからメシ食うし。涼も食ってけよ」
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それでも涼が笑ってくれたから。
とりあえず現状のままでいいかと涼の手を引いて立ち上がった。
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