コレは誰の姫ですか?

月那

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 センターにはバスケットコート一面分ほどの小さな体育館があり、気分転換に使ってもいいということで解放されていたので、数人がシュートを打ったりして遊んでいる。
 恵那もとりあえずここで体を動かして時間を潰そうと、体育館に入ろうとしていたところだった。

「涼はマジメちゃんだから勉強してる。先輩こそ、勉強しなくていいのかよ?」
 基本的にここで遊んでいるのは一年部員である。
 が、辰巳たちが真面目に勉強するようなキャラじゃないことは恵那だって知っている。

「いんだよ、俺的ノルマは終わらせてきたし」
 徹が言うと二人もニヤリと嗤った。個人設定のノルマなんて、どうせ大したものではないだろう。
 自習室は学年別だから、三人がちゃんと勉強していたかどうかは不明だが、それくらいの想像はつく。

 ちなみに。
 この学校、進学校だから当然大学を目指す生徒ばかりである。
 が、付属の系列大学にはある程度の推薦枠があるので、外部受験する者こそガリ勉するけれど、系列大学に進もうと思っている者なんてお気楽なもの。
 それに当の系列大学とて、それこそ外部から受験すればそこそこのレベルが必要な大学だからハクはある。が、そこは付属高校である。
 高校受験時にそれなりの成績を修めているからこその特権として、エスカレーター枠が設けられているわけで。当然高校三年間の内申は重要ということで、お気楽とは言え道に外れるような行為をするバカはいない。
 ある意味一番要領のいい連中だとも言える。

 恐らくこの三人組はエスカレーターに乗る気満々なクチだろう。

「二対二でバスケ、やる?」
 奏が親指でゴールを指差したが、
「んー。突き指するわけにはいかないからなー」と辰巳が難色を示した。
 対決なんかすれば、無駄に気合が入るから夢中になってしまうことなんて、わかっている。

「それよかさ、食堂に自販機あったろ? 茶でもシバこうぜ」
 徹が言うと、三人共頷いてセンター本館にある食堂へと向かった。
 それぞれが缶コーヒーを買って。
「今日はさ、初日だし半分おアソビみたいな日程だけどさ。明日はそれこそ、合宿名物の楽器漬けだからな。朝神社までランニングして、メシ食って基礎練からの通し練。午後は午後で、ココ-食堂-で昼メシ食ったら夕方まで鬼練。おまけに晩飯後に最後の通しやるから、まじで恵那、覚悟しとけよ」
 去年の経験者だから、徹がそう語ると奏と辰巳も神妙に頷いた。

「この一日の為に組まれてる合宿だからさ、鬼練の時間はOB連中からもゴリゴリにダメ出し食らうし、佐竹みたいなデリケートなコはちょっとキツイだろうからな。おまえ、フォローしてやれよ」
 奏がいつものようにスティックをカタカタさせながら言う。
「奏先輩、涼には優しいよなー」
「だからタイプだ、つってんじゃん。あんな可愛いの、そうそういないぜ?」
「それな。オーボエの羽山はやまも一年の時は可愛かったんだけどな。近藤と付き合い出したらもう、向かうトコ敵ナシで俺らにダメ出ししてくれるもんなー」
 辰巳がため息を吐く。

「羽山先輩って、コンクールの時だけヘルプで入ってくれるんでしょ? なんか、まじですげー奏者って聞いたけど」
「うん。あいつは小学校くらいからプロに教わってるし、地元のオケでやってるから。どうしても手を借りたい時だけ部員になってもらうけど、基本的には吹部所属じゃないからな」
 徹の言葉には、完全に羽山に対する尊敬の念が含まれていた。
「てか、羽山先輩ってペットの近藤先輩と付き合ってんスか?」
「そ。もう長いよーあいつら。近藤は軽音楽部のトランペットもやってるし、羽山と一緒にオケにも所属してるらしい。も、どんだけ好きなんだっつの」
「羽山が? ペットが?」ニヤニヤと奏が問うと。
「どっちもだろ。見た目チワワな羽山にドーベルマンみたいな近藤がいつだって尻尾振ってるじゃん」
 辰巳が当たり前に返して。

「わかるけどなー。羽山も佐竹と同じで見た目はただただ可愛い系だしさ。でも羽山、俺たちの弱点とか的確に突いてくるからこえーんだよな」
 徹が苦笑する。

 今日の夕方の合奏でも、ピッチのずれを指摘してブチ切れていた。絶対音感を持っているらしい。
 可愛いというよりは綺麗な顔をしているだけに、冷ややかな表情で「パート練習で何やってた? せめてパート内でハーモニーは作り上げてから合奏に参加しろ」なんて言われると。パートリーダーはどのパートも三年生という羽山より上級生であるというのに、それに逆らえるはずもなく。
 しゅん、としてしまった三年生に、指揮者である先生が「まあまあ、それは追々」なんてフォローすることになって。
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