コレは誰の姫ですか?

月那

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「そこ! 山中、立山と連符は揃えろ。速いからって流すな!」
 翌日のパート練習の時間、メトロノームに併せて合奏していると、何度も同じ場所で間違える一年生のアルトサックスにパートリーダーの檄が飛んだ。

 サックスパートのリーダーは三年の重松しげまつで、ソプラノとアルトを曲によって持ち替えで演奏する。
 マジメと言えばマジメ。で、杓子定規なトコがあって少し言葉がキツイ。
この男が、どちらかというとふざけた人間が多いサックスパートを締めるように手綱を引いているから、パート練習となるとかなりの頻度で怒鳴っているわけで。

「シゲ、一旦休憩取ろう。一年に楽譜、もっかい読み込ませろ」
 バリトンの南が優しく言った。
 頭に血が上っている重松を、熊みたいな体型の南が優しく諭すようにいなしてやる。
 小柄な重松と南のデコボココンビは、この二人が揃っていることでパート内の空気が綺麗に収まるから本当に大事な存在で。
「ああ。そうだな。すまん。じゃあ、ちょい三十分間個人練な。楽譜、さらっとけ」
 
 ちょっと頭冷やしてくる、と重松は小さく言ってサックスパートが練習していた小会議室を出て行った。
「大丈夫か、山中? アルトは細かい音符が多いから、丁寧に練習しないとどうしても転ぶからな」
 パートリーダーにぴしゃりと言われて困り顔をしていた山中に、立山がフォローをする。
「分けて縦、揃えて。テンポ落としてゆっくりから音、ハメてったら大丈夫だから」

 そんな様子を見ていた恵那が「なんだかんだ、徹先輩、優しいからな」南に話しかけた。
「ん。シゲも、できないヤツに無理なことは言わない。初心者を乗せないって幹部が決めた時も、シゲが一番最後まで説得してたんだよ」

 コンクールで上位を狙う。つまり、経験者重視になるのは必至。
 実際今回の舞台に、一年の数人は乗らないことは決定している。人数制限があるのも確かだが、上を目指す以上それは毎年のことだから仕方ないことで。
 経験者であっても、一年生で演奏が一定のレベルに達していないと判断されれば外されることだってあるから。
 そんなことは、この学校の吹部に入った以上当然のことだとわかっている。でも、感情としては、全員一緒に演奏したいのが本音だから。

 実は重松は、高校に入ってからサックスを始めた人間で。当然ながら、一年の時、舞台には乗れなかった。
 わかっていたことだけど、やっぱり悔しくて。だから、そこからの努力は半端なくて。
 二年ではソロパートを務めたり、最終的にはパートリーダーを務めるまでに成長した、本当に努力型の男。

 できるだけ、全員で演奏したい。その想いが人一倍あるのが重松で。
 だからこそ一年生への指導は力が入る。
 そして、演奏に入るとかなりのレベルの演奏をするくせに、何かと言えばやたらとふざけたがる徹と辰巳にはイラつくのだ。

「ときに南先輩。彼女ができたっつー噂を耳にしたんだけど、真相は?」
 ベースの音を確認して、足でリズムをとって恵那と同時に吹き始めようとした瞬間の南が、ふいに言われてリードミスして物凄い音を立てた。

「……恵那……」
「いやー、こないだから気になって気になって。練習に身が入んねーっつーか」
 得意のくふくふ笑いで、真っ赤になった南を恵那が更に煽ると。
「あ、それ俺も気になってたー」
 テナーの辰巳もノってくる。
 もはや個人練習なんてそっちのけ、である。

「おまえ、それどこから……?」
「ねーねーねーねー、何キッカケ? 年上? 年下? 可愛い系? キレイ系?」
 ねーねー、ねーねー、と恵那が突っ込むとさすがに優しい熊さんもイラっときたらしく、楽譜の入っていたファイルでばちこん、と恵那の頭をはたいた。

「うるさい! ウザイ!」
「知りたい、知りたいー」
「まだ言うか!」
「だって、幸せなノロケ、聴きたいじゃん。俺非リア充だし、憧れるじゃーん」
 既に楽器を置いて南の周りをくるくる回りながら、小躍りしている恵那が果てしなくウザイ。
 さすがに辰巳も、
「おまえはほんと、デリカシーって言葉を知らんのな?」呆れ返ってデコピンを食らわせた。

「ってーなー。だって、辰巳先輩だって気になってんだろお? この話の出所、先輩じゃん」
「わ、バラすなよ! まじ無神経なヤツだな」
 南から二人まとめて軽いゲンコツを食らうことになる。
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