コレは誰の姫ですか?

月那

文字の大きさ
上 下
56 / 231
<2>

☆☆☆

しおりを挟む
☆☆☆

 基本的に、恵那はお祭り好きである。
 体育祭でもやりたいことを片っ端からやっていって、周りを巻き込んで盛り上げて、盛り上がって、楽しむことに夢中になって。
「また無茶やって倒れるんじゃないのか?」
 ここのところ、朝七時集合のバスケ部の朝練と同じ時間に集合する吹部である。コンクール前と同じようにハードな練習時間となっているが、文化祭を前に仕上げなければいけない曲がそれなりにあるから、悠長な練習では間に合わない。
 朝から白飯に納豆、味噌汁、焼き魚にちょっとしたサラダ。なんてがっつりメニューをしっかり食べている息子二人を、母は嬉しそうに眺めている。

「無茶なんかしてねーよ。体育祭みたいに走るわけじゃねえ」
 土岐の心配そうな声に、恵那は首を振った。
「でもあれだろ? 劇やって、楽器吹いて、更に踊るって聞いたけど」
「どれも全部楽しいぜえ。とにかく俺を見ろーって感じ」
 既に二杯目の白飯を空にしている恵那が、にやりと笑ってみせた。

「おまえ、ドMだな」
「何でだよ!」
「昼メシん時にさ、また涼放置してるだろ? セリフ覚えてダンス覚えて楽譜覚えて、ノーミソ酷使してるから僕のこと忘れたらどついてやる、つってた」
 土岐が鼻で笑う。

「あー、まあちょっと涼に構ってる暇、ねーからな。でもあいつもダンスこそやらねーけどそれ以外は俺と一緒だから。やらなきゃってこと、それなりにあるしさ」
 そう言えば、今日は昼休憩に採寸するって言ってたな、と思い出す。
 いくつか衣装を見繕っているらしいが、さすがに女性用のドレスだから恵那に合わせるためには多少の補修が必要らしく。ついでにオウジサマ的な衣装も、本来そういう衣装を着る人とは違うラガーマンが着るから。
 そこら辺、涼がちょっと無理を言ってプロの方にお願いするらしい。

「そいえば、おまえは? F組は何やんの?」
 自分のことで手一杯で、土岐たちのクラスについては何も知らない。
「たこ焼き屋。響が“関西人の本気を見せてやる”って意気込んでる」
「いいな、それ。俺も当日は食いに行こ」
「んな余裕、あんのか?」
「白雪姫スタイルでたこ焼き食ったらマズイかな?」
「そいつはなかなか、面白い絵になるだろうな」
 想像して、二人してくすくす笑った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

BL / 完結 24h.ポイント:1,171pt お気に入り:1,538

キラワレモノ

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:28

電車の男

BL / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:553

僕たちはまだ人間のまま

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:289

今日見た夢とあの日見た夢

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:57

ココア ~僕の同居人はまさかのアイドルだった~

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:64

電車の男ー同棲編ー番外編

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:521

RUN! RUN! RUN! ~その背伸びには意味がある~

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:21

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

BL / 連載中 24h.ポイント:640pt お気に入り:69

処理中です...