コレは誰の姫ですか?

月那

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「新品のホルンなんて百万近いだろお? そんなもん、簡単に買えるっつーのはボンボンだろーがよ」
 決してラブラブではない状態で背後から抱きしめられて、涼はぷ、と膨れて恵那を睨んだ。
「……僕がボンボンだと、えなに何かメーワクかけた?」
「わ、開き直った」
「そゆことゆってると、クリスマスプレゼントあげないよ?」
「あ、マジで? 俺になんかくれんの? わーい、やったー」
 
 結局二人してじゃれ始めたから、三宅は小さくため息を吐くと。
「じゃね、佐竹」手を振って音楽室を出て行った。
 恵那だけは三宅の想いを知っているから、ほんの少しだけ心苦しいとは思うけれど。でも、涼の恋人の座を射止めたのは自分だから。
 ごめんけど、そこは譲れない。

「クリスマスプレゼント、って、何?」
「んっと。とりあえず。明日のイブの日って、えな、お泊まりで外出できる?」
 恵那もわざわざバリトンサックスなんてデカい楽器を持ち帰るつもりもないので、二人してそのまま手ぶらで学校を後にしながら、クリスマスの予定を話す。

「うん、大丈夫。別になんも予定ないし」
「おうちでクリスマス会とかも、ない?」
「さすがに、ないなー。土岐は遠征でいねーし、かーちゃんのパート先がこの時期くそ忙しいみたいだし、親父に至っては帰宅するかどうかも不明だしな」
 恵那は自転車。そして涼をバス停まで送り届けて。
 休日ダイヤだからバスの便が少なくて、来るまでまだ時間があるのでバス停で話をする。

「あのね。イブの日、グランドシティ・ホテルで一泊二日二食付き。僕と二人でお泊まりデート、しよ」
 市内駅前のこの辺ではそこそこハイクラスのシティホテル、涼の親が経営しているもの、である。
 つまりは。
「おまえ、親のすねかじりか」
「ちっがーう! そりゃ、予約は無理くりねじ込んで貰ったけど! あと食事はおかあさんからのプレゼントだけど! 宿泊費は僕のお小遣いから出してる!」
「え、何それ?」
「いつもいつも、えなんち泊まってるでしょ? だから、何かお礼しなきゃっておかあさんが言うから、じゃあって今回のコレ、思いついたの」

 本当は土岐と響も、と思っていた。けれど。
 三人の先輩と話をした後で、決行を思いついた。
 “ロマンチックな甘々な初体験”なら、きっと自分だって怖くない。
 そう思って、クリスマスイブ、という格好のタイミングを狙った。
 当然そんな日のホテルなんてどこも一杯だったけれど、そこだけはちょっと無理を言って何とか一室確保。まあ、普通の恋人同士ならダブルの部屋だろうし、今回“友達と”と言っているからツインの部屋だったのもあり、何とかねじ込むことができたのだ。

「えっと……イロイロ、込みで、ってことだと思っていいのか?」
 ちょっと恥じらう様子の涼を見て、恵那が恐る恐る、問う。
「ん」と頷いた涼が、また耳まで赤くするから。
 二人して照れ合ってしまうわけで。

「あ……えっと、めっちゃ嬉しい。ありがと、涼」
 本当はここで抱きしめたいけれど。
 さすがに公道、しかもバス停。そんなトコでラブシーンを繰り広げるわけにはいかない。
「でも俺、何も用意してないなあ」
「いいよそんなの」
「あ、じゃあさ、じゃあさ。明日朝からデートしよ。んで、買い物行って涼の欲しいもの、買おう」
「え」
「あ、ドレスコードとか、あったりする? 俺、スーツとかないよ?」
「ないない、全然大丈夫。僕も普段着で行くし。レストランも、そこまでカタっくるしいトコじゃないから」
 都会の高級ホテルなんてわけではないから、そんなものはない。
 涼が笑うと「じゃあ、ちょっとだけオシャレしよう」と恵那も笑って。

 プレゼントなんて、いらないと思う。こうして笑って、一緒に出掛けたり一緒にいられるだけで。それだけで十分楽しいし、幸せだから。
 二人で手を繋いでバスを待つ。
 寒いから手袋越しだけど、でも繋いだことで伝わる体温が嬉しくて。
 明日、何しよっかーなんて話をしているとバスが来て。
 またねと手を振って、バスが見えなくなるまで見送って、恵那は自転車をこいで家路に着いた。
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