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「あ」
「え?」
恵那が河野と目が合ったのは、金曜日の練習後、帰宅直前。
の。
職員トイレの前、で。
何なら、恵那が立っていたのは女子トイレの前。河野が出てきたのは男子トイレ。
そして「お待たせー、帰ろー」と女子トイレから出てきたのは、キリエで。
「おい……」
「あー、先生。ちょい、あっち行こ、あっち」
茫然とする河野の手を引いて、恵那とキリエ、そして付き添っていた涼が校舎裏へと走り出した。
人目がないことを確認して、恵那が立ち止まる。
「恵那……どういうことだ?」
「先生! 実は彼女、俺の生き別れの妹で……やっと再会できたから、どうしても俺のバリサク吹いてる勇姿を見せてやりたかったんです!」
しゃあしゃあとそんなことを芝居がかった様子で恵那が言うと。
「あ……そうなんだ。それは……そんな悲しい過去があったのか……それなら、仕方がないね」
河野が切ない表情をして、キリエに微笑みかけて。
「え、先生、これ信じちゃうの?」思わず涼がツッコんでしまう。
ボケボケ涼をツッコミに変えてしまう。それがステージ以外の河野という先生で。
「は?」
「おいおい、涼。そこは流そうよ。俺が頑張ってんだからさ」
恵那が苦笑すると。
「ごめん。でも、さすがに今のはないと思う。いつの時代の話だよ?」
とりあえず涼がキリエの前に立つ。
二人して、とにかく護るのは彼女だけ。
「ええー……もお、恵那はほんっと、いっつもそうやって人を謀って遊ぶから……でも……そっか。そりゃそうだよね。ほんとに、どこからどう見ても女の子にしか見えなかったけど。ほら、佐竹が佐竹だから」
思わず河野が本音を漏らした。
「え、僕?」
「そういう血なのかなーと思ったから」
「そういう血、ってどういう血?」涼が間抜けな声を出す。
「ね、センセ。も、あと帰るだけだしさ。ここは広い心で目、瞑ってよ?」
恵那が両手を合わせてカワイコぶって見せる。
元々ミスコン優勝するような恵那だから、本来ならばそんなぶりっ子すれば可愛く誤魔化せるのだろうが、如何せん日頃の行いが悪すぎる。
「おまえね、恵那。それが通用するのは佐竹だけだぞ?」
「ごめんなさい、先生。僕も、ついノっかっちゃったから、だから、僕もえなと一緒に怒られるから、だからキリエのことは見逃して下さい!」
涼がぺこりと頭を下げた。
キリエが責められたり、罰を受けるのだけは避けたい。
「あー……まあ、実際のトコ、男の子だろうと女の子だろうと、入部体験には何の問題もないからねえ。なんたって部員はみんな、だーれも女の子だなんて思ってないし」
それがそもそも不思議で仕方のない涼なわけだが。
「とりあえず、僕の中にしまっておくことにするから、もうココには来ちゃダメだよ?」
河野がキリエに笑いかけた。
怯えていたキリエが、ごめんなさいと、涼と同じように頭を下げて。
「じゃあ、気を付けて帰るんだよ? あと、恵那は反省文ね」
「ええー」
「ええ、じゃない、ええ、じゃ。恵那はほんと、一回何もかも反省しないとダメだよ? そういうおふざけが通用するのはもう、ウチだけなんだからね。もちょっと真面目になりなさい、佐竹を見習って」
「んじゃ、涼見習って、もちょっと女装が似合うオンナのコになるね、俺」
“てへぺろお”なんてふざけたことを言って目の横でピースサインをして一昔前のギャルみたいなポーズをして見せた恵那のことは、涼がばちこん、と一発叩いて。
「あのねえ、えな。誰のせいで僕たちが頭下げてんの!」
「えー、別にいいじゃん。そんな怒んなくても。メーワクかけてねーし」
涼が説教してもへらへら笑っている恵那に、
「恵那。おまえ反省文、原稿用紙十枚と向こう一か月音楽室のモップ掛けな」
さすがの河野も、鬼の片鱗を見せたのだった。
「あ」
「え?」
恵那が河野と目が合ったのは、金曜日の練習後、帰宅直前。
の。
職員トイレの前、で。
何なら、恵那が立っていたのは女子トイレの前。河野が出てきたのは男子トイレ。
そして「お待たせー、帰ろー」と女子トイレから出てきたのは、キリエで。
「おい……」
「あー、先生。ちょい、あっち行こ、あっち」
茫然とする河野の手を引いて、恵那とキリエ、そして付き添っていた涼が校舎裏へと走り出した。
人目がないことを確認して、恵那が立ち止まる。
「恵那……どういうことだ?」
「先生! 実は彼女、俺の生き別れの妹で……やっと再会できたから、どうしても俺のバリサク吹いてる勇姿を見せてやりたかったんです!」
しゃあしゃあとそんなことを芝居がかった様子で恵那が言うと。
「あ……そうなんだ。それは……そんな悲しい過去があったのか……それなら、仕方がないね」
河野が切ない表情をして、キリエに微笑みかけて。
「え、先生、これ信じちゃうの?」思わず涼がツッコんでしまう。
ボケボケ涼をツッコミに変えてしまう。それがステージ以外の河野という先生で。
「は?」
「おいおい、涼。そこは流そうよ。俺が頑張ってんだからさ」
恵那が苦笑すると。
「ごめん。でも、さすがに今のはないと思う。いつの時代の話だよ?」
とりあえず涼がキリエの前に立つ。
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「ええー……もお、恵那はほんっと、いっつもそうやって人を謀って遊ぶから……でも……そっか。そりゃそうだよね。ほんとに、どこからどう見ても女の子にしか見えなかったけど。ほら、佐竹が佐竹だから」
思わず河野が本音を漏らした。
「え、僕?」
「そういう血なのかなーと思ったから」
「そういう血、ってどういう血?」涼が間抜けな声を出す。
「ね、センセ。も、あと帰るだけだしさ。ここは広い心で目、瞑ってよ?」
恵那が両手を合わせてカワイコぶって見せる。
元々ミスコン優勝するような恵那だから、本来ならばそんなぶりっ子すれば可愛く誤魔化せるのだろうが、如何せん日頃の行いが悪すぎる。
「おまえね、恵那。それが通用するのは佐竹だけだぞ?」
「ごめんなさい、先生。僕も、ついノっかっちゃったから、だから、僕もえなと一緒に怒られるから、だからキリエのことは見逃して下さい!」
涼がぺこりと頭を下げた。
キリエが責められたり、罰を受けるのだけは避けたい。
「あー……まあ、実際のトコ、男の子だろうと女の子だろうと、入部体験には何の問題もないからねえ。なんたって部員はみんな、だーれも女の子だなんて思ってないし」
それがそもそも不思議で仕方のない涼なわけだが。
「とりあえず、僕の中にしまっておくことにするから、もうココには来ちゃダメだよ?」
河野がキリエに笑いかけた。
怯えていたキリエが、ごめんなさいと、涼と同じように頭を下げて。
「じゃあ、気を付けて帰るんだよ? あと、恵那は反省文ね」
「ええー」
「ええ、じゃない、ええ、じゃ。恵那はほんと、一回何もかも反省しないとダメだよ? そういうおふざけが通用するのはもう、ウチだけなんだからね。もちょっと真面目になりなさい、佐竹を見習って」
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さすがの河野も、鬼の片鱗を見せたのだった。
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