Treasure of life

月那

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【1】Rose quartz

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 特別講義は毎日行われるわけではなくて
 講師の都合もあり、週に一度もしくは月に二度くらい。
 で、それ以外の日は何をやっているかと言えば、当然遊びなどではなく受験用の補講である。
 これに関しては、特選科だけではなく進学を希望している者総ての希望者に対して行われているので、当然学年ごとに授業は別。
 翔は当然そちらも総て受講しているし、毎日何かしらの授業があるので部活帰りの征人とはたまに会う。

「翔くん、毎日毎日勉強ばっかしてて、飽きない?」
 バスケ部連中――どちらかというと普通科もしくは工業科に属している人間が多い――は、特選科の翔と話をしている征人にはあまり近付いて来ない。
 翔の人間性を知っている征人は全く気にしていないが、特選科イコール選ばれしエリートというイメージは強いらしく、実際に付き合いのある人間以外とは殆ど交流はない。
 そもそもの絶対数が少ないから、出会うことも殆どないが。
 征人としても、翔以外の特選科メンバーなんて誰も知らないし、嫌な思いもしたことがあるだけに、他の連中が遠巻きに逃げるのもわからなくはない。

「飽きる、飽きないの問題じゃないよ。ただ、惰性でやってるだけ」
 新校舎の横ですれ違って話を始めた征人を遠目に見て、バスケ部連中はとっとと征人を置いて帰ってしまった。
「あ、大丈夫?」
 置いてけぼり、に見えたから翔が訊いた。
「別に、どってことないよ。んな、一緒に帰ろうって約束してるわけじゃねーし」
 女子や、カップルならともかく、帰りのタイミングが合えば一緒に帰るけれど、特に連れ立って帰るようなべったりな関係を築いているわけではない。

「てか、翔くん大抵一人だよね? 友達いねーの?」
「んなことねーわ。失礼なヤツだな。おまえだってべったりじゃねーだろ」
「ま、そおだね。なるがいりゃ、大抵一緒にいるけど。あいつ部活やってねーし」
「それな。俺も、なるとなら一緒に帰る約束とかして、帰りにどっか寄り道でもしたいトコだけど」
「翔くんのこと、なるが“彼氏”って言ってるけど、実際のトコ、どーなん?」
 征人がへらへら笑いながら訊く。

 男同士で付き合うも何もないだろう、と思ってるわけで。
 実際、カップルによっては片方の部活が終わるまで待って一緒に帰る、なんてのも全然アリだし。
 そんなことをしている様子もないから、ただただご近所のよしみで仲がいいんだろうと。

「いつもゆってんじゃん、なるは俺のだって」
「あー、なんかなるもこないだからやたらと幸せそうにしょーさんしょーさんゆーてるけど。なんかこー、デートとか、するわけ?」
「うん、週末はいつもなるんちで勉強教えてやって、日曜は一緒に遊びに行ってる」
「翔くんが教えてるから、なるの成績、上位なんだ?」
「当たり前。あいつがココ受かったのも俺が手取り足取り見てやったからだからな」
 手取り足取り、というセリフを言いながら、翔がニヤリと笑った。
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