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【2】Malachite
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川添彬は特選科一年である。
一方、皇は三年で、しかも彬のいる特選科とはある意味真逆の工業科。
同じ高校でも科によって偏差値に天地の差があるのも、この学校の特色の一つで。
片や東大京大を目指す勉強至上の特選科がある一方で、その大半が高卒で就職を決める工業科も存在しているから、同じ学校とは言え接触しない生徒が山ほどいる。
その中、学年も所属の科も全然違う彬と皇の間には、彬が幼稚園時代からの幼馴染という関係があり。
彬の姉が皇と同級生だったことで家族ぐるみの付き合いが続いていたから、校内で会えば当たり前に話をする。
この学校の校内で、工業科と特選科が並んでいる姿なんてかなり特異ではあるが、二人の間にはそんな偏見は存在しない。
「今日は俺、どっちかっつーと甘えたい」
彬の家で二人きりになった瞬間、皇が言った。
見た目こそワイルドな皇だが、身長は彬の方が高くて。
彫の深い濃い顔をしている彬は、線こそ細いけれど趣味で鍛えているせいで皇を抱きかかえるくらいわけないくらいの力はある。
「珍しいじゃん。じゃ、こおくんネコね」
彬の両親は共にフルで仕事をしているし帰宅は夜遅い。
そしてもう一人の家族である姉は、アメリカに留学なんてしているから自宅に帰れば基本一人。
つまり、やりたい放題なわけで。
皇を部屋に入れると、そのままベッドに押し倒した。
キスをして、お互いの制服を脱がせ合う。
体の関係は彬が中学二年の頃から。
お互いに恋愛感情なんてないけれど、小さい頃から見慣れた体を興味半分で触りあっているうちに、自然と繋がることを覚え、その時の気分で挿れたり挿れられたり、スイッチしながら愉しんでいるのだ。
彬にしろ、皇にしろ、別に女に不自由することはないけれど。
彫の深い顔立ちで、友人から合コンに誘われれば入れ食い状態な彬だし、皇は皇で元野球部エースらしい体躯のくせにふにゃふにゃと柔らかい笑顔が魅力のせいで、バイト先やつるんでいる仲間から紹介しろという女子が後を絶たない。
けれど。
そんな女の体も愉しいけれど、何故かお互いの体の相性が合うらしく、時々こうして気まぐれに肌を合わせる。
「こおくん、俺先、イっていい?」
皇の裡をモノで突き上げながら、彬が言う。
「ん……待って、俺も……イく」
バックで奥を突かれ、皇が自分のモノを扱き、その場に放つと同時に彬がナカに射精した。
「も……中ダシすんなや」
「だって、こおくんの中、ちょー気持ちイイし」
めんどくせーな、と処理だけして、二人で広いベッドに横たわる。
別に甘い雰囲気が流れるわけではないけれど、なんとなく、今日は彬が皇を腕の中に包んだ。
お互いの体温を、味わうように。
「なんか、あった?」
わりと皇がタチに回る方が多いから、自分から“甘えたい”なんて言われて少し気になった。
「そりゃ、三年だからさ。就職とか、考えることいっぱいあるし」
「……んな、マジメな答えが返ってくるとは思わなかった」
「俺だってたまには真面目に悩むこともあんだよ」
彬の知る皇は、いつだってへろへろ笑って、その時その時の流れに任せて流されてる、というイメージしかないから。
実際、野球で高校に入ったくせに、三日で部活を辞めてしまった皇がその理由を誰にも明かさないから彬にもわからない。
でも、いつの間にか皇が工業科のちょっと難アリな連中とつるんでいるという噂は耳にしていたし、授業こそまともに出ているけれど、最底辺の成績でギリギリ進級しているだけで、とにかくバイトに明け暮れているから、恐らくその裏に何かあるんだろうとは、思っている。
「俺んことなんか、どーでもいんだよ。彬は? 優等生やってて疲れねえの?」
「別に、疲れるようなことしてねーし。やることやってたらたまたま特選科にいたってだけだし」
特選科は、普通科と特別進学科の中から選ばれた者だけで編成されている。
その中の成績トップ中のトップだから、普通科から選ばれるなんてことはまずない。なので基本的には特別進学科の者だけ。
そんなエリート中のエリートである彬は、けれどそこにいることに何も感じていない。
無理して必死で勉強しているわけでもないし、何もかも我慢しているわけでもない。
その証拠に、学校が終われば知り合いの経営している店――当然酒を提供している――に入り浸っては、気に入った女性をお持ち帰りして遊んでいるし。
一方、皇は三年で、しかも彬のいる特選科とはある意味真逆の工業科。
同じ高校でも科によって偏差値に天地の差があるのも、この学校の特色の一つで。
片や東大京大を目指す勉強至上の特選科がある一方で、その大半が高卒で就職を決める工業科も存在しているから、同じ学校とは言え接触しない生徒が山ほどいる。
その中、学年も所属の科も全然違う彬と皇の間には、彬が幼稚園時代からの幼馴染という関係があり。
彬の姉が皇と同級生だったことで家族ぐるみの付き合いが続いていたから、校内で会えば当たり前に話をする。
この学校の校内で、工業科と特選科が並んでいる姿なんてかなり特異ではあるが、二人の間にはそんな偏見は存在しない。
「今日は俺、どっちかっつーと甘えたい」
彬の家で二人きりになった瞬間、皇が言った。
見た目こそワイルドな皇だが、身長は彬の方が高くて。
彫の深い濃い顔をしている彬は、線こそ細いけれど趣味で鍛えているせいで皇を抱きかかえるくらいわけないくらいの力はある。
「珍しいじゃん。じゃ、こおくんネコね」
彬の両親は共にフルで仕事をしているし帰宅は夜遅い。
そしてもう一人の家族である姉は、アメリカに留学なんてしているから自宅に帰れば基本一人。
つまり、やりたい放題なわけで。
皇を部屋に入れると、そのままベッドに押し倒した。
キスをして、お互いの制服を脱がせ合う。
体の関係は彬が中学二年の頃から。
お互いに恋愛感情なんてないけれど、小さい頃から見慣れた体を興味半分で触りあっているうちに、自然と繋がることを覚え、その時の気分で挿れたり挿れられたり、スイッチしながら愉しんでいるのだ。
彬にしろ、皇にしろ、別に女に不自由することはないけれど。
彫の深い顔立ちで、友人から合コンに誘われれば入れ食い状態な彬だし、皇は皇で元野球部エースらしい体躯のくせにふにゃふにゃと柔らかい笑顔が魅力のせいで、バイト先やつるんでいる仲間から紹介しろという女子が後を絶たない。
けれど。
そんな女の体も愉しいけれど、何故かお互いの体の相性が合うらしく、時々こうして気まぐれに肌を合わせる。
「こおくん、俺先、イっていい?」
皇の裡をモノで突き上げながら、彬が言う。
「ん……待って、俺も……イく」
バックで奥を突かれ、皇が自分のモノを扱き、その場に放つと同時に彬がナカに射精した。
「も……中ダシすんなや」
「だって、こおくんの中、ちょー気持ちイイし」
めんどくせーな、と処理だけして、二人で広いベッドに横たわる。
別に甘い雰囲気が流れるわけではないけれど、なんとなく、今日は彬が皇を腕の中に包んだ。
お互いの体温を、味わうように。
「なんか、あった?」
わりと皇がタチに回る方が多いから、自分から“甘えたい”なんて言われて少し気になった。
「そりゃ、三年だからさ。就職とか、考えることいっぱいあるし」
「……んな、マジメな答えが返ってくるとは思わなかった」
「俺だってたまには真面目に悩むこともあんだよ」
彬の知る皇は、いつだってへろへろ笑って、その時その時の流れに任せて流されてる、というイメージしかないから。
実際、野球で高校に入ったくせに、三日で部活を辞めてしまった皇がその理由を誰にも明かさないから彬にもわからない。
でも、いつの間にか皇が工業科のちょっと難アリな連中とつるんでいるという噂は耳にしていたし、授業こそまともに出ているけれど、最底辺の成績でギリギリ進級しているだけで、とにかくバイトに明け暮れているから、恐らくその裏に何かあるんだろうとは、思っている。
「俺んことなんか、どーでもいんだよ。彬は? 優等生やってて疲れねえの?」
「別に、疲れるようなことしてねーし。やることやってたらたまたま特選科にいたってだけだし」
特選科は、普通科と特別進学科の中から選ばれた者だけで編成されている。
その中の成績トップ中のトップだから、普通科から選ばれるなんてことはまずない。なので基本的には特別進学科の者だけ。
そんなエリート中のエリートである彬は、けれどそこにいることに何も感じていない。
無理して必死で勉強しているわけでもないし、何もかも我慢しているわけでもない。
その証拠に、学校が終われば知り合いの経営している店――当然酒を提供している――に入り浸っては、気に入った女性をお持ち帰りして遊んでいるし。
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